時代の風:政権交代時代=前岩手県知事・増田寛也
毎日新聞 2012年12月30日 東京朝刊
◇合意、積み上げる政治に
総選挙は自民党が圧勝し、安倍政権が再スタートした。今年は「指導者交代の年」といわれ、各国で新たな指導者が誕生したが、わが国では安倍晋三氏が再登場した。
選挙結果は民主党に対する「懲罰投票」となった。「街頭演説に誰も聞く耳を持たなかった」との声が物語るように、マニフェストを実現できず離党者が相次ぐ民主党に、有権者が完全に愛想を尽かした。小選挙区と比例代表との並立を認める現行制度では小政党が出現しやすい。その第三極が分裂してお互いにつぶし合いを演じた結果、比例代表で自民党は惨敗した2009年選挙よりも票を減らしたにもかかわらず、小選挙区で圧倒的な勝利を収めた。
小選挙区での自民党の得票数は民主党の約2倍、これが議席数では約9倍もの差になること、小選挙区で大差で敗れながら比例区で復活当選することについては違和感を覚える有権者も多いのではないか。衆議院の選挙制度については、定数削減だけでなく現行制度の問題点について幅広い検討が必要である。
安倍氏は選挙直後「自民党が国民に信頼されたわけではない。民主党が自滅した結果だ」と述べた。これは大方の自民党議員が感じていることだろう。今後は「自民党がどう変化したのか」が問われる。昔に戻したり派手な演出に走るのではなく、新しいながらも自制心ある大人の振る舞いと長い間政権政党として培ってきた蓄積を見せてほしい。
新内閣は手堅い布陣で慎重にスタートした。しかし、前途は多難である。国会は依然として参議院で少数与党である。デフレ脱却・成長戦略、社会保障、外交・安全保障で成果を上げるには安全運転に徹するだけでは済まない。まず、「霞が関」の機能を引き出すことだ。政治は新規施策の方向付けとダイナミックな方向転換の役割を担い、執行は官僚に委ねる。「政治主導」と称して余計な口出しは慎むべきだ。新内閣はハネムーン期間もなく年明けからは批判の嵐と向き合う。わが国は非常時であるとの危機感と謙虚な姿勢を持続させながら、懸案に果敢に取り組んでもらいたいと思う。
09年と今回の選挙を通じて、国民はいずれも政権交代を選択した。他国での選挙による政権交代を別世界の出来事のように見ていた時期もあったが、わが国でもいよいよ「政権交代時代」に入った。選挙により容易に政権交代が起こることは民主主義が正常に機能している証しであり、政治に緊張感をもたらす。