GREEやモバゲーが開拓したソーシャルゲームの世界は、最初はタダで遊べて、はまったユーザーが後からアイテム課金をして楽しむ「フリーツープレー」が基本。フリーツープレーか否かという定義でいえば、任天堂と、GREEやモバゲーの世界には明らかな違いがある。そうした世界の新たなビジネスモデルについて、岩田社長は、どう捉えているのだろうか。
■「フリーツープレーを否定するつもりはない」
「デジタルでのディストリビューションが可能になり、少額決済も可能になったことで、娯楽の提供とお金のいただきかたのバリエーションが増やせるようになった。それは世の中の変化であり、ゲームの質で勝負するのも、お金のいただきかたで工夫をするのも、私は同じようにクリエイティブなことだと思います。だから、後からの課金や、フリーツープレーについて、私はまったく否定するつもりはありません」
「じゃあ、それを任天堂がやるかどうかについてですが、まず、任天堂がすでに知名度や面白さの信用を確立した商品について、そういうことをするつもりは、あまりない。例えば『マリオ』のソフトに4800円なり5800円を出す価値を認めていただいてる方に対して、課金してカギを開けないと楽しめない、というようなことはしないということです」
「でも、マリオでもっと多くのステージを遊びたいという人たちもいらっしゃるわけで、その人たちに向けて新たなコースを作り、課金して追加できるようにするというようなことは別の話。それは一部タイトルですでに始めています。そして、任天堂も知名度ゼロの新規タイトルについて、このゲームの構造はフリーツープレーに向いているね、ってなったら、やるかもしれないし、フリーじゃなくてチープから始めるかもしれない」
「販売方法の自由度が生まれたわけで、その自由度を自分たち自身で消してしまおうとは思ってはいません。ただ、そういうものが任天堂から出たとしても、それは任天堂が変節したのではなくて、新たな自由度を生かすために面白いアイデアが生まれたので使いました、ってだけ。マリオや『ポケモン』の売り方を変えましょう、という話ではありません」
■ソーシャルゲーム業界の収益を支えるもの
任天堂もフリーツープレーに挑戦する含みを残した岩田社長。時期については、「我々自身がこれは手応えがあるって思ってからでないと世に問うべきではない。個々のタイトルの期日を細かく決めすぎると、ひと粘りできなくなるので決めてない」と明言を避けた。
ただし、これをもって「任天堂がアイテム課金に変節、ソーシャルゲーム陣営に対抗」などと騒ぎ立てるのは早計だ。「お金を払えば払うほど有利になる」という、いわゆるソーシャルゲームで主流となっている構造を持ち込もうとしているわけではないからだ。
GREEやモバゲーではやっているソーシャルゲームの主流は、カードバトルゲーム。見知らぬ他人とカードの強さを競うタイプで、強くするためには有料の「ガチャ」を引いて戦闘能力の高いレア(希少)なカードを当てたり、あるいはショップでバトルを有利にするアイテムを購入する必要がある。ゲーム運営会社は、ユーザーの課金タイミングを分析しながら、イベントや新たなアイテムの追加といった課金額向上のための施策を巧妙に投入するのが基本だ。
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