中国・韓国に「買われた」日本人技術者たち 給料5割増しで引き抜かれても、わずか3年でポイ捨て その哀れな末路パナソニック・ソニー・シャープの場合

2013年01月07日(月) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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 私自身の例でも、年収はソニーに勤めていたときより5割増しになりましたし、運転手付き自動車や高級マンションを提供されましたが、仕事では甘えは一切許されない組織でした」

中国に個人情報が流れている

 サムスンによる日本の最先端技術の獲得方法は年々巧妙になっている。

 '09年には、パナソニックの子会社でこんなことが起きた。九州で工業用ロボットを製造していた事業所を閉鎖するにあたり、従業員を別の事業所に配転しようとしたところ、数十人の元技術者がそれを辞退した。そのうちの一部が独立して会社を作ったという。当初は各自の技術を生かしたビジネスを始めると目されていたが、まもなくその事業を知ったパナソニック関係者は思わず唇を噛んだ。

「その独立した会社がサムスンと業務委託契約を結んで仕事をし始めたのです。海外のライバル企業に転職すると、あいつは日本の技術を売ったと後ろ指をさされますが、会社と会社の商取引なら個人名は出ないうえに、相手企業から堂々と報酬を受け取ることができるというわけです」

 こうしてサムスンは、日本企業が長い時間をかけて積み上げてきた技術をわが物にしていっている。

 事情は中国の家電メーカーでも同じだ。

「実際、彼らの情報収集能力はすごいなと感じました。人を見る目も情報も持っているし、侮れません」

 と話すのは、元ソニーの技術者・原田節雄氏だ。

 原田氏は'10年のある日、中国のハイアールから突然のメールを受け取った。それは退職する4ヵ月前のことだった。メールには「CTO(最高技術責任者)との面談をセッティングするので時間をとってほしい」と書かれていた。

「それまで多数の中国政府関係者と仕事をしてきましたし、信頼もされていました。おそらく私のメールアドレスは、中国政府経由で知ったのでしょう。私の心には迷いがありましたが、『とにかく当社に来て話をしてほしい』と熱心に誘われました」

 原田氏の興味が勝り、「行って話をするだけなら」と返答すると、すぐに飛行機のチケットが送られてきた。中国・青島にあるハイアールの本社に出向き、現地に4日間滞在。最終日の夜には豪勢な食事の接待を受け、その席で幹部の一人が、「年俸はいくら欲しいですか?」と尋ねてきたという。

「私は控えめに20万ドル(当時約2000万円)を提示してみました。相手はニヤリとして、即座に『OKです』と言いましたね。想定していた金額より安かったのでしょう。

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