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警告   この作品は<R-18>です。 18歳未満の方は移動してください。
 きりの体も徐々に昂ぶり始め、それを受けて彼女の腰の動きはより激しくなる。
背中から畳の上へと流れる黒髪は、きりの動きに合わせて波打ち、蕾を硬く尖らせた白乳は少々重たげに震える。
弟の上できりが上下動を繰り返すと、軽く打ち合う二人の体がべちりと音を立て、一物が奥へと埋め込まれることで押し出された愛液は小さく飛沫を飛ばして姉弟の茂みを濡らした。
「あっ、あんっ……んっ、りょう……」
 上下に揺れながらきりは弟を呼んだ。
それまで姉の蜜壷に陶然と酔っていたりょうは、それに気づいて瞼を開ける。
自分を見つめる姉が何かを訴えているのが分かり、無言のまま頷くときりは上体を倒して弟の体に覆い被さった。
りょうの胸で自身の膨らみを潰しながら、きりは再びりょうの首筋に唇を寄せる。
舌を伸ばして喉元を舐め上げると、りょうは腕を姉の背に回した。
行為により多少汗ばんだ掌で、きりのさらさらと乾いた滑らかな背を広範囲に渡って撫で擦る。
「……いいよ、姉さん……」
 その後でりょうが姉の耳に低く呟くと、きりはゆっくりと口を開いた。
唇の間から垣間見える彼女の犬歯はいつの間にか異様に長く伸び、その先は鋭く尖っている。
 きりは一度その鋭い歯の先をりょうの喉元に当て、軽く甘噛みをした。
それから、上下の顎に力を込め、弟の肌にずぶりと突きたてる。
「……っ!」
 びくりと四肢を震わせたりょうの腕にも力が入り、彼は何かを堪えるように姉の体をきつく抱きしめた。
 犬歯がずぶずぶと肉に抉り込まれるにつれ、きりの両目は爛々と輝き、その赤い色合いは燃え盛る炎にも劣らぬほどにいよいよ明度を高める。
 姉の犬歯によって肌を貫かれた直後は痛みを覚えていたりょうだったが、その真っ白な牙が深く侵入するにつれ、痛みは恍惚へと変化していった。
まるできりの歯から快楽を担う物質が分泌されているように、体中が痺れ出し血液が沸騰しそうなほどの熱を帯び、急速に快感が高まってくる。
 そして、その快感はきりが裂かれた皮膚の下から溢れてくる血潮を啜り上げた時、最高潮に達した。
「あっ……あぁっ……姉さんっ……」
 背骨が折れそうなほどに腕に力を込め、縋るように姉を抱きしめたりょうは、苦しげにそう叫ぶや、足を突っ張り腰を浮かせる。
それに伴い、より深く姉の中へと差し込まれた一物は、狭い膣道の中でぶるっと痙攣したかと思うと、瞬く間に熱い滾りをほとばしらせた。
体内を這いずり回っていた疼きに導かれるがまま、白濁した濃厚な体液をきりの最奥へと解き放ったりょうは、すぐには脈動が収まらずびくびくと体を震わせた。
 そんな弟にはお構いなく、きりは旨そうに弟の赤い血液を啜るとごくりと喉を鳴らした。
それと同時に、彼女の蜜壷もまるで弟の体液を飲み下すかのように収縮と弛緩を繰り返し、彼の精を搾り出そうとする。
 二度目ではあったが、長い射精を終えたあとにはりょうは額にじわりと汗をかき、忙しなく呼吸をして懸命に空気を取り込んだ。
 一方きりはというと、満足するまで弟の血潮を吸い取ってしまうと、静かに牙を抜いた。
りょうの喉元には小さな丸い穴がぽかりと口を開けていたが、不思議なことにきりが舌の腹で一舐めすると、その傷は瞬時に消え失せて皮膚は元通りに穴を塞いでしまった。
 いまだ姉を抱きしめたまま、いくらかぼんやりとして天井を眺めつつりょうが呼吸を鎮めていると、西の空に傾いていた日は急速に地平線に引かれ、藁屋を取り巻く森の木々の梢の向こうへとその姿を隠していく。
