境界線上の狙撃手
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第一話「遅れました」配点(集合)
前書き
第一話です。
それでは。
ここ準バハムート級航空都市艦"武蔵"は、
右舷一番艦"品川"
右舷二番艦"多摩"
右舷三番艦"高尾"
中央前艦"武蔵野"
中央後艦"奥多摩"
左舷一番艦"浅草"
左舷二番艦"村山"
左舷三番艦"青梅"
の左右三艦を双胴とした中央二艦の合計八艦の構成で出来てる。
そして中央後艦奥多摩の上には"武蔵アリアダスト教導院"がある。
そこでは既に授業が行われていた。
「よぅ――し」
「三年梅組集合――。いい?」
武蔵アリアダスト教導院の門側で、よく通る大声でそう言うのは"オリオトライ・真喜子"黒い軽装甲型ジャージを着て、背には金属を柄とした長剣を装備している武蔵アリアダスト教導院の女教師だ。
そして教導院の正面、橋の上では人影が幾つもある。もちろん三年梅組の生徒達だ。
彼らに対し教師は笑みを作り言い始めた。
「では、―――これより体育の授業を始めまーす」
● ●
「さて、ルールは簡単です」
「いい?―――先生、これから品川の先にあるヤクザの事務所まで、ちょっとヤクザをぶちk、…殴りに全速力で走って行くから、全員ついてくるように。そっから先は実技ね」
「え?」
と生徒の一部が疑問に声を漏らしたが、教師は無視して話し続ける。
「遅れたら早朝の教室掃除してもらおうかな。――ハイ返事は?jud.?」
「――jud.」
集まっている全員が、返答、了解の意を示す言葉を返した。
その時、長身の男子――生徒会会計の"シロジロ・ベルトーニ"が手を上げ教師に質問した。
「教師オリオトライ、――体育と品川のヤクザどのような関係が。金か?金ですか?」
「馬鹿ねぇシロジロ、体育とは運動することよ?そして、殴るって運動になるのよね。そんな単純なこと、――知らなかったら問題だわ」
シロジロの袖を横から引っ張っているのは金髪のロングヘアの女子――会計補佐の"ハイディ・オーゲザヴァラー"彼女は笑顔のまま言葉を紡ぐ。
「ほらシロ君、オリオトライ先生、最近地上げに遭って飲んで暴れたから教員課にマジ叱られたから――つまり中盤以降は全て自分のせいなんだけど。ていうかそれ報復だと思うのよね」
「報復じゃないわよー。ただムカついたから仕返すだけだから」
「同じだよ!!」
皆で突っ込むがオリオトライは無視して言葉を続ける。
「休んでるの誰かいる?ミリアムは仕方ないとして、後、東は今日の昼戻ってくるわよね、他は――」
「ナイちゃんが見る限り、セージュンとソーチョー、それにソウヤんがいないかなぁ」
そうオリオトライの問いに答えるのは、黒い三角帽に金の六枚翼の金髪の少女――第三特務"マルゴット・ナイト"
「正純は小等部の講師、その後で酒井学長を三河に送りに行くから、今日は自由出席の筈。総長…トーリは知らないわ。奏哉に関してもね」
そう言っているのは、黒の六枚翼の黒髪の少女――第四特務"マルガ・ナルゼ"である。
「んー、じゃあまず"不可能男"のトーリについて知っている人いる?」
オリオトライの問いかけに、皆は茶髪のウェーブヘアーの少女――"葵・喜美"の方を見る。彼女は腕を組み笑みを作ると、
「フフ、皆、うちの愚弟のトーリのことがそんなに聞きたい?聞きたいわよね?だって武蔵の総長兼生徒会長の動向だものね。フフ。―――でも教えないわ!」
「だって朝八時過ぎに起きたらもういなかったから」
「お前いつもハイテンションなくせに起きるの遅えよ!」
と誰かが言ったツッコミを無視して彼女はハイテンションで話し続ける。
「フフフ大丈夫。このベルフローレ・葵、朝から余裕をぶちまけているだけよ。しかしあの愚弟、人の朝食を作っていかず朝から早起きとは、地獄に落ちるといいわ!何しろそろそろ末世で世が終わるしね!」
「あ、あのー喜美ちゃん?三日前はジョゼフィーヌじゃなかったかな?」
ナイトの問いに喜美は、
「あれは三件隣の中村さんが飼い犬に同じ名前をつけたから無しよ!それとマルゴット、私の名前はベルフローレ・葵よ!」
