首都圏の交通の大動脈、首都高速道路。
最初の区間が開通してから20日で50年を迎えます。
そこで2回にわたって、首都高速道路の現状や課題をお伝えします。
1回目は、老朽化が進む中で問われる維持管理についてです。
首都高速道路の最初の区間、京橋と芝浦の区間が開通したのは昭和37年。
東京オリンピックを2年後に控えた時期でした。
高度成長期に入って自動車が増えはじめ、深刻化しつつあった混雑の解消が目的でした。
当初は、都心を囲む環状線と放射状に伸びる8本の路線、71キロを整備する計画でした。
しかし、東名高速道路など各地で高速道路が整備され、それをつなぐ新たな役割も求められようになります。
その結果、総延長は昭和63年までに200キロを超えました。
しかし、これが新たな渋滞を招く要因になります。
首都高速を経由して長距離を移動する車が増えたのです。
この結果、「長大な駐車場」、「首都低速」などとやゆされるほどの激しい渋滞が日常的になったのです。
タクシーの運転手さんに当時の話しを聞きますと、「渋滞で動かないので、車の中で用を足してもらったこともあります」といったびっくりするようなエピソードもあったということです。
こうした渋滞を解消するため、新たな路線の整備が進み、総延長はおよそ300キロに達します。
そのうちおよそ30パーセントは、建設から40年以上がたっているのです。
こうした中で起きた中央道笹子トンネルの事故を受け、首都高速道路でも緊急点検が始まりました。
換気用の大型ファンや案内標識など、トンネル内につり下げられたすべての設備が対象です。
首都高速道路全体では合わせておよそ500か所にも上るということです。
こうした点検の結果、一部のトンネルでは天井をつっている金具の一部が破断しているのが見つかりました。
点検作業の現場責任者は「部分的には、ボルトがさびているなど損傷がたまに見つかります。とにかく1か所1か所丁寧に点検しています」と話しています。
老朽化が進むのは古い構造物だけではありません。
開通から19年がたつレインボーブリッジ、高さ126mの主塔の上から見ると、橋をつっているメインケーブルの塗装がはがれ始めています。
塗装は8重にも施されていますが、赤い色は表面から半分ほどがはがれたことを示しています。
首都高速道路保全工事事務所の伊東昇所長によりますと、「放置しておくとさび止めも落ちてケーブルがさびるので、今は塗装の塗り替えの工事を始めています。残りはもう2〜3年かけて全体を塗っていく予定です」ということです。
一方で、老朽化を加速させている現実もあります。
首都高速道路の交通量は1日100万台。
荷物を積みすぎている過積載の車両も後を絶たず、取締りが行われたこの日も、重量制限のおよそ2倍にあたる、48トンもの重量があるトラックが見つかりました。
首都高速道路では、昨年度、道路の建設費が635億円だった一方で、維持管理には547億円がかかっています。
このため補修の必要な箇所を4段階に分け、優先順位を付けて管理しています。
しかし、「5年を目安に補修が必要」とされるか所だけでも9万7000カ所に上っているということです。
首都高速道路保全・交通部の今村幸一課長は「9万7000か所のうち、どこから手を付けるかという優先順位は大事で、点検の仕方を考えていかないといけない」と話しています。
半世紀にわたってほぼ休むことなく建設が続けられてきた首都高速。首都圏を支える長大な道路網となった今、老朽化と膨大な補修の必要性という課題に直面しています。
首都高速道路会社の菅原秀夫社長は「首都高は50年を迎えましたが、当然、施設の老朽化も進んでいます。しかし、首都高は首都圏もさることながら、日本全体の経済や社会活動の基本的なインフラだと考えています。利用者が安全に利用できる首都高づくりがなにより大切だと思います」と話しています。