経済の死角

中国・韓国に「買われた」日本人技術者たち 給料5割増しで引き抜かれても、わずか3年でポイ捨て その哀れな末路パナソニック・ソニー・シャープの場合

2013年01月07日(月) 週刊現代
週刊現代
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 日本の先端技術を海外に売り渡す。「生活のため」と言われたら、それを止めることなどできるだろうか。成長戦略を見失い、定見なきリストラを繰り返すだけ。国内の電機メーカーが招いた悲劇を描く。

最後に屈辱が待っている

「5年前ならパナソニックやソニー、シャープの技術者が、私たちの会社に登録して、転職を希望することはまずありませんでした。ところが、いまは大手家電メーカーに勤める技術者が毎日、しかも複数の方が登録をされています」

 こう話すのは、人材紹介会社『プロフェッショナルバンク』社長の児玉彰氏だ。日本企業から韓国や中国のメーカーへの転職を希望する人材は増え続けている。

「今年これまでに転職をしたいと相談に来られた方は、大手電機メーカーだけで100名は超えています。20代や30代の若い技術者もおられますが、多いのはやはり50代。部長以上の役職者が中心です」

 彼らの転職先は、今や日本企業よりも海外企業のほうが圧倒的に多い。多くの日本のメーカーが危機的な状態に陥り、大規模なリストラを進めているからだ。

 だが〝泥船〟と化した国内企業から、運よく成長著しい韓国や中国の企業に乗り移れたとしても、そこに待つのは〝哀れな末路〟しかないとしたら・・・・・・。

 実際、サムスンに「買われた」技術者がどういった末路を辿ったのか。

「自分の技術を活かせる職場と待遇に魅力を感じて、日本のメーカーからサムスンに移ったものの、理想と現実のギャップに失望する技術者は大勢います」

 ソニーに21年間勤めた技術者の小黒正樹氏はそう指摘する。'00年にサムスンに移り、のちに同社の常務まで務めた人物である。その小黒氏が、韓国メーカーの体質を語る。

「韓国人技術者は基礎的な理論より結果を欲しがります。彼らは韓国語で『急げ急げ』と言うのですが、それが意味するのは、基礎から学ぶより早く最終商品が欲しいということ。彼らの興味は、日本製品と同等のものを急いで量産することに集中しています。だから、日本人技術者が基礎をじっくり教えようとしても報われず、商品化に必要な技術さえ手に入れればいいという態度を取るのです」

 実際にサムスンであったケースを紹介しよう。

 '03年頃、サムスンはAV機器の品質を改善するために、パナソニックの技術者をヘッドハンティングした。このとき、パナソニックとともに開発に携わっていた下請け会社の技術者もセットで、サムスンは開発チームごと引き抜いたという。その結果、パナソニックの技術力を吸収し、サムスンのAV機器の性能は劇的に向上したが、問題はそのあとだ。

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