「それじゃ次、奏哉については誰か知ってる?」
オリオトライの問いに今度は皆、長身の黒髪で左目に緑の義眼を入れている少女――"浅間・智"の方を見る。
梅組一位の巨乳で、それをネタによく弄られる。常人の類だが下手にからかうと矢がすかさず飛んでくる。
「え、えーと奏哉君なら朝早くランニングに行ったきりですが…」
「クク、この巨乳巫女。きっと朝から夫婦仲良くあんなことやこんなことをしているのね!」
「誰が夫婦ですか!?それとあんなことやこんなことって何ですか!!」
「え、えと、あん、なこと、や、こん、な、こと、って?」
「鈴さんは知らなくていいんですよー。いいんですからねー。」
そんな浅間にごまかされているのは前髪を伸ばしている盲目の少女――"向井・鈴"キャラが濃すぎる梅組の貴重なストッパーだ。
ちなみに「武蔵の貴重な前髪枠」とは彼女のことであり、彼女を泣かせることは武蔵アリアダスト教導院では犯罪に匹敵する。
「そういえば自分、早朝に奏哉殿を見かk―――。」
「あ、代理特務ならランニング中に酒井学長に連れていかれましたよ。」
手を上げて言うのは、背が低く眼鏡が特徴の少女――"アデーレ・バルフェット"である。
ちなみに言葉を途中で遮られたのは、忍者装束を纏った少年――第一特務"点蔵・クロスユナイト"
普段から顔を帽子とスカーフで隠しており、「自分」「御座る」口調であり、パシリ体質で金髪巨乳好きの残念な奴である。
「また書類整理を手伝わされているのでしょう。基本的にはお人よしですものね、彼。」
そう言うのはボリュームのある銀色の髪が特徴の半人狼の少女――"ネイト・ミトツダイラ"
ちなみに六護式仏蘭西の騎士の家系の生まれで、水戸松平の襲名者である。
「全く、無料で仕事を引き受けるとは…理解できんな」
「お前は何でも金かよ!!」
「とりあえずカレーを食べればいいネー」
シロジロの言葉に皆のツッコミが入るが相変わらず本人は飄々としている。
そしてカレーカレー言っているのは、色の濃い肌に頭にはターバンを巻いている少年――"ハッサン・フルブシ"である。
「じゃあトーリの方は遅刻かな?――生徒会長で総長なのにこれはいかんねー」
その台詞に皆は力のの無い笑みを作る。そんな彼らに対しオリオトライは苦笑しながら、
「まぁ、ね。武蔵の総長は、訳ありだからあんましっかりしてるとやばいしね」
そして周りを窺ってから言葉を続ける。
「面倒よね。眼下にある神州は私達の領土だったのに、それが今や各国に暫定支配されて人々は極東居留地に追い込まれ、――神州の直轄領土が、この武蔵だけになっているなんて」
オリオトライは空を見上げながら、さらに言葉を続ける。
「……現在、この神州は、約百六十前の"重奏世界崩壊"によって重奏世界から落ちてきたもう一つの神州と虫食い状態で合体。"重奏統合争乱"の後、世界各国に事実上の占領をされて、神州という名を"極東"という名に変えられまでしてる」
だが、
「当時、軍事制圧、政治支配をしないという条約上、世界各国は聖譜連盟、通称「聖連」を立て、政府と軍事機関の代理として教導院という訓練施設をもって乗り込んできたわ。だから現在、主要各国は聖連の名の下、教導院を政軍の最高機関として極東をを分割的に暫定支配。支配下の君主達を利用しながら、本来の領土戦争を教導院間の学生抗争として行ってるのよね」
そして、
「この武蔵は、地上の暫定支配された土地や各国の用意した極東居留地とは別で、聖連が唯一認めた極東の領土だけど、やっぱり聖連の監督を受けている、と。何しろ極東の教導院の総長と生徒会長には」
「――教導院の中で、最も能力の低く、何も能が無い者が選出される。トーリのような、ね。」
「でも、そんな事をする理由としては"それが極東が平和であるという事実を証明するものである"だよね?」
オリオトライの言葉に合わせるように言葉を投げかけるのは、眼鏡を掛けた少年――生徒会書記"トゥーサン・ネシンバラ"
また、同人作家で中二病全開の小説をよく執筆している。
