名古屋グランパスは7日、名古屋市内のグランパス本社で新潟の元日本代表FW矢野貴章(28)と仮契約を結んだ。2年契約で、年俸は推定3000万円。長年過ごした新潟への強い愛着を明かしながら、新天地を選んだ理由について矢野は「自分のサッカー人生を考えたときに、ここに移籍して成長することがいい選択だと思った」と、再起への思いを語った。
2010年南アフリカW杯日本代表にも選出された眠れる大砲の入団が、正式に決定した。矢野はこの日、仕事始めとなった名古屋グランパス本社を訪れ、仮契約。「非常にうれしく思っていますし、さらにがんばらなければいけない。早くみなさんに応援したいと思われる選手になりたい」と、硬い表情で第一声を発した。
「新潟は愛着、思い入れがあった。難しい決断だった」。吐露したのは複雑な心情だった。05年に柏がJ2降格した際に移籍してから、新潟で4年半を過ごした。昨年はドイツ・フライブルクで戦力外となった矢野を再獲得してくれた。恩もある新潟をわずか1年で出た。仮契約後に更新した自身のブログでも「仲間と別れるのは非常につらい事です。昨シーズン新潟に戻ってきて、本当にあたたかく迎えてもらいました。そんな中、結果が出せなかった事が悔しく、苦しい1年でした」とつづった。
すべては輝きを取り戻すためだ。昨季はリーグ戦30試合でわずか2得点。06年以降最少の得点数で、FWとして袋小路に迷い込んだ。「個人能力の高い、すばらしい選手がいるなかで切磋琢磨(せっさたくま)して試合に出たいし、多くのゴールを取れるようにがんばりたい」。新潟以上に厳しいグランパスでのレギュラー争いを勝ち抜かなければならない。あえていばらの道を選んだ。
当初はサイドバックとしての起用も予想されたが、久米GMは「ハーフラインより前をやるということは事実」と、サイドバックとしての獲得ではないことを強調。「ドイツで出場機会を得られず、昨年はブランクを埋める時間になった。今年はブランクを感じさせない実力を出してくれるはず」と、FWとしての復活を期待した。 (宮崎厚志)
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