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あけましておめでとうございます。
学院編
第52話 宣戦布告!
 俺の目の前のホロディスプレイには、現在リランス王国軍とルゼブル共和国軍が睨み合っている平原が映っている。
レイプトヘイムが発進してから大体18時間程たった。
本当はもっと短時間に来れるんだが、なに分、初出撃なのでいろいろテストをしていて時間が掛かってしまった。
おかげで徹夜だよ。
この世界の戦争ではあまり夜戦を行わないのは助かった。
「そろそろ開戦かな」
それぞれの陣地から炊事の煙が消え、遠目から見ても戦いの準備が整っていくのが分かる。
椅子の背もたれに寄りかかり、徹夜でシパシパした目を揉む。
「兄さん。はいこれ」
声のした方を向くとルーリが、暖かいコーヒーが入ったマグカップを差し出してきた。
昨日の俺が留守の間ルーリには、新しく兵団に入るグレン達にプライベートベースの中を案内してやってほしいとお願いしていた。。
もちろん、丸一日ルーリの訓練に付き合うと言う交換条件付きでだが……。
「おっ。ありがとう」
マグカップを受け取り、一口すする。口の中にコーヒー独特の苦味が走り、少しボーっとしていた頭に渇を入れる。
「うん、うまい」
「どういたしまして。それでどう?」
「ん~?テストはすべて問題なし。操作関係もきっちり思い出したし、戦力の方も質、量共にあいつらを圧倒している。
 負ける要素が無い。…そろそろ、射出したプローブが両方の陣営に着く頃だな。どれどれ」
俺は、それぞれの陣営の様子見る為に新たに二つのホロウィンドウを起動した。


 「諸君!ようやく我々はここまで来た!ファードの街を開放するするまで後一歩だ!
 我らは、憎きリランス王国軍を打ち破り、圧政に苦しんでいるファードの街を開放する!
 そして、全世界をルゼブル共和国の元、統一する仲間とするのだ!」
「「「応!」」」
ルゼブル共和国軍の様子を見ると、お偉いさんらしき豪華な軍服を着た壮年の男が出撃前に兵を集めて激を飛ばしていた。
そして言葉の端々から、世界征服を連想させる文言が飛び出してるな…やはり碌な国じゃなさそうだ。
「我々には最新式の機兵フォメル及びグロームと空船がある!
 その実力は諸君らもその目でしかと見てきたことだろう!
 たとえ貴髪が出てこようとも恐れるに足らん!我々は既に一人貴髪を倒しておる。
 残る一人も我らの手で打ち砕いてくれようぞ!
 我々に女神の加護があらんことを!」
「「「我々に女神の加護があらんことを!」」」
えっ貴髪さん一人やられちゃったの?マジで…?弱くないか?
お偉いさんが言い切ると、副官らしき男が一歩前に出た。
「機乗兵は全員搭乗せよ!総員駆け足!各部隊長は作戦の最終確認を!」
そして、共和国兵達はそれぞれ自分の機兵や持ち場へと駆け出して行った。
え~っと、奴さんらの機兵の数は今のところ…ドプルが337機にフォメルが49機グロームも約48機か、
俺が前に見た時より増えたな。歩兵も2254人と増えてるな。
近くに空船が無いとなると何処か別の場所に待機させてあるんだろう。
さて、次はリランス王国軍だな。