さらに彼は、宙に表示していた鳥居型の表示枠を閉じて言葉を続ける。
「もう、百六十年前からそうだもんね。その間、極東は、ミスを口実に各国から狙われるのを避けるため、ずっと頭下げっぱなしで、この武蔵は極東の中心になろうにも移動ばっかりの権力骨抜きでどうしようない。何しろ各国の学生は上限年齢が無制限なのに、極東の学生は十八歳で卒業だし。――それを超えたら政治も軍事も何も出来ないんだから」
「極東ではよく言うわよね、――学生は特権階級だ、って」
「聖連諸国の物言いだと、学生じゃない者は人にあらず、ですよね」
ネシンバラのその言葉に、丸い体格の少年――"御広敷・銀二"が、
「小生、あまりそういうこと言ってると危険ではないかと――」
「大丈夫だよ」
と、ネシンバラは言う。
「船の周囲には聖連の武神が飛行して監視中だけど、僕達の声を一々拾ってる暇はないだろうし、もうすぐに極東の支配者で武蔵の持ち主である松平・元信公の三河圏内だからね。三河は聖連の監視下にあるけど、聖連を半脱退して敵対中のP.A.Odaと同盟しているから、その付近では聖連は迂闊に動けない。――気にすることはないよ」
「へぇ、大人ぶって。でも今回、三河には監視の三征西班牙だけじゃなく、K.P.A.Italiaの教皇総長がが三河製の個人用大規模破壊武装である大罪武装の新型を無心しに来るって話よ。ほんのちょっとだけ気にしておきなさい」
「でもまぁ――」
と、オリオトライは小さく呟いてから、
「そんな感じに面倒で押さえ込まれたこの国だけど、君らこれからどうしたいかわかってる?」
その問いに、皆が無言を保つ。その沈黙の意味を、オリオトライはあえてここでは問わない。
「(でももう、皆三年生だものね)」
オリオトライはそう思った後、更に言葉を続ける。
「今、世間は忙しいわよね。予言の歴史書である聖譜が更新されなくなって、原因不明で解決不可能。そして今年1648年が記述の最後の年だから、――今年こそが、最後の記述内容である"ヴェストファーレン会議"を経て世界が終わる末世かもしれないって言われてる。確かに地脈も乱れて各所で怪異が多発してるの、皆知っているわよね。M.H.R.R.の"笛吹き男の神隠し"とか上越露西亜の"空白の大地"とか」
「もし今年で世界が終わるとしたら、進路とか、どうなるんだろう、ってね。――でも」
鞘の根本、柄との固定パーツを止めなおしながら、言葉を続ける。
「ま、面倒だけど点数とっときゃいいトコ行けるかもしんない、って事実はあるのよ。世界がどうなるかはいずれわかるだろうし、それまでテキトーにやっときなさい」
「先生もそんな感じだったの?押さえ込まれて面倒だけどテキトーにやっとけ、って」
ナルゼは首を傾げながらオリオトライにそう問う。そして、
「そうねぇ、まぁ――」
ややあってから
「自分では、死ぬような思いをした、って思ってるかな。かなり前のことだけど」
「(…まぁ、いずれこの子達にも、そこら辺の苦労がいろいろと解る時が来るかな)」
そう思い頷いた後、
「さぁ――」
と言った後、オリオトライは僅かに身を低くする。
そして彼女は、今の動きに瞬間的な反応をした生徒達を見ると、
「いいねぇ、戦闘系の技能を持ってるなら、今ので"来"ないとね。だから――、ちょっと死んだ気でついてきなさい。ルールは簡単、事務所に辿り着くまでに先生に攻撃を当てることが出来たら――」
「出席点を五点プラス。意味解る?―――五回サボれるの。どう?なかなか魅力的だと思わない――奏哉?」
「ばれてましたか…。結構自信あったんだがなぁ」
皆が振り返るとそこには茶髪の長髪を背に纏め、眼鏡を掛けている少年――代理特務"藤崎・奏哉"がいつの間にかいた。
「気配の消し方はなかなかだったわよ。でも、まだまだ全然甘い」
「手厳しいな、全く。それじゃ改めて――」
「すみません、遅れました。これから授業に参加させてもらいます」
後書き
書き終えました。
どう纏めるかとか、結構悩みました。
それではまた。
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