大阪市立高校男子生徒自殺 市教委「心より深くおわび」
大阪市内の高校のバスケットボール部のキャプテンが、自ら命を絶った。この自殺について、前の日にもあったとみられる体罰との関連が焦点となっている。生徒が通っていた高校側の対応に、橋下大阪市長も、不信感をあらわにしている。
橋下大阪市長は「最悪の事態を招きましたよ、これ。自殺なんていうのは、最悪ですよ。これはですね、いじめでの自殺なんかよりも、はるかに重い、これはとんでもない事案ですよ」と述べた。
市内の高校に通う高校生が自殺したことを受け、8日午後、大阪市の橋下市長は、沈痛な表情で「最悪の事態だ」と繰り返した。
大阪市教育委員会は、会見で「桜宮高等学校2年の男子生徒が、自宅で自殺するという事案が発生いたしました。この事案の中で、『教員による体罰』があったことが判明しており、教育委員会といたしまして、心より深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と述べた。
亡くなった生徒が通っていたのは、スポーツ活動などで全国的にも知られる、大阪市の市立桜宮高校だった。
近所の人は、「運動部は、すごく強くなったというのは、うわさでは聞いているんです」、「スポーツは抜群ですよ。桜宮高校は、(どちらかというと)スポーツが盛んです」と話した。
桜宮高校に通っていた17歳の高校2年の男子生徒が、2012年12月23日早朝、自宅の部屋で、制服のネクタイで首をつった状態で、家族に発見された。
自殺した生徒が通っていた桜宮高校の校長は「非常に真面目なお子さんでした。成績も上位でしたし、責任感の強い子であったというふうに聞いております」と話した。
そんな生徒が、なぜ自ら命を絶ったのか。
桜宮高校は、男子バスケットボールの強豪校として知られ、ここ5年間で3回、大阪代表として全国大会に出場していた。
そして、亡くなった男子生徒は、バスケットボール部のキャプテンを務めていた。
生徒は、自宅に2通の手紙を残していたという。
いずれもルーズリーフに書かれ、1通は、「遺書」と書かれた家族宛てのもの。
そして、もう1通は、バスケットボール部の顧問に手渡そうとしていたものだったという。
自殺した生徒が通っていた桜宮高校の校長は「厳しい指導があったこと、それから、たたかれたということも記載がございました。ほかの生徒は、同じようなことをしてもしかられないけど、自分だけがしかられている、たたかれたと...」、「明らかに、ちょっと様子がおかしいなと思われたのは、ちょうど亡くなる前、1週間の間の話だと思うんですけど...」と話した。
大阪市教育委員会は、会見で「(厳しい指導や体罰が)つらいと。たたかれるという、そういう指導について、批判をしているといいますか、嫌だと...」と述べた。
バスケットボール部のキャプテンだった生徒は、顧問から複数回にわたり体罰を受け、その悩みを手紙につづっていたという。
男子生徒は、口が切れ、頬が腫れるほどの体罰を受けた翌日に、命を絶った。
自殺した生徒が通っていた桜宮高校の校長は「練習試合をしていたようですけども、その試合中に(顧問が)頬をたたくと。口のところを切っていたとか...。顧問の話によりますと、こういうたたき方をしたというふうなことを聞いております」と話した。
この顧問は、桜宮高校に16年間在籍し、強豪のバスケットボール部を指導しており、自殺した生徒への体罰について認めているという。
大阪市教育委員会は、会見で「通夜の席上で、お母様の方が、ご遺体を見てくださいということをおっしゃって、顧問が見ておりますので、その時に、腫れた傷が残っておったということで。『これは体罰じゃないのか』という問いかけに対して、『体罰です』というふうに、本人は答えています」と述べた。
自殺した生徒が通っていた桜宮高校の校長は「お亡くなりになる前は、何らかのシグナルとかサインとかあったであろうと思われるんですけれども、それも気づいてあげられなかったというのは、誠にもう...、残念でございます」と話し、生徒の苦しみに気づけなかったことを悔やんだ。
しかし、今回の自殺を未然に防ぐ手だては、本当になかったのか。
このバスケットボール部をめぐっては、2011年の段階で、「体罰があるのではないか」という情報が、大阪市などに寄せられていた。
しかし、その時、学校側は「体罰はない」という調査結果を上げていた。
大阪市教育委員会は、会見で「そこでは『各顧問からの聞き取り』で終わってしまっていましたので、実態は解明できておりません。(生徒からは?)生徒からは聞いておりません。(もし生徒に聞き取りをしていれば、『体罰とわかった可能性』も?)まあ...、難しいんですけど、もちろんそういうこともあります...」と述べた。
その一方で、教育委員会と高校側は、現在のところ、男子生徒の自殺と体罰について、因果関係はわからないとしている。
こうした中、橋下大阪市長は、この問題に怒りをあらわにした。
8日に行われた教育委員との意見交換の場で、橋下大阪市長は「校長は何をやってたんでしょうかね。僕の把握している事実経緯からすれば、校長は(体罰を)認識していたというような報告も入っています。しかも、体罰事案のこれくらいのSOSを拾い上げることができないということであれば、いじめ案件についても、SOS届いていない事案、たくさんあると思いますね」と述べた。
そのうえで、橋下大阪市長は、今までの対応を見直すべきと主張した。
橋下大阪市長は「今までやっていた検証のやり方とかが、間違っていたんだという、そういう認識に立たないとだめですね。とてもじゃないけど、子どもに申し訳が立たないですよ」と述べた。