 りょうの息遣いだけが響く中、腹を満たしたきりは弟の首筋に顔をうずめ、子守唄のような彼の胸の鼓動を聞いていた。
「……ねぇ、りょう」
 大分たってからきりがそんな言葉を発した時、辺りには宵闇が迫り、屋内には囲炉裏の熾き火が燃えるぼんやりとした明かりだけがもたらされていた。
「何?」
 深く息をついたりょうは穏やかな声で姉に答える。
「……わたしは、やはり鬼なのだろうか」
 独白のような、断言のような、曖昧な響きを持つその姉の問いかけに、りょうはしばし答える言葉を失った。
「少なくとも人ではないわ。食物を口にせず、お前の体液だけを糧として生き続けるなんて……」
 弟からのいらえがないことが分かると、きりは続けてそんな自嘲気味の言葉を口にした。
 いつからかは定かでない。
だが少なくとも、この藁屋へやってきてからきりは常人の食物を一切受け付けなくなってしまった。
その代わりに口にするのがりょうの体液だ。
毎日少なくとも一度、りょうの精と血液を取り込めばそれだけできりの空腹は満たされるらしい。
 しかし、奇怪なことにりょうは只人のままだった。
食物を口にしなければ腹が減るし、飢えを覚える。
以前に一度きりが己の血液を飲ませてみたことがあったが、嚥下した直後に吐き出してしまった。
 りょうの只人ならぬところと言えば、一日に何度でも、姉の欲するままに濃厚な精を大量に放出できるところだろうか。
まるで彼にはそうして彼女の飢えを満たす役目が課せられているかのようだ。
「りょう」
 しばらくの沈黙が周囲に漂った後、きりは再度弟を呼んだ。
すぐ目の前で訝しげに自分を見返す弟をまっすぐに見つめ、きりはもう一度問いかける。
「お前、お父さんとお母さんのこと覚えてる?」
 それを耳にし微かに眉を上げたりょうだったが、すぐに小さくかぶりを振った。
得心の表情を浮かべたきりも、同意するように何度か頷く。
 彼らは、自分たちがいつここへ来たのか、何故ここに住んでいるのか、全く記憶がない。
そもそも彼らの脳裏には、自分たちがどこで生まれ誰に育てられ、どんな暮らしを営んできたのか、はっきりとした思い出のようなものは何一つ浮かんでこないのだ。
 己の名以外、断片的にぼんやりと思い出せるのは、どこかの村に住んでいたこと、両親がいたこと。
だから自分たちが姉弟だという認識はある。
もっとも、そんな認識などなくとも、水面みなもに映った二人の顔を見れば、その血の繋がりは疑いようもなかった。
彼らの面容は双子のように、まるでどちらかがどちらかの分身のように、瓜二つだったからだ。
 さらに、人や鬼といった概念、糠床ぬかどこや味噌の作り方、畑作や料理の仕方、数々の物の名前。
そういった生活の知識や知恵は身についているのだから、己の存在そのものを疑問視したことはない。
 疑問なのは彼らがいるその空間だ。
二人が住む茅葺きの農家は、囲炉裏の間の他に一間と風呂場と厠があるだけで小ぢんまりとはしているが、鍋やかまどや鍬や笊や食器や家具や布団や着物や井戸、といった生活必需品は全てそろっている。
 家の前には畑、裏にはさして広くない田圃たんぼがあるが、畑では常に多種多様の野菜が実り、田圃では常に金色の稲穂がこうべを垂れている。
それらの手入れをせずとも枯れたり腐ったり雑草が生えることはないが、水をやらないと育たないらしい。
 四方には森が広がっているが獣の気配はなく、そのためりょうはここへ来てから肉や魚を一切口にしていない。
 また、彼らのいる場所には四季もなかった。
日が昇れば朝が来るし、落ちれば夜になるため一日が巡ることは分かるが、森の木々は常時青々と生い茂り、熱くも寒くもない気温。
そのためか、畑の作物は季節を問わずにいつでも様々な種類が収穫できる。
