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高校生自殺 警察が教師から事情聞く
1月8日 17時26分

高校生自殺 警察が教師から事情聞く
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大阪市の市立高校に通う男子生徒の自殺を受けて、大阪府警察本部は、所属するバスケットボール部の顧問の男性教師や生徒の家族から事情を聞くなどして、自殺に至ったいきさつについて調べています。

警察によりますと、自殺した男子生徒の自宅の部屋の机の上には家族への感謝の思いなどが書かれた「遺書」が置かれていたほか、部屋の中からは顧問に宛てた手紙が見つかったということです。
手紙には、「顧問の教師からいろいろ厳しく指導を受けていた」とか、「キャプテンという立場が負担になっていた」といった内容が書かれていたということです。
また、警察が自殺直後に顧問の男性教師から事情を聞いたところ、「男子生徒はキャプテンだったので、私が直接指導する機会が多かった。厳しい指導はしていた」などと話したということです。

自殺の生徒 キャプテン務め責任感強かった

大阪市教育委員会によりますと、自殺した生徒は桜宮高校体育科の2年生で、去年9月ごろ、男子バスケットボール部のキャプテンになりました。
責任感が強く、非常にまじめで、成績も上位だったということです。
教育委員会によりますと、この生徒は、自殺の1週間ほど前から部活動のことで悩んでいたということです。
家族にも、「自分は口べたなので、手紙で伝える」と話し、自殺の数日前に顧問の教師宛ての手紙を書きましたが、手渡せないままでした。
手紙には、「キャプテンとして、叩かれるのはつらい、嫌だ」といった顧問の体罰に悩んでいる記述が残されていたということです。
また、「ほかの部員は怒られないが、自分はキャプテンなので怒られる」、「自分はキャプテンを代わるべきなのか」といったキャプテンとしての悩みもつづられていたということです。
自殺の前日も、生徒は他校との練習試合中に顧問から体罰を受けていました。
生徒は自宅に戻った際、「きょうもかなり殴られた」と家族に打ち明けたということです。
教育委員会の調査に対し、顧問の教師は、「実力があるのに、試合で力が発揮できないとき、生徒の気持ちを発奮させるために、体罰的な指導をしてしまった」と複数回の体罰を認めているということです。
さらに、生徒の自殺後、学校がバスケットボール部の部員全員に対して行ったアンケート調査では、「ほかの生徒にも手を上げている。かなりの頻度だった」といった回答が寄せられていました。
顧問の教師は、先月24日の男子生徒の通夜の際、母親が「ほおの辺りの腫れは体罰によるものではないか」と問いただすと、それを認め、謝罪したということです。
この顧問を巡っては、おととし9月、市役所に「体罰を行っている」という情報が寄せられ、学校側も調査しましたが、顧問は否定したということです。
これについて、教育委員会は8日の会見で、「今回のことを考えれば、当時の学校の調査は不十分だったと言える」と話しています。

顧問の教師“生徒思い”の評価

自殺した男子生徒に体罰を加えたとされる大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部の47歳の顧問は、平成6年からこの高校で保健体育科の教師を務めています。
そして、バスケットボール部の顧問として、平成15年に全国高校総体初出場に導いたのを始め、これまでに合わせて8回の全国大会に出場する強豪校に育て上げました。
大阪市教育委員会によりますと、顧問は生徒思いという評価を受けていて、部活については厳しく指導して成績を上げていたということです。
日本バスケットボール協会によりますと、顧問はこれまでの実績が認められ、16歳以下の日本代表のアシスタントコーチに去年初めて選ばれました。
顧問は、年末から今月8日までドイツへの強化合宿に参加する予定でしたが、参加を辞退していたということです。

ほかの部でも体罰

大阪市立桜宮高校を巡っては、おととしも教師の体罰による問題が明らかになっています。
おととし9月に、男子バレーボール部の顧問の男性教師が、1年余りにわたって部員をたたいたり蹴ったりする体罰を繰り返し、3か月の停職処分を受けました。
その後、この教師は校内での研修などを受け、現在は再び顧問に復帰しているということです。

体罰で処分の教師 昨年度は全国で400人余

文部科学省によりますと、昨年度、全国の公立の小中学校と高校、それに特別支援学校で、児童や生徒に体罰を加えたとして処分を受けた教職員は404人に上っています。
このうち、停職や減給などの懲戒処分が126人、訓告などの処分が278人で、全体の27%に当たる108人が部活動に絡む体罰だったということです。
文部科学省が統計を取り始めた昭和52年度以降、処分の人数が最も多かったのは、平成15年度の493人で、その後は年間400人前後で推移しています。

“指導と体罰”難しい線引き

教師が児童・生徒を指導する際に殴る、蹴るなど肉体的な苦痛を与える「体罰」を行うことは、学校教育法で禁止されています。
しかし、教育的な指導と体罰との間の線引きは難しく、教師への暴力が深刻化したり、いじめが背景にあるとみられる子どもの自殺などが相次いだりしたことから、文部科学省は平成19年、教師が子どもの問題行動にきぜんとした指導ができるよう、体罰に関する考え方を初めて示しました。
それによりますと、問題を起こす子どもに対し、殴る、蹴る、長時間正座をさせるといった肉体的な苦痛を与える行為は体罰だとして、これまでどおり禁止とする一方、子ども一人一人の心身の発達状況に十分配慮をしたうえであれば、物理的な力を伴う指導が認められることもあるとしています。
さらに、放課後教室に残すことや、授業中に教室内に立たせること、掃除当番を多くさせるなどの物理的な力を含まない指導は、体罰に当たらないとしています。
文部科学省は、大阪市の教育委員会から情報収集を行い、学校の対応に問題がなかったか調べることにしています。

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