“新地震検知”で新幹線がより早く停止1月9日 17時44分
東北新幹線は、地震の揺れをいち早く検知し、列車を自動で停止させるシステムを導入していますが、去年、気象庁の緊急地震速報の情報を活用できるよう改修したところ、先月、東北地方などで震度5弱の揺れを観測した地震で、従来より28秒早く非常ブレーキがかかり始め、より早い段階で列車を停止させていたことが分かりました。
JR東日本は、地震の揺れをいち早く検知し、新幹線を自動で停止させる「早期地震検知システム」を導入していて、おととしの東日本大震災では、東北新幹線で、大きな揺れの10秒前に非常ブレーキがかかり始め、乗客を乗せて走っていた27本の列車は、いずれも脱線せず停止しました。
このときは、S波と呼ばれる大きな揺れの情報を基にシステムが作動しましたが、さらに数秒から数十秒早く伝わるP波と呼ばれる小さな揺れの情報を、より積極的に活用しようと、JR東日本は去年10月から気象庁の緊急地震速報の情報もシステムに組み込みました。
その結果、先月7日に東北地方などで震度5弱の揺れを観測し、宮城県沿岸に津波警報が出るなどした地震で、大きな揺れの38秒前に非常ブレーキがかかり始めたということです。
これは東日本大震災のときの10秒前よりさらに28秒早く、JR東日本は、緊急地震速報を活用した結果だとしています。
この地震では、47本の列車が、すべて無事に停止しました。
東北新幹線では、ことし3月から、「はやぶさ」が国内最高速度の時速320キロで運転を開始し、スピードアップが図られることになっていて、JR東日本は、今後も研究を進め、地震対策に万全を期したいとしています。
システムはどのように生かされたか
先月7日の、東北の三陸沖を震源とするマグニチュード7.4の地震では、午後5時18分58秒に地震の揺れが検知されました。
その12秒後の19分10秒、気象庁の緊急地震速報の情報を基に、東北新幹線の一部の区間で列車の非常ブレーキがかかり始め、最も大きな揺れを観測した盛岡より北の区間を含む岩手県の二戸と、福島県の新白河の間で列車を自動的に停止させるシステムが作動したのは、地震発生からおよそ18秒後の19分16秒でした。
盛岡の北5キロほどの沿線に設置された地震計では、ブレーキがかかり始めてから38秒後の19分54秒に震度5弱から5強に相当する揺れを観測しました。
付近では、東京発の「はやて・こまち31号」が盛岡の数キロ手前の地点を走っていましたが、大きく揺れたときには非常ブレーキによってほぼ停止した状態だったとみられるということです。
「緊急地震速報」鉄道への導入経緯は
気象庁の緊急地震速報は、7年前の平成18年ごろから、首都圏の私鉄など多くの鉄道会社で列車を緊急停止させるシステムに活用されています。
新幹線でも緊急地震速報の利用が広がっていて、5年前の平成20年11月にJR東海が東海道新幹線で、そしてJR西日本も平成22年7月から山陽新幹線で、列車を緊急停止させるシステムに組み込んでいます。
さらに去年10月、JR東日本も各新幹線で導入を始めたことで、九州新幹線を除くすべての新幹線で緊急地震速報が活用されています。
このうちJR東日本は、山手線など首都圏の在来線では6年前の平成19年12月に緊急地震速報の活用を始めましたが、新幹線については独自の地震計を設置していることなどから、導入について慎重に検討を進めてきました。
しかし、おととしの東日本大震災を契機に、より多くの情報を活用しようと緊急地震速報の導入を決めました。
JR東日本の「早期地震検知システム」
JR東日本の「早期地震検知システム」は、東北、上越、長野の各新幹線の沿線などに独自に地震計を設置し、その情報を基に列車への送電を自動的に止め、列車に非常ブレーキをかけて緊急停止させ、地震による脱線などの事故を防ぐ仕組みです。
JR東日本は、沿線の81か所に加え、太平洋や日本海沿岸の16か所にも地震計を設置することで、震源が沿線から離れている場合でも、揺れを早い段階でキャッチするシステムを構築しています。
おととしの東日本大震災では、東北新幹線の線路から東におよそ50キロ離れた宮城県の牡鹿半島の地震計が、地震発生からおよそ23秒後の午後2時47分3秒に基準を超える大きな揺れを捉え、沿線で最も大きな揺れを観測した仙台駅付近では大きな揺れの10秒前に列車に非常ブレーキをかけることができました。
JR東日本は、震災のあと、内陸部の30か所に新たに地震計を設置して独自の観測網を充実させる一方、去年10月からは、気象庁の緊急地震速報の情報をシステムに組み込み、態勢を強化していました。
こうした取り組みは、JR東海も行っていて、東海道新幹線に導入されている「早期地震警報システム」は、沿線や沿岸に設置した71か所の地震計の情報を基に列車への送電を自動的に止めることで、スピードを強制的に落とし、事故を防ぐ仕組みです。
このうち21か所の地震計では、大きな揺れのS波より早く伝わる小さな揺れのP波を検知できるほか、気象庁の緊急地震速報の活用も、5年前から始めています。
JR東海は、現在、すべての地震計で、P波を検知できるようシステムの改修を進めています。
[関連リンク] |
|