 「野郎共!とうとうこの日が来た!ルゼブル馬鹿共がファードの街を奪おうと目の前まで迫ってきてる。
 俺達はあの馬鹿共を迎撃してきたが、あのクソ忌々しい空船と新型機兵のせいでここまで攻め込まれちまった。
 しかし今回は絶対に俺達は負けられない!何故なら俺達の背にはファードの街がある。
 ここで負ければ、街が戦場になっちまう。そんな事許せるかお前ら!」
「「「否!」」」
こちらの指揮官は赤の貴髪か…。確かあいつは、東方○敗の魔道士バージョンの方か、
という事はやられたのは大規模魔法を使っていた奴か。
「そうだ!否だ!リュンの奴は、お前らを守ろうとして負傷した!
 何故だ!それは、お前らに守る価値があるからだ!ここで負ければ俺達はその価値を失う!
 俺達はその価値を証明しなければなんねぇ!そうだよな!!」
「「「そうだ!」」」
「いくぜ!野郎共!」
「「「応!」」」
もう一人の貴髪はリュンって言うのか?それにしても仲間を庇って負傷なんて思ったよりも甘ちゃんな貴髪なんだな。
残ったほうも熱血型か…ちゃんと軍師が居るんだろうか…ちょっと心配だな王国軍。
それでこちらの陣容はっと……。機兵613機に歩兵2562人か……。やはりこちらも増員してるな。
ん?大半がボルドスだけど、ちらほらリランス王国軍所属じゃない機兵もあるな。
きっと機兵乗り達から召集した傭兵だろうか。
戦力を比較するとまぁ大体互角ぐらいかな…。
後はそれぞれに切り札である貴髪と空船をどう使うかで勝敗は分かれるな。
…俺達が居なければ。


 「じゃあアリス、手筈どおりに頼むよ。クリシアさんも起きてください。始めますよ」
「了解しました。旦那様」
『へっ?やっと始まるの』
クリシアさんは、昨日のミレスとの買い物を邪魔しない代わりに俺の魔力を要求。
俺の魔力を大量に吸い、酔っ払って寝ていたのだ。
そのくせ、今日の戦いの様子を見たいから起こしてねぇ~っと来たもんだ。俺は徹夜でテストしてたのに……。

 既に両軍は陣形を整え、開始の合図を待つばかりとなっていた。
双方の指揮官機が手を上げ、今にも突撃の合図を出そうとした瞬間、戦場に似合わない女の声が響き渡った。
「すす……!?」
「蹴散ら…!?」
「少々お待ちください」
「誰だ!」
「どこから声がっ!」
突然の声に両軍指揮官が驚き、キョロキョロとあたりを見回す。
「上だっ!」
指揮官機の近くに居た歩兵が空を指差す。つられて上を見上げた面々は驚愕の光景を目にする事になった。

「ECS不可視モード解除」
「了解、ECS不可視モードを解除します」
担当のメイドロボが操作すると、艦を覆っていた不可視のフィールドがノイズと共に消え去る。
そしてレイプトヘイムは圧倒的存在感を撒き散らしながら歴史へと登場した。
「何だ!?あれは…敵の新兵器かっ?」
「ありえない……」
そりゃそうだろう。共和国軍が使用している空船の全長がせいぜい100m弱、比べてレイプトヘイムは250m。
共和国軍の有している空船より倍以上の長さを誇り、更には透明化することが可能な船など想像の埒外だ。
「突っ込んでくるぞ!」
レイプトヘイムは機首を下げ、両軍の間へと横から降下しながら突っ込んでいく。
「引けっ引けっ!」
両軍軍人達が蜘蛛の子を散らすように逃げた。
そんな中、轟音と共に砂塵を巻き上げつつレイプトヘイムは両軍の間に着陸した。
城が突然空から降ってきたようなものだ。
そこに居る人間は全員その光景を信じられないような面持ちで見ている事だろう。

「着陸完了しました。異常はありません」
「分かった。予定通り手の空いている者は全員、甲板へ集合せよ」
「「「はいっ!」」」
アリスは、ほかのメイドロボ達の報告を聞くと指示をだし、艦橋に最低限の人員を残し甲板へと向かった。

混乱していた兵達も落ち着きをなんとか取り戻し、再び隊列を組もうとしていた。
「隊列を組み直せ!何が起こるかわからんぞ!」
「おいっ!あそこを見てみろ!誰か出てきたぞ!」
「あれは…メイド…か?」
突然空から降ってきたレイプトヘイムを見上げていた兵達は、甲板(と言うかコンテナの上)に出てきたアリスたちを指差し、疑問を口にする。
「なんだってあんな物からメイドが?」

