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 セッティング  -ケーブルの接続方法-         予備知識スピーカーの位置決め
ケーブルの接続方法|部屋のチューニング振動のコントロールホームシアターの特例事項

ケーブルの接続方法
電源の極性
電源の順序
ケーブルの方向性
ケーブルにテンションをかけない
ビニタイは音を悪くする
スピーカーケーブルの端末処理
ケーブルの配線処理
 
 
ケーブルを替えれば音が変わるのは誰でも納得できると思いますが、ケーブルの接続の仕方で音が変わるなんて信じられない人は多いのではないでしょうか。ところが実は、それは本当なのです。その変わり方はスピーカーのセッティングほど大きくはありませんが、ここを押さえておかないと、音のレベルが上がったとき、それがネックとなって、あるレベル以上の音には仕上がらないのです。

ここで紹介するケーブルの接続の方法は、「これがいい、いや、あちらの方がいい」と、音を聴き比べながら決めるものがを少ないので、スピーカーの位置決めをする前、つまり、最初に結線をするときに実行できるものは実行してください。
 
■電源の極性
壁コンセントには左右一対の差し込み孔がありますが、実は100Vの電気が流れているのは片方だけで、もう一方には電気は流れていません。この電気の流れている側をホットと呼び、電気の流れていない方がグランド(アース=接地)です。このホットとグランドを極性といいます。
この壁コンセントに機器の電源ケーブルのプラグを差し込むとき、差し込む向きで音が違ってきます。その理由は、壁コンセントのグランドが機器の電源トラスの巻き始めに接続されるか、巻き終りに接続されるかでシャーシー電位(電圧)の変動の大きさに違いが生じるからです。

シャーシー電位は音声信号の基準となるもので、音声信号の大きさは、グランドの電位に対してどれだけ大きいか、あるいは、小さいかで決まります。そのため、グランドの電位が変動すると、音声信号にグランドの電位の変動が乗っかって、本来の音声信号の波形とは異なったものとなり、とりわけ大事な倍音成分が聴き取れなくなって、音質が落ちてしまいます。

そこで、電源の極性が管理されている機器は、どちら側を壁コンセントのグランドに差し込めばいいかの目印が、プラグもしくはケーブルに付けられていています。その代表的なマークは下記のようなものですが、分からないときは取扱説明書を見てください。



刃に丸の刻印 プラグに△印 ケーブルの被覆に線
ところが、機器の電源の極性が分かっても、壁コンセントはどちらがグランドであるか分からなければ、どう差し込んでいいか分かりません。
通常、壁コンセントは写真のように、隙間の長い方が向かって左側、かつ、そちらをグランドにすると決められています。ところが、実際は電気工事の際にそれが守られていないケースもありますので、プラグを差し込む前に、念のために壁コンセントの極性のチェックしてから、正しい向きにプラグを差し込むようにしてください。

チェックには検電ドライバーを使うのが簡便です。ドライバーの柄の端の金属部分(写真では右端の部分)を指で押さえてコンセントに差し込んでください。
ランプが点灯する方がホットで、しない方がグランドです。なお、検電ドライバーの使い方は機種によって異なるものもあるので、添付されている説明書に従ってください。
また、(アナログ)テスターをお持ちの方はテスターのモードを交流にし、片方をコンセントに差し込み、もう一方を指先で挟んで、コンセントとボディとの間の電圧を測ってください。電圧の低い方がグランドです。

デジタルテスターを使用すれば、壁コンセントの極性だけでなく、機器の電源ケーブルにグランドの表示がない場合に、どの向きに差し込めばいいかが判定できます。

壁コンセントの極性については、アナログテスターと同様に、コンセントとボディ間の電圧を測定します。電圧の低い方がグランドです。
一方、機器の極性が不明なときは、電源オン時の機器のグランドの電位(電圧)を測定します。テスターは交流に設定し、片方を機器のグランド(PHONOのアース端子、PINジャックの外側のアース、スピーカー端子のマイナスなど)に当て、もう一方を指先でつかみます。
こうして機器の電源をオンにして、グランドとボディ間の電圧を、差し込む2つの方向を測定してください。電圧の低い方が正しい向きです。
なお、この電圧を測定する際、ラインケーブルやスピーカーケーブルを接続したまま測定すると誤った結果が出ることがあるので、電源ケーブル以外はすべて外した状態で測定してください。

壁コンセントの極性

検電ドライバー

デジタルテスター
 
■電源の順序
電源プラグは、極性さえ合わせば、あとは適当に差し込めばいいというものではありません。実はCDプレーヤーやアンプのプラグを差し込む位置関係でも音は違ってきます。
機器の電源の取り方には、2つの相反する主張があります。
・ひとつは「CDプレーヤーなどのデジタル機器とアンプは別々のコンセントから取る」方法です。
これはデジタルノイズがグランドを介して、なるべくアンプに入り込まないようにしようという考え方に立ったものです。

・もう一方は「CDプレーヤーもアンプも同じコンセントから取る」方法です。
こちらはグランドのループをなるべく小さくして、外来ノイズのグランドへの混入を防止し、グランドの電位の変動を抑制することを主眼にしたものです。

