ある日、父親の墓参りの帰り道、長谷川平蔵(中村吉右衛門)を刺客(嶋田久作)が襲う。が、平蔵の気迫に刺客は姿をくらます。
三ヵ月後、従兄にあたる三沢仙右衛門(橋爪功)とその息子・初造(金田明夫)が、平蔵の役宅を訪れる。仙右衛門が山吹屋という茶屋で働いている女中・お勝(床嶋佳子)を嫁にもらうというのだ。平蔵は仙右衛門のために、お勝がどんな女性か見きわめようと山吹屋を訪れる。平蔵の前に現れたお勝は、仙右衛門の言うとおりの女性だったが、どこか腑に落ちぬ点があった。念のため密偵の五郎蔵(綿引勝彦)に、お勝の素性を調べるよう命じる。五郎蔵は、以前平蔵に命を救われた盗賊で、その後密偵となった“関宿の利八(吉田栄作)”を山吹屋に差し向ける。大店の主人を装って山吹屋を訪れた利八の前に現れたお勝は、なんと昔盗賊として一緒に働き男と女の関係になり、後に別れ別れになった“おしの”であった。この後、二人の消息はぷっつりと途絶えた。
不審に思った平蔵は、与力、同心に、おまさ(梶芽衣子)、小房の粂八(蟹江敬三)らも加え捜査を開始する。粂八は、山吹屋の様子をしきりにうかがっている荒川の久松(田中要次)から、おしのは山吹屋のお勝として鬼平の従兄、仙右衛門の命と金蔵を狙った「引き込み」であると推理する。さらに久松の背後から凶賊「霧の七郎(平泉成)」という人物が浮び上がってきた。