シリアの内戦による死者が6万人を超えた。アサド政権に対する民主化要求デモが始まって3月で2年。事態打開の道は見えず、混迷は深まるばかりだ。
7カ月ぶりに公の場で演説したアサド大統領は、新憲法制定を柱とする「和平案」を示したが、反体制派との対話を拒否し、徹底抗戦の姿勢を崩さなかった。身勝手な内容と言わざるを得ない。
人道危機をこれ以上、放置することは許されない。国際社会はアサド政権に圧力をかけるため、いまこそ結束する必要がある。早期停戦を促す調停努力をあきらめてはならない。
反体制派は東部などで支配地域を広げている。戦火は首都ダマスカスに迫る一方、政権側は依然として強力な軍事力を維持している。化学兵器を使う懸念もある。内戦の長期化はレバノンなど周辺国の安定も脅かしかねない。
シリア情勢がここまで混迷したのは国際社会が有効な手を打てなかったことが一因だ。アサド政権を批判する米欧と、支持するロシアや中国の対立が国連を通じた強い制裁措置の導入を阻んできた。
近く発足する米国のオバマ第2期政権は新たな陣容が固まりつつある。これを機に、主要国は反目を乗り越え、平和的な体制移行の実現に力を尽くしてほしい。
それでも手詰まりが続くなら、アサド大統領の退陣しか選択肢はないのではないか。それにはロシアの役割が重要となる。政権に影響力を持つロシアが辞任を迫り、流れを作ることが欠かせない。
日本はシリア情勢の悪化で、同国とイスラエル国境で17年間続けてきた国連平和維持活動(PKO)から撤収した。やむを得ない決定だが、日本がシリア問題で果たせる役割はほかにもある。
シリアからは50万人以上が難民となって周辺国に逃れた。ヨルダンでは難民キャンプで使う暖房用ヒーターのために電力需給が厳しくなっている。難民への支援や受け入れ国への協力で地域の安定に積極的に貢献していきたい。
アサド
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