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“書聖”王羲之 新たな資料見つかる
1月8日 4時25分

日本の書道史に奈良時代から影響を与え続けている、4世紀の中国の書家、王羲之の筆使いを伝える新たな資料が、日本で見つかりました。
王羲之の資料は国宝に指定されているものもあり、専門家は「遣唐使が唐から持ち帰ったとみられる極めて貴重な資料だ」と話しています。

王羲之は4世紀の中国、東晋の書家です。
書を芸術に高めたとして「書聖」と称され、現代でも学校の教科書で書道の手本とされるなど大きな影響を与え続けています。
実際に本人が書いたもの、いわゆる「真筆」は戦乱などによってすべて失われ、模写や複製されたものしか残っていません。
このうち、今から1400年近く前、中国の唐の時代に皇帝の命令で「双鉤填墨(そうこうてんぼく)」という高度な手法で精巧に模写されたものは、王羲之の筆使いを忠実に伝える資料として特に高い価値があるとされています。
今回見つかったのは、この「双鉤填墨」による王羲之の書で、親しい人に宛てた手紙の一部とみられ、縦およそ26センチ、横10センチ余りの紙に3行、24文字で「私は日々疲れております。あなたのために、日々を過ごしています」などと書かれているということです。
去年10月、国内で個人が所蔵していることが分かり、東京国立博物館などの専門家が鑑定を行いました。
鑑定の結果、独特の双鉤填墨の手法で書かれていることや、王羲之の一族とみられる人の名前が書かれていること、また、王羲之がよく用いる慣用表現があることや、折り目のような筋が縦に入った「縦簾紙(じゅうれんし)」という紙を使っていることなどから、王羲之の書をもとにした資料だと判断したということです。
双鉤填墨による王羲之の書は、中国や日本など世界でも10点に満たない数しかなく、一部は国宝に指定されています。
鑑定を行った東京国立博物館の富田淳研究員は「王羲之の書の特徴を十分満たしていて、まちがいないと判断した。遣唐使が唐から持ち帰ったと考えられ、王羲之の筆使いに迫る極めて貴重な資料だ」と話しています。
この書は、今月22日から東京・上野の東京国立博物館で開かれる特別展で公開されます。
双鉤填墨による王羲之の書は40年前の昭和48年にも「妹至帖(まいしじょう)」と名付けられた手紙の一部が日本で見つかっていて、今回の発見はそれ以来です。

専門家“文字に王羲之の特徴”

今回発見された王羲之の新資料について、実物を調べた中国書道史に詳しい跡見学園女子大学の西林昭一名誉教授は、紙に含まれる放射性炭素の量で年代を測定する科学的な手法で年代を特定させる必要があるとしながらも「文字を拡大して調べたところ、双鉤填墨の手法が使われていることが確認できた。『便』『報』『情』『為』などといった文字に王羲之の特徴がよく現れているし、『縦簾紙(じゅうれんし)』と呼ばれる唐の時代などに見られる特殊な紙も用いられているので王羲之の書とみて間違いない」と話しています。
そのうえで、「今回見つかった書はこれまで平安時代の名書家、小野道風の書として伝えられてきたということだが、道風の書が双鉤填墨で模写され、伝えられているとは考えにくいし、道風の書はもっと日本的な様式になる」と指摘しました。

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