どちらの言い分も正しいのですが、おそらく、個々の機器のグランドの電位が動かないようにしっかり管理されているか、いないかで答えが違ってくると考えられ、使用している機器のグランドの管理が十分になされている場合、後者の同じコンセントから電源を取るのがどうも正解のようです。


電源を取る順序
ところで、同じコンセントから各機器の電源を取る場合は、信号の流れに従って、配電盤に近い上手(かみて)のタップからCDプレーヤー、アンプの順にプラグを差し込むと、音場空間や音像の立ち方がスムースになります。
(ただし、逆の順番で音質チューニングをされた機器の場合はこの限りではありません)

この接続順序から見ると、CDプレーヤーの電源をアンプのリアパネルのコンセントから取るのは、アンプよりも遅れてCDプレーヤーに電気が供給されることとなるので、一番音を悪くする接続方法ということになります。

なお、コンセントを別々にするか、1つにするか、判断できないときは実際に試聴で決めるしかありません。
 
■ケーブルの方向性
スピーカーケーブルやラインケーブルなどは、接続する向きで音が違います。その差はそれほど大きくはありませんが、接続する向きが間違っていると、システムのレベルが上がってきたとき、それがネックとなって、あるレベルで頭打ちになるので、十分注意して接続してください。
ケーブルの中には右の図のような三角や矢印などで信号を流がす向きを表示しているものがあります。このようなケーブルを使用するときは、表示に従って接続してください。
ラインケーブルはこういった表示のある製品は結構多いですが、スピーカーケーブルはあまり多くありません。しかし、このような表示がなくても、接続する向きによって音は違います。

ケーブルの方向性を示すマーク
信号の流れを示す表示がないケーブルを使用するときは、試聴により決めざるを得ません。
ケーブルには社名や型番が印字されているので、左右のケーブルの印字が同じ向きになるように合わせ、両方向を試聴してください。
ただ、音の仕上がりが不十分な段階では、印字の向きを揃えるだけにして、ある程度、音が煮詰まった段階で、2方向の音質チェックをする方が誤った判断をしなくて済みます。
 
■ケーブルにテンションをかけない
ケーブルには余分なテンション(ストレス)をかけないようにしましょう。ケーブルに強いテンションがかかると、音に伸びやかさがなくなり、バランスが高域に片寄った腰高の音になってしまいます。

強いテンションがかかる事例として、短めのケーブルを使用したときがあります。ケーブルがピーンと張っていると、ケーブルに張力がかかるだけでなく、両端が折れ曲がって、そこに強い曲げの力が加わります。その結果、ケーブルは速い周期で振動しやすくなって音質を劣化させます。
ケーブルは短い方が音に有利だと思って、ぎりぎりの長さのケーブルを使用する人もいますが、ケーブルはだらりと垂れ下がるくらい、長さに余裕をもたせることが、音の出方をスムースにする上で重要です。
ところで、スピーカーケーブルは長さに余裕をもたせても、接続の仕方でテンションのかかり方が変わることがあります。
それはスピーカーターミナルがケーブルを上からでも、下からでも差し込めるタイプの場合です。
このようなターミナルを使用しているアンプやスピーカーでは、上から差し込むと、ケーブルの重みでケーブルに曲げの力がかかって、音のスムースな出方を阻害し、音が萎縮してしまいますから、多少作業はやりづらいですが、下からの差し込むことをお勧めします。

テンションのかかる接続

テンションのかからない接続
なお、ケーブルは抜け落ちないようにネジをしっかり締め付けてください。特に、スピーカー側が抜け落ちて、プラスとマイナスの導線がショートすると、アンプの破損にもつながるので注意してください。
 
■ビニタイは音を悪くする
工場で製品を梱包する際、ケーブルを縛るのに使用されるビニタイの芯には鉄が使われています。この鉄は磁性体で、磁界の中に置くと磁気を帯びます。
このビニタイをケーブルに巻きつけたままで演奏している人を見かけますが、出ている音は、ヌケの悪い、情報量の少ない音です。
そのような音になる理由は以下の通りです。
電流がケーブル内を流れると、ケーブルの周囲に磁界ができます。この磁界は右ネジの法則に従って音声信号に応じた変化をします。一方、ケーブルを磁界の中に置き、磁界を変化させると、電磁誘導によって、その変化に応じた起電力がケーブル内に生じます。

つまり、ケーブルにビニタイを巻きつけると、そのビニタイの鉄は音声信号によって磁化され、その磁力が電磁誘導によってケーブル内に新たな電流を発生させるのです。
このとき発生する電流は、音声信号にとってノイズです。ラインケーブルやスピーカーケーブルで発生するノイズはレベルは低いですが、音声信号に似通っているため、容易に楽器の小さなレベルの倍音を聴こえなくしてしまいます。

また、電源ケーブルには大きな電流が流れるので、発生するノイズのレベルは、ラインケーブルのそれと比較してかなり大きいので、このノイズの発生も見逃すことはできません。

