特集ワイド:平成25歳のニッポン/1 オバタリアン、Hanako族 モノ言ってモノ買って
毎日新聞 2013年01月07日 東京夕刊
バブル経済の崩壊後、状況は一変する。芥川賞作家、津村記久子さん(34)は2000年に社会に出た。最初に入社した印刷関連会社は社員約300人、平均年齢は30歳前後。典型的な大量採用、大量離職で社員は使い捨て。上の世代の女性から学ぼうにも、職場で生き残ってはいなかった。「友人でも1社目が続いている人は皆無。全員3年以内に辞めている。私たちの世代にとって会社とは基本的にひどいものなのです」と声を震わせる。
ポストバブル世代を中心に低賃金化が加速したが、一足先に就職したHanako世代やそれに続くアラフォー世代の一部は依然として消費の中心に居座り続けた。牛窪さんは04年、一人でも消費を楽しむ女性を「おひとりさま」として広めた。このあと企業講演で女性たちから相談が寄せられるようにもなった。「その一つが女性同士の世代間ギャップの悩み。バブル世代は楽に入社して苦労知らずだと、その下の世代がバカにする。一方、若い世代が権利ばかりを主張することにバブル世代はいらだっている」
牛窪さんにバブル世代の思いを代弁してもらった。「戦後生まれのオバタリアン、バブル期に社会に出たHanako世代は女性差別の壁にぶつかりながらも、少しずつ戦って言いたいことを言えるようになった。若い世代は不景気だからと簡単にあきらめるのではなく、せっかく女性がつかんだ権利を活用して、自分らしく生きてほしい」
若い世代の津村さんは昨年6月、10年半勤めた二つ目の会社を辞めた。出版業界は不況だが、当面は小説で生きる覚悟を決めたという。「夫婦共働きで、子どもができたら1年でもいいから産休、育休をもらって、保育所に預けて職場復帰して、夫婦2人で育てて……そういうささやかな夢すら追えなくなっているのが現状です。社会でキャリアを形成していく20代と30代に女性は結婚適齢期と出産時期が同時に来てしまう。これを調整できないのは個人の問題ではないのです。産休、育休、その後に復職する権利を政府と企業は守ってほしい。バブル世代の女の人で働くと決めた人たちが偉くなったら世の中を変えてほしい」
現在、就職活動中の亜細亜大学経済学部3年の女子学生(21)は「就職活動で男女差を意識させられたことはありません。業界によっては容姿のいい女性が選ばれやすいという、うわさは聞いたことがありますが……」と首をかしげる。男女差に注意が向かないほど就活は厳しいという。