ガリガリ君、ペコちゃんの香り!? 芳香剤で“キャラクター戦争”
nikkei TRENDYnet 2012年12月11日(火)11時3分配信
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年末の大掃除のシーズンは、消臭芳香剤がよく売れるという。さまざまな消臭芳香剤があるなか、新たな切り口でヒットしているのが、人気キャラクターとコラボした商品。その魅力と狙いは? |
年末の大掃除のシーズンは、消臭芳香剤がよく売れるという。「大掃除用品などといっしょに、まとめ買いする人が多い。12月後半と1月では売り上げに2倍くらいの差がある」(小林製薬 広報部 坂田沙織氏)、「年間の売り上げのうち12月単月で10%近くを占める」(エステー 広報部 丸野綾子氏)。
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さまざまな消臭芳香剤があるなか、新たな切り口として注目したいのが、人気キャラクターとコラボした商品だ。小林製薬はまず夏に人気のアイスキャンデー「ガリガリ君」とコラボした夏季限定発売商品を発売したところ、ワンシーズンで約30万個以上と好調な売り上げを記録。さらに冬季限定商品では「ペコちゃん」とした商品を投入し、すでに約70万個を売り上げているという。
一方、エステーは2012年のハロウィンシーズン限定品に「ミッキーとなかまたち」のデザインを採用。6アイテムを約130万個限定で発売したところ、ほぼ完売したという。
消臭芳香剤と人気キャラクターのコラボ商品が、なぜ今これほど人気を集めているのだろうか。
人気キャラクター起用でブランドが“若返り”
小林製薬では消臭芳香剤の主力ブランド「消臭元」でレギュラー商品のほかに、季節感を演出するために年4回、季節限定品を発売している。2012年の夏季限定商品の企画は、前年の2011年から開始。2011年は震災の影響で節電の必要性が高まっていたことから「涼しさを演出する香りとパッケージで、夏の節電の手伝いができないか」と考えたのが商品企画のきっかけだったという。
企画段階ではアイスミントの香りなどさまざまなアイデアが出たが、「涼しさが伝わりにくい」という意見が多かった。また消臭元は大容量・長持ちタイプの芳香消臭剤として認知度が高く、20代〜60代まで幅広い年代に購入されているものの、ここ数年はユーザーが高齢化傾向にあった。そこで若い人に手にとってもらうために「今までにない香り」を提案しなければならないと考えた。
そこで誕生したのが「お部屋の消臭元 ガリガリ君ソーダの香り」だ。ガリガリ君のアイスをイメージした明るく楽しいパッケージだけでなく、さわやかなシトラス・ソーダ風の香りでガリガリ君の香りを表現している。「ガリガリ君は購入経験のある人が多く、その独特の香りと合致するか、それが室内の香りとして好まれるか、調整に苦労した」(小林製薬 消臭元ブランドマネージャーの西川賢弥氏)という。
同商品を購入した中心層は、小学生くらいの子供を持つ30〜40代。レギュラーアイテムの購入者層と比較すると若く、「既存品ではほとんど見られない10代の購入者が10%程度いた」(小林製薬の西川氏)とのことで、購買層の若年化という狙いは成功した。
また購入者調査で使用経験を調べたところ、初めて購入した人が既存品に比べて多く、さらに「同商品を購入以前は競合品を購入していたが、購入以降は消臭元ブランドを購入している」人の割合が最多だったという。「これまで使ったことがなかった人が、香りの広がりなどを体験して消臭元に対するイメージが変化したのではないか。こういうブランドスイッチのチャンスをこれからも継続して仕掛けていきたい」(西川氏)。
「子供部屋」という新たな使用シーンも開拓
さらに、これまで部屋用芳香剤はリビング・玄関・寝室で主に使用されていたが、ガリガリ君とのコラボ商品の場合、子供部屋でも使われており、しかもほかの3カ所とほぼ均等の割合だったという。「これまで子供部屋にはあまり使われていなかったので、新たな使用シーンとして可能性が広がった」(西川氏)と喜ぶ。
なぜこれほど新規購買層にアピールできたのか。同社では「キャラクターを大きくあしらったパッケージがアイキャッチとなって芳香剤売り場でひと際目立つ存在となり、限定の香りということも相まって“即決購入”した人が多かったのでは」と見ている。
ペコちゃんとコラボした冬季限定商品の「お部屋の消臭元 エンジェルストロベリーの香り」「トイレの消臭元 エンジェルストロベリーの香り」はさらなるヒットとなったが、ターゲットは夏季バージョンと大筋で変わらない。ただ「『ガリガリ君』バージョンでは小学生の子供が母親にねだって買ってもらうケースが多かったようだが、『ペコちゃん』の場合は母親も喜んで買っているようだ」(西川氏)。
冬季商品はクリスマスシーズンでほぼ売り切れ、年明けには桜の花の香りの消臭芳香剤が各社いっせいに売り出される。同社では12月20日に「消臭元」「サワデー」の2ブランドから「ハローキティ」とコラボした春季限定商品「Hello Kitty さくらの香り」を発売。デザインだけでなくスティックタイプなどラインアップも拡大し、さらなるヒットを狙う。
「ディズニー」で幅広い年齢層にアピール
「日本人は季節の移り変わりや季節ごとのイベントをとても大事にして楽しむ。季節限定品は問題解決のための機能だけでなく、その季節ならではの特別感やワクワク感、商品としての鮮度も付加したいと考えて企画している」(エステー マーケティンググループ 山岸千恵氏)。
消臭芳香剤の季節限定商品は、エステーが2002年に夏季限定商品「ひまわり」を発売したのが最初だという。2006年にはハロウィン季節限定品として3アイテムを発売。好評だったため、2007年には4アイテム、2008年には5アイテムとラインアップを拡大している。
そして2012年にハロウィン季節限定品として、パッケージにディズニーキャラクターを採用した「ミッキーとなかまたち」限定デザインを発売。ハロウィンでディズニーを採用したのは、近年ハロウィンとの親和性の高いディズニーとのコラボが有効だと考えたためだという。「東京ディズニーランドがオープンしたのが1983年で、現在の40〜50代にもファンは多い。若い年齢層だけでなく、幅広い年齢層がターゲットに見込めるキャラクター」(エステーの山岸氏)。
続く冬季限定商品として、ディズニーキャラクターデザイン第2弾「ウィンターセレブレーション」3アイテムを11月1日から発売。“ウィンターシーズンを楽しむミッキーとなかまたち”が描かれたパッケージで、冬のパーティドリンクをイメージした弾けるフルーツの香りが特徴。シリーズ合計で約60万個の売り上げを目指している。
「季節限定品はバッケージ購入の新規顧客が既存品より多い。使ったことがない人に手にとってもらい、使ってもらうには一番の戦略」(山岸氏)。
そこで同社では陳列にも工夫。棚の上から下まで同シリーズで並べて、一体感のある「面」で見せるようにしている。一方で近くに寄って見たときに楽しめるように、細部のデザインを変えている。「そりに乗ってウィンターシーズンを楽しむミッキーマウスとミニーマウスの後ろからプルートが追いかけたり、ドナルドダックがスキーをしていたり、などいろいろな仕掛けを考えている。売り場でお子さんとお母さんに、楽しみながら選んでほしい」(山岸氏)。
ネットなどでは、ミッキー以外の一見目立たないキャラクターに注目して盛り上がっているコメントを見かけるという。ユニークで楽しげなパッケージデザインは店頭でワクワク感を演出するツールとしても機能しているようだ。
(文/桑原恵美子)
最終更新:2012年12月11日(火)11時3分