家や調度の類が腐食することもない。
彼らの周囲に流れるのは、明らかに尋常ではない時。
 そこは閉ざされた空間だった。
或いは、二人を愛でるために作られた、神の箱庭のような。
「もしかしたら、これは夢ではないのだろうか……」
 ひどく心細い口調で、きりはぽつりと呟いた。
「――誰の?」
「わたしの」
「或いは、僕の……?」
 呟き返すと、りょうは間近で姉と互いを見交わしあう。
しかし、すぐにゆったりとした笑みを浮かべると、きりの頬に己の掌を当てた。
仄かな熱を放つ滑らかなきりの頬と、りょうの熱い手の平。
その肌の感触も温度も、決して夢ではない。
「そんなはずないよ。ほら、こうすれば姉さんに触れてるって分かる。僕も姉さんも、幻じゃない」
 弟の上で、きりは頬に当てられた彼の手に自身のそれをそっと重ねた。
りょうの存在を確かめ、彼に縋るように。
それが分かり、りょうの微笑は一層濃厚なものへと変化する。
もっとも、何がうつつで何が幻かと問われれば、きりには答えるべくもない。
 遥か以前には二人で森を抜けて別の場所へ行こうと試みたこともあったが、いくら歩いても森は途切れず景色は変わらず、やはり元いたあの場所へ帰ろうと思うと、随分歩いたはずなのに不意に木立の向こうに藁屋が現れたりする。
食うに困ることはないが、その空間から出ることはできず、別の人間が入ってくることもない。
一日が千年、千年が一日の寸毫変わらぬ時が漫然と流れていく。
それにも関わらず、二人が老いることはない。
 一体自分たちは誰で、どうしてここにいるのか、いろいろと推測を巡らせたことも過去にはあったような気がする。
しかし、今の二人にとってもはやそれらはどうでもいいことだった。
 ふわりと微笑んだりょうは、たおやかな姉の体を抱き寄せ、その背を覆う黒髪を掻き分けると滑らかな肌に優しく己の掌を滑らせた。
「……どうでもいいよ、そんなこと」
 そして、半ば夢見心地といった声音で囁く。
「僕は、姉さんがいれば、それでいい」
 それから、一言一言を区切るように、姉に話して聞かせる。
 弟の胸の内を耳にしたきりは、彼に同意するように相好を崩した。
 きりの名は実は「魌俚」と書く。そして、りょうの名は「魎」と。
 “鬼”とは元来すだまを表す言葉だ。
心ある親ならば、我が子の名にそんな不吉な字を当てるだろうか。
まさに、本当の意味での忌み名、禍名まがな
まるで、最初から神への贄となることが定められていたかのような。
 そこで会話を打ち切ったりょうが姉の頭を引き寄せると、きりは素直に顔を下ろし、二人の唇は申し合わせたようにぴたりと重なった。
きりが顔を引けないよう、りょうは彼女の頭を押さえつけて唇を貪る。
きりは互いの唇が潰れるほどに深く口付け、懸命に弟に応えるが、時折苦しげにもがいた。
その彼女の舌伝いに流れ落ちてくる唾液を、りょうは嬉しげに飲み下す。
 そうして口付けを続けながら、りょうの手が伸びたかと思うと、きりの帯に触れ、それを解き始めた。
きりの帯はいわゆる水木結びというもので、蝶の形に結ばれた羽の一部がだらりと長く伸びている。
 多少苦労して帯を解いてしまうと、襦袢の腰紐も解き、りょうは着物を全て姉の体から取り去った。
現れたきりの裸身はほっそりとしていて、その白い肌と共にいくらか儚げな印象を受けた。
彼女のほぼ全身を覆い隠す黒々とした髪の毛がやけに重たげに見える。
 りょうは産まれたままの姿になった姉の脇に両手を添えると、体を横に倒しながら自身の上から彼女を畳へと下ろした。
それを察したきりは自ら移動し仰向けに寝転がる。


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