さらに悲惨なのは東北地方以外の中小建設業者。大手と違い、越境して復興需要にありつく規模と体力はないが、費用高騰のあおりは受ける。ただでさえ、公共工事激減で業界存亡の危機に瀕しており、今回のコストアップで息の根が止まる懸念もある。
未曾有の災害が生み出した巨大な建設需要だが、手放しで喜べる状況には決してない。また、復興需要が盛り上がるのはせいぜい5~10年ほど。なにも手を打たなければ、その後は再び、震災前と同じように少ない公共工事に群がり、いつ倒れるか知れないガマン比べをする日々に舞い戻る。
震災以降、インフラ整備を再評価し、八ッ場ダムや整備新幹線、そして高速道路など、中断していた大型プロジェクトが一気に再開する動きもあるが、これまた公共事業の分配にメリハリがつけられただけで、パイが大きくなったわけではない。
真っ暗な未来しか描けなかった建設業界。復興需要は、そこに差し込んだひと筋の光となったのは間違いないが、これを機に生き残りへの道を歩むことができるかどうか。業界の知恵が試されている。
復興バブルで
浮かぶゼネコン、沈むゼネコン
『週刊ダイヤモンド』1月28日号の第1特集『復興バブルで浮かぶゼネコン 沈むゼネコン』では、復興バブルにありつけるゼネコンと、そうでないゼネコンをあぶり出し、復興需要の光と影をお伝えします。
なかでも注目は、大手ゼネコン30社を対象に、東北地方で発注された公共事業の受注率や土木工事比率を基に作成した「復興で浮かぶゼネコン格付け」。結果は本誌をご覧いただきたいのですが、意外な傾向が見て取れました。
その他にも、復興需要にありつけない地方の建設業者の実態について、全国縦断レポートと都道府県別1109社建設業経営危険度ランキングなどを通してご紹介します。
建設業の実態だけでなく、震災の復旧・復興の現実も見て取れますので、建設業に従事されていらっしゃる方も、そうでない方も興味深く読んでいただくことができると思います。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 田島靖久)