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選挙目当ての医療費据え置きを憂う

2013/1/9付
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 安倍政権は本気で医療改革をやる気があるのか。自民、公明両党は、特例で1割に据え置かれている70~74歳の医療費の病院窓口での負担を本則の2割に引き上げる時期について、2013年4月からの実施の見送りを決めた。

 若者より投票率の高い高齢者にかかわる改革は今夏の参院選後に先延ばしし、選挙への影響を抑えるのが狙いとみられる。この特例を維持するために、毎年度、約2千億円の補正予算を計上してきたが、12年度も盛り込む方針だ。

 私たちはこの特例を廃し、全対象者を法定の2割負担にすべきだと一貫して主張してきた。その場しのぎの先延ばしを繰り返しても、勤労世代やその雇用主、将来を担う若者が強いられる負担を重くするだけだからだ。

 医療費の窓口負担は現在、就学前までは2割、69歳までが3割、70代前半が2割、75歳以上は1割と法律で定められている。だが、70代前半の窓口負担だけは1割に据え置かれ、6年目に入る。

 70代前半の窓口負担を1割から2割に引き上げることは06年に成立した医療制度改革法で決まっていた。だが、直後の参院選で大敗した当時の自公政権が高齢者の反発を恐れ、08年度の施行直前になって引き上げを凍結。民主党政権もこれを踏襲してきた。

 法律を成立させたのが自公政権であるにもかかわらず、またもや逃げるのは無責任だ。先延ばしすれば、将来さらに大きな痛みを強いられる可能性があることを、多くの国民がすでに気づいている。

 厚生労働省は低所得者を対象から外し、今年4月から5年かけて段階的に、70代前半の窓口負担を2割に引き上げる見直し案を審議会に提示している。本来は4月に全対象者の負担を一斉に2割にすべきだが、百歩譲って、同省の案を実施した場合の方が、国民から理解が得られるはずだ。

 少子高齢化と厳しい財政状況を考えれば、負担増と給付減はもはや避けられない。働く人の給与は1990年代後半から減り続けている。高齢者世帯の間でも所得や資産の格差が広がっている。

 将来、窓口負担は年齢で区別するのでなく、生活が苦しい人は軽減し、余裕のある人には応分の負担を求める方向で改革を進めてはどうか。3党合意で設けた社会保障制度改革国民会議での議論はもちろん必要だが、抜本的な改革シナリオを示すのは政治の責任だ。

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