寒さが本番を迎えている。暖房用の電力消費が増える時季だ。
気象庁が発表した3カ月予報によると、1月後半から2月の関東甲信地方は偏西風の蛇行のために、寒気が南下しやすくなる。寒さはこの先さらに募ると覚悟しなければならない。
3・11の事故を受けて原発の多くが止まってから、夏と冬の電力需要期はこの冬で4シーズン目になる。節電で乗り切れば、脱原発への道は広がる。
省エネ型のライフスタイルを定着させ、原発に頼らない社会への一歩を進める冬にしたい。
沖縄を除く電力9社の見通しでは、この冬は各社とも安定供給の目安、予備率3%以上を確保した。中部電力の予備率は6・6%とされている。
そんな中で心配なのが北海道電力だ。予備率は5・8%で目安の3%を上回る。ただ北海道は寒さが厳しい上に、本州から電力融通を受けるにも制約がある。火力発電所などでトラブルが起きれば影響は大きくなる。
このため政府は北海道に限り節電の数値目標を設定した。厳冬だった2010年度に比べ、電力使用を7%以上減らすことを目標にしている。道内ではいま、券売機の一部停止、ビルの暖房抑制といった節電策を展開中だ。
長野県は昨年12月から県独自で「冬の信州省エネ大作戦2012」を実施している。昨冬に10年度比3・5%の節電を実現した実績を踏まえ、この冬は10年度比3%減とすることを目標とした。
無理のない範囲で取り組めば達成できる水準である。不要な照明を消す、テレビなどはコンセントを抜いて待機電力をなくす、といったことを心掛けたい。
冬は夏に比べ電力需要のピークが長く続く。長野県など寒冷地はなおさらだ。地道な取り組みはその分、一層大事になる。
国内の商業用原子炉は50基。その多くは定期検査などで止まっている。動いているのは関西電力大飯原発の3、4号機だけだ。
衆院選で自民党は停止中の原発を再稼働させる可能性を否定しなかった。選挙公約には「将来にわたって持続可能な『電源構成のベストミックス』の確立」を盛り込んでいる。需要期の電力確保を名目に、大飯以外の再稼働から新しい原発の建設へと進む可能性が否定しきれない。
あの震災を経て、国民の多くは脱原発を求めるようになった。足元の節電を着実に重ねることが、政府への圧力にもなる。