さぁこれからだ。
俺達の一世一代のお披露目式の開幕だ。とことん派手に行こうぜっ!
ブンと音が鳴ったと思うとレイプトヘイムの上空に大きなホロウィンドウが出現した。
そこに映っているのは艦橋を出て、艦の一番前に立ったアリスだ。
アリスの着ているメイド服は特別で右肩のパフスリーブ(ドレスにある肩のふくらみ)を赤く染めている。その為、地上からでも遠目でもアリスがそこにいる事が分かる。

「何だアレは?幻か?それに映っているのは…人形?ゴーレムの一種か?」
メイドロボ達の異相に兵の誰かがつぶやいた。

アリスは軽く一礼すると、話し出した。
「お待たせしました。私は旦那様にお仕えするメイド。
 名前はアリス・レギオンと申します。
 これから我々の旦那様のお言葉をお伝えします。
 しばらく御静聴ください」
ホロウィンドウにノイズが走り、椅子に座ったと思われる人物が映し出される。
「誰だアレは?男か?」
確定的表現で説明できないのは、その人物の背後には光源が設置されており、逆光になってよく見えない為だ。
そして、映像の中の人物が喋り出した。もちろん俺の事だ。
と言っても昨日の内に録画しておいた映像なんだよね。何度も台詞を噛んで取り直したのは秘密だ。
「この戦場に居るすべての方に報告させて頂きます」
喋っている声は男とも女とも若いとも老いているとも言えない不思議な声になるように変換してある。
これでもし俺の声を知っている人間が居てもばれる事は無い。
「私達は'デウス・エクス・マキーナ'。
 機動兵器群RR2(ダブルアールツー)シリーズを所有する私設武装組織です。
 申し送れました私はリーダーの…そうですね。ハグルとでも名乗っておきましょう。
 私達デウス・エクス・マキーナの活動目的は、自らの利益の為です。
 自らの利益という大きな目的の為に私たちは立ち上がったのです。
 只今をもってここにいるすべての将兵に向けて宣言します。
 領土・宗教・資源どのような理由があろうと私達の利益を乱す全てのものに対して武力による介入を開始します。
 ソレを幇助する国、組織、商人なども私達の武力介入の対象となります。
 私達はデウス・エクス・マキーナ。
 この世から私達の利益を脅かすものを根絶させるために創設された武装組織です。
 …手始めにここに存在するすべての機兵を破壊・回収させていただきます。
 これは私達からあなた達リランス王国軍、ルゼブル共和国軍両軍に対しての宣戦布告です」
中二心溢れる組織名の元ネタは、某魔を断つ剣…ではなく、演劇の演出技法の方だ。
簡単に言えば登場人物にはどうしようもなくなった場面で神様が出てきて何とかする。そういうオチの事だ。
ある意味神の力で作り出された俺やロボ達にはお似合いの組織名だろうと思っている。
俺の映像が途切れると再びアリスが映し出される。
「以上です。これから私達は戦闘行動に入ります。
 皆様方におかれましては、存分に力を振るっていただきたいと思います。
 それでは皆様、よろしくお願いいたします」
アリスはそう言うと両手でスカートの裾を摘み、片足を引いてお辞儀をした。
甲板の端に立っている他のメイドロボもアリスとまったく同じタイミングでお辞儀をする。
ちなみにこの礼の仕方は'レヴェランス'または'カーテシー'というらしい。

「「ふざけるなっ!」」
それは奇しくも敵対していた両軍の指揮官が同時に叫んだ言葉だった。
…本当は今回で戦闘終結まで書く予定が、まだ戦闘すら始まってないよ!
さぁ頑張って戦争部分を書くか。
それでは皆様、
今年もよろしくお願いいたします。
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