Who Wants to Marry a Multimillionaire -フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア-
放送局: FOX
プレミア放送日: 2/15/00 (Tue) 20:00-22:00
製作: ネクスト・エンタテインメント/Next Entertainment
製作総指揮: マイク・フレイス
製作:クリス・ブリッグス
監督: ドン・ウィーナー

内容: ラスヴェガス、ヒルトン・ホテルに50人の女性を集め、億万長者の花嫁の座を競わせる。女性たちは相手が誰か最後までわからない。番組の最後には億万長者が選んだ花嫁と共に結婚式を挙げる。

Who Wants to Marry a Multimillionaire まったく一体誰がこんな企画を考え出したのか。ここにある一人の金持ちの男がいる。彼は結婚したいと思っているが適当な相手がいない。ここに大勢の妙齢の女性たちがいる。彼女らは当然なるたけなら金持ちの男と結婚したいと思っているが、何分相手がいない。というわけで、その男の妻の座を女性たちに争わせ、見事その男のハートを射止めることができたら無事結婚させてあげるという、究極のほとんど人権無視リアリティ・ショウが誕生した。題して「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア (Who Wants to Marry a Multimillionaire)--億万長者と結婚したいですか?」。もちろん、今ABCが放送して圧倒的人気を誇るゲーム番組「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire)--百万長者になりたいですか?」のもじりである。

この番組、視聴率を稼ぐためなら何でもするアメリカのTV界にも流石に慣れたなと思っていた私でも、あまりの恥知らずぶりに唖然としてしまった。もちろんやらせじゃない本当の一発勝負の本番である。こういうものに出場する男も男だが、応募する女も女である。そりゃあ誰だって結婚相手は金持っている方がいいに決まっているが、それだけで結婚生活が長続きするもんじゃあないでしょう。いくらなんでも無理が有り過ぎ。しかし、しかしである。この番組、何はともあれ話題作りだけには成功したようで、興味を持った視聴者が多く、結構高い視聴率を叩き出したのである。これに味を占めたFOXは視聴率が発表された直後に第2弾製作を発表、しかもなんとシリーズ化するという。とにかく高い視聴率を獲ることが至上命令のTV界である。見る人がいれば番組は続く。まあ、これがアメリカの民度というもんでしょう。別にそれで皆がハッピーなら私も何も言うことはありません(ちゃんとテープに録っといた私もあまりえらいことは言えないが。)実業家の金持ち、リック・ロックウェル氏(42)は番組の最後に看護婦のダーヴァ・コンガー女史(34)を花嫁に選び、めでたしめでたし。二人は無事ハネムーンに飛び立ったのでありました。

さて。実は話はここからが面白くなるのである。彼らがハネムーンに行っている最中、このロックウェル氏が過去女性に暴力をふるって警察の厄介になったことがあるという事実が明るみに出た。何でもその時つきあっていた女性を殺してやると言って刃物で脅したらしい。FOXは大慌てである。そんな奴をTVに出してわざわざ新しい花嫁/犠牲者を提供してやったのか、出演者の経歴の調査なんてしなかったのかと、散々言われてしまった。さらにハネムーンから帰ってきたコンガー女史は、すぐさま離婚を請求した。二人はハネムーンの最中、一度もHしなかった。毎晩別々に寝てましたと発表、結婚は白紙に戻したいと訴えたのである。あんた、本当に彼の金だけが欲しかったのね。慰謝料だけはたんまりせしめる気でいるんでしょう。真っ青になったFOXは、この夏から放送する気でいた続編製作を即座に撤回。ついでに同様のリアリティ・ショウ(いわゆる「決定的瞬間」とやらばかりを集めた、視聴者をいたずらに煽る番組です)もすべて製作/放送を取り止めると発表した。これはとんだ瓢箪から駒、私としてはこれ以上望むべくもない展開である。今後「When Good Pets Go Bad」(愛らしいペットがある拍子に飼い主の手を噛んだというような瞬間を集めた番組)なんて、TV欄で番組名を見ただけで気が滅入るような番組がこの世から消え去ってくれるのである。これが喜ばずにいられるか。「マルコム・イン・ザ・ミドル」なんて従来のシットコム界の常識を破るようないい番組も放送しているチャンネルである。やればできるのだ。リアリティ・ショウなんてやめて早くドラマ/シットコム路線を邁進して欲しい。