こういった理由でビニタイは音を悪くするので、結線をする際、ケーブルに巻き付けないようにはしてください。
 
■スピーカーケーブルの端末処理
スピーカーケーブルで音に違いがあるのはよく知られていますが、端末の処理の方法で音が変わるのを知っている人はごく少数派です。そこで、この項ではケーブルの着脱に便利なアクセサリーや音質を改善する端末処理の方法をご紹介することにします。

まず、頻繁にスピーカーケーブルを抜き差しするのに便利なアイテムにバナナプラグとYラグがあります。
バナナプラグはバナナプラグ対応のスピーカーターミナル(中央部に穴が開いているターミナル)の穴に差し込んで使用するものです。
ターミナルの穴の壁面とを密着させる方法に、ネジを回して、バナナの部分(ターミナルの穴に入る部分)を外に押し拡げるタイプと、バナナの部分を少し太目にして、バネの力を利用するタイプがあります。

バナナプラグ

Yラグ
一方、Yラグはスピーカーターミナルのシャフト部分に差し込み、ターミナルのネジを締め込んで使用しますが、ターミナルの構造やYラグのサイズにより適・不適があるので、よく調べて選んでください。
なお、スピーカーケーブルとの接合はバナナプラグ、Yラグどちらもネジ止めや半田付けなどがあります。半田付けの苦手な方は注意をしてください。

ところで、バナナプラグもYラグも、どちらも製品によって音質に大きな違いがあります。抜き差しの簡便さのみを目的にされるのならいざ知らず、音質にこだわるなら、オーディオ誌の評価や店員のアドバイスに耳を傾けることをお勧めします。

それではここで、小林流「音の良い端末処理の方法」に話を変えましょう。
用意するのは、
・P型圧着スリーブ
 P型スリーブには穴の太さによって、P-1.25、Pー2、P-5.5などの種類があります。一般的な太さのスピーカーケーブルならP-2もしくはP-5.5が合います。スピーカーケーブルの導線の太さに合ったサイズの圧着スリーブをご用意ください。
・絶縁キャップ
 圧着スリーブ同士がショートしないように絶縁するもので、熱収縮チューブやビニールテープでも代用できます。
・圧着ペンチ
 スピーカーケーブルの撚り線を潰して、数多くある導線を一体化します。普通のペンチではどんなに腕力の強い人でも潰れないので、必ず圧着ペンチを使ってください。

圧着ペンチ

P型圧着スリーブ

絶縁キャップ
端末処理の手順は次の通りです。
@スピーカーケーブルの被覆を圧着スリーブの長さ分だけ長めに切り取ります。
導線が1本でも切れると音が劣化します。そこで、被覆を剥ぐときは、導線を切断しないようにするのはもちろんですが、導線を傷付けると、傷付いた部分が使用している間に切れてしまうことがあるので、細心の注意を払ってください。
被覆をカットするときは、右下の写真のようにケーブルを折り曲げ、テンションをかけて、よく切れるカッターナイフを軽く被覆に押し付ければ、導線を傷つけることなく容易に被覆を切り取ることができます。

端末処理の手順
A導線がスムーズにスリーブの穴に入るようにしっかり撚り合せてから、圧着スリーブを被覆のところまで差し込み、圧着ペンチでかしめます。

B圧着スリーブ同士がショートしないように絶縁キャップをかぶせれば出来上がりです。機器のターミナルとの接続は先端の導線部分で行ないます。

なお、この処理を行なえば、被覆と圧着スリーブの間で導線が切れない限り、圧着スリーブよりも先端で導線が多少切れても音質の劣化はほとんどありません。また、バナナプラグやYラグを使用するときも、この処理をすれば、着脱が容易で、音の良いケーブルが出来上がります。

 
■ケーブルの配線処理
オーディオ装置には、ラインケーブルやスピーカーケーブル、電源ケーブルなどさまざまなケーブルが使用されます。これらのケーブルを束ねたり、絡み合わせたりすると、「ビニタイ」の項で説明したように、ケーブル内を流れる音声信号によってその周囲に磁界でき、それが電磁誘導によって隣接する別のケーブル内に新たな電気=ノイズを発生させます。その結果、この電気(ノイズ)が微小な音声情報を聴こえなくし、音質の劣化をもたらします。

そのため、ラインケーブルやスピーカーケーブル、電源ケーブルは、束ねたり、絡み合わさないように、なるべくそれぞれを離すように配線しましょう。

また、CDプレーヤーとアンプ間、MDデッキとアンプ間といった異なる信号が通るラインケーブルも互いの干渉を避けるため、なるべく離すようにしてください。
ただし、左右ペアのラインケーブルは左右が一体化されたものもありますが、一本一本がバラバラのタイプを使用するとき、左右のケーブルが離れないように沿わせて配線してください。これはグランドのループを小さくして、グランドの電位がノイズの影響によって変動するのを避けるためです。

さらに、アンプの後ろはさまざまなケーブルが交錯しますが、大きな電流が流れるケーブルほど下にくるよう、つまり、電源ケーブルが一番下で、その上がスピーカーケーブル、一番上がラインケーブルになるように配線すれば音の出方がスムースになり、音場空間の拡がりも良くなります。
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