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 現在のところ、実際に動き出している大きな復旧・復興事業はがれき処理のみ。今後は除染や港湾・道路などの本格復旧、そして津波被害に遭った住民の高台集団移転など、大規模なプロジェクトが次々と誕生する。

 政府がこれまで確保した復興関連予算は18兆5000億円だが、3県の試算を足し合わせれば、必要経費は最低でも30兆円。そのうち、公共事業関連費はかなりの割合に上ると見られる。被災地の経済復興のために、地元建設業者を優先させる政策となっているものの、大規模工事は大手ゼネコンの力に頼るしかない。

 鹿島JVが受注した石巻ブロックでは、1次仮置き場に置いてある685万トンものがれきを処理するため、焼却プラントを作って燃やすほか、細かく分別してリサイクルにも力を入れる。焼却したがれきの分別に必要な人数は、1日なんと1000人以上。焼却プラントを建設したり、これほどの労働者を集められるパワーは大手にしかない。

 今回、熾烈なダンピングをせずにすんだのも、ゼネコンにとっては嬉しい話だった。価格の安さが焦点となる競争入札方式と違い、今回のがれき処理にはプロポーザル方式が採用されたためだ。これは、価格だけでなく、さまざまな工程を評価し、合計得点で落札者を決めるもの。

 石巻地区のがれき処理の場合、県の示した参考業務価格2290億円に対して、2割引きすれば満点だとあらかじめ決まっていた。つまり、2割引き以上、価格が下がる可能性がないということで、過剰なたたき合いにならななかったのだ。

 東北の盟主・鹿島が最大のがれき処理区を落札したことで、談合情報が寄せられるひと幕もあるなど、「ゼネコン大儲け」の図式が成立するかと思いきや、現実はそう甘くもなさそうだ。

人手不足が頭痛の種
利益確保には苦戦か

 「迷惑はかけない(赤字にはしない)から、参加しませんか」

 石巻地区の入札前、鹿島の担当者は、ある宮城県内の建設業者を訪ねてこう持ちかけた。価格で戦わずにすむ代わりに、地元雇用をなるべく多く生み出すなど、提案内容には気をつかわなければならないためだ。

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