話はまだ続きがある。新郎のロックウェル氏はともかく、コンガー女史に今の心境を訊ねるインタヴューの依頼が殺到した。特にアメリカの朝を仕切る二つのトーク/ヴァラエティ・ショウ、ABCの「グッド・モーニング・アメリカ (GMA)」とNBCの「トゥデイ」がデッド・ヒートを演じた挙げ句、コンガー女史はGMAに出演を承諾、結婚離婚の詳細についてインタヴューに答えることになった。しかし、トゥデイも搦め手から攻める。何でもコンガー女史のおじさん経由で出演を承諾させたそうで、結果、コンガー女史は同じ日に同時間帯で放送されている二つの生番組にかけもちで出演することになった。二つの番組の収録スタジオは共にニューヨーク。GMAはタイムズ・スクエア、トゥデイはそこから10ブロックも離れていないロックフェラー・センターである。番組は共に朝7時から9時まで。急げば番組時間内に充分二つのインタヴューをこなせる。しかしGMAは面白くない。そこで策を弄し、コンガー女史のインタヴューを番組の最後まで遅らせるという暴挙に出た。インタヴューが終わったのが9時直前。これではいくらなんでもトゥデイには間に合わない。トゥデイはしょうがなく翌日コンガーにインタヴューを行なったのであるが、なんてったって既に二番煎じ、印象は薄い。当然怒りましたね。正面からGMAを罵ったのであるが、後の祭りである。その後はお決まりのトゥデイとGMAの口舌戦という泥仕合が展開したのであるが、いやあ、アメリカTV界の醜さを充分垣間見せてくれた事件の顛末でありました。

追記(2000年6月):
さてさてダーヴァ・コンガー女史、離婚が成立した後は一躍セレブリティとなって、一時期はトーク・ショウというトーク・ショウでゲスト出演する人気振り。ほぼ毎日コンガーねたで観衆を沸かしていたジェイ・レノがホストを務める「トゥナイト」で、そのコンガーがスタジオ内に姿を現わした時だけ、コンガーねたのジョークを控えていたのがおかしかった。やはり本人を目の前にしてはどぎついジョークは飛ばせないようだ。

コンガーはそうやってアメリカ中を飛び回っていたので、当然といえば当然だろうが、勤めていた病院を馘首になった。そして電撃の「プレイボーイ」誌でのヌード披露の発表。やっぱりそうきたか。何でもヌード料は6桁の金額だそうで、ふーん、最低でも10万ドル、1,000万円か‥‥悪くないじゃん。当分遊んで暮らせる。来年の今頃はソープ・デビューと私は踏んでるんだが‥‥

しかし、私はコンガーのその後なんてどうでもいい。脱いだプレイボーイが発売になったら買ってみようかなとは思うけど。しかし、しかしそれよりも、唖然というか、頭に来たのが今秋のFOXの編成である。あれほどもうリアリティ・ショウは編成しませんと言った舌の根も乾かないうちに、11月のスイープに「セクシスト・バチェラー・イン・アメリカ (The Sexiest Bachelor in America)」と「ディヴォース・ミー (Divorce Me)」という2本のリアリティ・ショウを編成すると発表した。「セクシスト・バチェラー」は、タイトルからしてほとんどこの「マルチミリオネア」と同様の番組だろうというのは容易に想像できる。「ディヴォース・ミー」の方は、離婚のプロセスを進行中のカップルを追っかけるというもの。恥知らずの極致とはこのこと。FOXめ、まったく懲りてなかったようだ。はああ、なんというか、もう、ほんとにがっかりだよ。

追記(2000年7月):
ついにコンガーがヌードとなったプレイボーイが発売になった。しかし、私は表紙となっているコンガーがここでもまたウェディング・ドレスを着ているのを見て、何故だが途端に買う気をなくしてしまった。そういうのってあるなあ。今日発売か、明日発売かと気にしていたのがいざ発売されると、もうその日が来るのを心待ちにしていたうきうき気分がなくなってしまい、一挙にどうでもよくなってしまう。別に本心から綺麗だとも思っていない女性が脱いだからって、それがどうなのさって感じである。アメリカではプレイボーイはビニ本販売だから、ぱらぱらとめくってみることもできなかったが、もうどうでもいいや。ところで、今回のコンガー女史のギャラは50万ドルだそうである。これで女史はお母さんに家を買って、当分何もしないで過ごすのだそうだ。へえ、結構親思いの人だったのね。

しかし、今回実に不思議に思ったのが、ビニールに包まれているプレイボーイのすぐ上には、こんなソフトなヌード写真じゃない、モロ出し発射シーンつきの本格アダルト本が、こちらはなんのカヴァーもなくて売られていたことである。この差は何?と思ってしまう。元々付録にCDとかが付いているコンピュータ関係の雑誌とかは、万引き防止用にビニール・カヴァーがついているのが多いのだが、しかし、プレイボーイが中の写真だけ見て購入する者が少ないためにカヴァーつきであるなら、もろアダルト本にはなんでカヴァーがついてないのだろうか。私はいきなりアメリカ雑誌販売の七不思議に出合って困惑してしまったのであった。


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