記者の目:「女性宮家」創設の是非=真鍋光之

毎日新聞 2013年01月09日 00時54分

 女性宮家の是非や在り方を巡り、野田前政権は昨年10月に論点整理を発表した。その後、国民の意見を募るパブリックコメントを実施したが、昨年末に発足した安倍新政権がこの問題をどう取り扱うかが不透明になっている。安倍晋三首相は「女系天皇」反対の立場から女性宮家創設に慎重であることが知られており、「論議が中断する」「制度改正は見送り必至では」などの声が出ている。

 だが、ちょっと待ってほしい。一昨年から1年かけて女性宮家創設について考え、広く国民から意見を聞いた一連の動きを、簡単に棚上げしたり、中止したりして良いのか。皇室の現状を見ると、論議をご破算にして良いとは思えない。さらに議論を進めるべきだ。

 ◇賛否が割れる国民の意見

 これまでの流れを振り返ってみよう。皇室制度を定めた皇室典範に従い、女性皇族は結婚によって皇籍を離れることから、秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さま(6)が即位するころには皇族の数が極端に減って皇族全体の活動が狭まることが懸念される。このため典範を改正して女性皇族が結婚後も皇室に残れるようにすべきなのか、その時はどう改正すべきなのかを問う有識者ヒアリングも昨年2月から進められた。

 政府の皇室典範改正準備室は7月までに12人から意見を聞き、論点整理をして公表した。案は(1)結婚後も宮家を構えて皇室にとどまる。夫や子も皇族とするが、子は結婚後は皇族でなくなる(2)宮家を作るが夫や子は皇族としない(3)皇族ではなくなるが、国家公務員として皇室活動に携わる−−の三つ。対象は天皇の子や孫の内親王に限った。

 同準備室は2カ月間、国民からメールや手紙などで意見を募り、26万件以上が集まった。「ごく自然な流れだ」と女性宮家創設に賛同する意見がある一方、反対意見が多数を占め、「元皇族の皇籍復帰の検討を希望する」との主張も多かった。ただ、反対意見はいくつかの定型文を使った組織的な提出をうかがわせるものも多数見受けられたという。数だけでなく内容を精査する必要があるだろう。

 問題は、論点整理とパブリックコメントの意見が新政権でどう扱われるかだが、政府や宮内庁関係者は「白紙、棚上げになるのではないか」と悲観的だ。

 安倍首相は自民党の「皇室の伝統を守る会」の会長でもあり、一昨年12月16日付毎日新聞朝刊「論点」では「宮家が女系になれば、女系天皇に向け日本の皇位継承の基本原理が大きく変化する」と問題点を指摘している。だが、そもそも論点整理は皇位継承問題とは切り離し、皇族の減少に歯止めをかける目的で論じられてきたことを忘れるべきではない。

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