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ソーシャル革命の裏側

任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム
「3DS」「Wii U」の逆襲(前編)

(5/5ページ)
2013/1/6 7:00
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 相手に打ち勝ち、仲間に褒められることで得られる「優越心」「虚栄心」、さらにはガチャによるまぐれ当たりを期待する「射幸心」を刺激されたユーザーは、際限なく課金を繰り返すようになる。それが、今のソーシャルゲーム業界の収益を支えている。

■「私なりに思うことは当然あります」

 こうしたビジネスモデルは、後から課金する「アイテム課金」とは分けて考えるべきであり、岩田社長は否定的に考えている。これまで決算説明会などで幾度も、「『数字のパラメーター(設定値)だけを触って何かのカギを開けるとか、何かがものすごく有利になるとかという形で課金する』ということを追求すると、確かに短期的に収益は上がるのかもしれませんが、お客さまと私たちの間で、長期的な関係は作れない」などと話してきた。

 この部分を掘り下げるべく、岩田社長に「射幸心をあおって課金を促す手法について、どう考えているのか」と突っ込んで聞いた。任天堂プラットフォームでゲームソフトを提供しているゲーム会社の多くは、GREEやモバゲーにソーシャルゲームを提供している。だからであろうか、岩田社長はひとつ1つ言葉を慎重に選びながら、話し始めた。

「ニンテンドー3DS」は多くの子供たちも手にしている(2011年8月、東京都豊島区)
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「ニンテンドー3DS」は多くの子供たちも手にしている(2011年8月、東京都豊島区)

 「私には私なりに思うことは当然あります。自分の商道徳から考えて絶対に受け入れられないことをやっている方たちがいるのも事実です。ですが、私の今の立場でそれを外に向かって発言できるかっていうのは、また別の話でね。しかも、今うちの業績が何の問題もないならいざ知らず、ずっと長いあいだ続いていた記録を途絶えさせてしまった張本人である私が他社さんのサービスについてあれこれいうのは、これは違うだろうと思っている」

 「ただ、我々は、お客さまが(任天堂や同社のゲームに)どれだけ敬意を持ち続けていただけるかで、長期的な関係が築けるかどうかが決まると思っているんですね。私は、そっち(射幸心をあおる手法)にいかなくても、ゲームビジネスの健全性を維持してみせると思ってやっています。それを世に示した1つの例が、どうぶつの森ですね」

■「本物かどうかを決めていただくのはお客さん」

 「どうぶつの森を楽しんでいただく人がもっと増えて、もっと社会で話題になって、これが本物のソーシャルゲームだといっていただけたら、世間の見方が変わるチャンスかもしれませんね。ただね、これが本物かどうかを決めていただくのはお客さんなんで、私がこれが本物ですというわけにはいきませんから。これが質が高いソーシャルゲームだよねとか、これが本物だよねといっていただける方が増えるといいなぁという以上には言えないですけどね」

 「任天堂は任天堂なりの方法でソーシャルゲームを発展させ、健全なゲームの世界を守り抜く」――。岩田社長の言葉を咀嚼(そしゃく)すれば、そういうことになる。とびだせ どうぶつの森は、そんな任天堂が考えるソーシャルゲームを体現し、多くの人に受け入れられた。

 だが任天堂流のソーシャルゲームは、これに終わらない。昨年12月、任天堂は、任天堂なりのソーシャルゲームを発展させる新たな挑戦に取り組み始めた。(後編は13日掲載予定です)

(電子報道部 井上理)

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