時代の風:政権交代時代=前岩手県知事・増田寛也

毎日新聞 2012年12月30日 東京朝刊

 しかし、政権政党が頻繁に交代して、重要政策が変更されるのであれば国は安定しない。議員は与党として生き残ることだけを優先し、大衆迎合に走る。そうでなくても6人の首相が1年ごとに交代したわが国に対して「誰を相手に話したらいいのかわからず、日本とは本音で外交ができない」とは外国から見た日本への嘆きである。短期間での首相交代や重要政策の変更による弊害は言をまたない。外交や社会保障分野は長期にわたる政策の安定性が必要であり、政治的対立の渦に巻き込むテーマではないだろう。

 このことは、与党の栄光と野党への転落による挫折を経験した自民、民主両党とも痛感しているはずだ。今後も政権交代が起こることを前提に、与野党間の争点にすべき課題と政争の具に供すべきでないものを峻別(しゅんべつ)し、後者については政党間の合意を取り付けて推進するという「政党合意政治」のリズムを作り出すべきである。与野党間で派手な対決を演じて相手を負かせた側が国民の喝采を期待する−−そんな瀬戸際政治は要らない。地道に粘り強く合意を積み上げる政治の王道を歩んでほしい。

 政治の不安定化要因はねじれ国会の存在である。手っ取り早くねじれを克服するには、与党が野党に譲歩妥協するしかない。その道のりを党員や支持者の納得の上で作れるかどうかである。自民党は昭和30年代から内閣が政策決定する場合、党による事前審査制を設けている。これを柔軟かつ透明性が高い運用とし、野党への譲歩による政策変更やその場合の説明責任を十分に果たすことが必要である。国会の両院協議会の運用も見直すべきだ。現在は慣例でそれぞれの院の議決を支持する会派から委員が選ばれるため、協議前から決裂が見えており、形骸化している。

 惨敗した民主党は風任せではなく、地域に根付いた活動が必要だ。地方組織が脆弱(ぜいじゃく)過ぎる。地域の政策課題について地方議会での活動を充実させるなど地に足が着いた姿が見たい。現行制度で最低の投票率となったのは有権者の責任である。ただじっと待って、政治に青い鳥を求めるのは危うい。主権者が積極的に権利を行使しないと政治を動かすのは難しい。震災後初の総選挙だったにもかかわらず、原発や復興が大きな争点とはならなかった。復興の遅れが目に余る。今年も間もなく終わる。来年こそ被災地に笑顔が戻る年になりたい。=毎週日曜日に掲載

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