社会・生活 週刊文春 掲載記事
THIS WEEK

なりすましメールの真犯人が
知らずに踏んだ米国の虎の尾

完全にナメている Photo:Jiji

 他人のPCから大量殺人やテロを予告するメールが勝手に送信されていた「なりすましメール事件」。沈黙を守っていた真犯人が、新年早々から大きな動きを見せた。

「昨年11月13日の夜、真犯人は『ミスしました。ゲームは私の負けのようです』とするメールを送ったきり、沈黙を守っていました。が、元日の未明、『謹賀新年』のタイトルで『新しいゲームのご案内』とするメールを、マスコミなど25のアドレスに送信。さらに5日未明にも『新春パズル ~延長戦~』のタイトルで再びメールを送ってきたのです」(社会部記者)

 真犯人はなぜ沈黙を破ったのか。警視庁と大阪府警、神奈川、三重両県警の合同捜査本部関係者はこう解説する。

「真犯人が『ミスをした』としているのは、2ちゃんねるに昨年8月28日、書き込みを行ったときのことを意味している。真犯人は通常書き込みをする際、発信元を特定されないように匿名化ソフトを利用していたが、この時だけ、ソフトを使っていなかった。サーバーに記録が残っていれば、真犯人が特定される恐れがあったが、11月26日に合同捜査本部が行った2ちゃんねる管理会社の家宅捜索では記録が見つからず、それで真犯人は安心して新たなメールを送りつけてきた」

 元旦のメールを調べると、パズルが順番に出題され、ポリ袋に入ったUSBメモリなどの写真2枚と「ファイルを格納した記憶媒体を埋めた」などとする文書が出てきた。

 写真の位置情報が示したのは東京・埼玉・山梨の県境にある雲取山の山頂。山頂付近は積雪があったことから合同捜査本部はヘリを使って捜査員を登頂させたが、USBメモリはなかった。

「実は写真は、ネット上から盗んだものの可能性が高い。真犯人は山頂になんて行っていない」(同前)

 真犯人はどこかでほくそ笑んでいるに違いない。

「しかし、相手に動きがあればある程、手掛かりも得やすい。さらに、なりすましメールには、成田発ニューヨーク行き便に爆発物を仕掛けたとするものがあり、航空機テロに敏感なFBIが本気になっている。真犯人の書き込みなどが経由した米国内のサーバー捜査に全面協力の姿勢なんです」(同前)

 今年こそ尻尾を掴めるか。

「週刊文春」編集部

※この記事の公開期間は、2016年01月08日までです。

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2013年1月17日 新春特別号
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