中国:週刊紙記者がスト 共産党幹部の改ざん指示に「徹底抗戦」 市民、ネットで支持拡大
毎日新聞 2013年01月07日 東京夕刊
【上海・隅俊之】腐敗の追及など改革的な報道路線で知られる中国広東省の週刊紙、南方週末の新年号記事が、メディアを管轄する同省共産党委員会宣伝部の〓震(たくしん)部長の指示で改ざんされた問題で、同紙の記者らによる抗議と、封じ込めを図る当局の攻防が激化している。記者たちは7日、〓部長の引責辞任や謝罪を求めてストライキを実施。当局側は中国版ツイッター「微博」で記者たちの書き込みを次々と削除するなど、締め付けを強化した。しかし記者らへの支持はネット上で爆発的に拡大しており、当局側はさらなる対応を迫られそうだ。
南方週末の本社前には7日午前、ネット上のデモの呼び掛けに応じた市民らおよそ20人が集結した。周辺には多数の私服警察官が配置され、緊張が高まっている。
この問題で、同紙の微博公式アカウントには「(記事が改ざんされたという)ネット上のうわさは事実ではない」との説明が6日夜、突然掲載された。これに対し同紙記者らは「(当局側に微博の)パスワードを出すよう要求された」と主張、当局の圧力で編集幹部が勝手に書き込んだと暴露した。その後、同紙の編集委員ら約90人が連名で「公式アカウントの書き込みはウソだ」との共同声明を発表。声明は数万回転送されるなど反響が広がっている。
南方週末の関係者は毎日新聞に対し「特に前線の記者には、報道介入に対する怒りが強い。徹底的に闘う」と語った。
当局側は、南方週末の記者たちの微博上の訴えや告発を次々と削除。微博では、「南」「方」「週」「末」のいずれの漢字で検索しても「関連法規により結果は表示できない」と表示され、問題についてまったく検索できなくなっている。ただ、微博では「一緒にデモをしよう」「宣伝部長は辞任せよ」など同紙を支持する市民の意見の書き込みが当局の削除を上回る規模で続いており、規制は事実上機能していない状態だ。
中国メディア関係者によると、南方週末は3日付の新年号の記事で、憲法に基づく政治の重要性を訴える記事を用意していた。しかし、〓宣伝部長からの直接の指示で、担当者が不在のうちに現状を支持する内容の記事に差し替えられ発行された。〓宣伝部長は昨年5月、国営新華社通信の副社長から転任。「改革に積極的な南方週末の編集部に何度も介入してきた」(中国紙記者)と言われ、報道に対する姿勢が特に保守的と評される。