畜産も農業(羊・山羊・牛編)
畜産も農業、長くなってしまったので半分に分けました。今回は主に羊・山羊・牛についてです。
それでまずは羊なんだけど中世ヨーロッパでは豚の次によく食べられていたらしい。よく食べられていたといっても羊の肉は結構なご馳走だったらしいけど。あと羊っていったら羊毛が取れるし、羊からミルクも絞れる。ただ、羊は牛ほど乳が出ないらしく牛の飼育が盛んな地域では羊の乳の利用が盛んじゃないらしい。他にも皮は羊皮紙にできるし、羊は中世あたりだとかなり重要な家畜だよね。なんでも羊は山羊と違って草とか木の葉しか食べないんだそうだ。群れたがる性質があり、また先導者に従う性質があるとかでその性質を利用して羊飼いによる放牧が行われていたみたい。
羊を食べるにしても日本だと羊って行ったらイメージ的にはジンギスカンだよね。ヨーロッパだとローストしたりシチューにしたりシェパーズパイとかにするのかな。でもよく考えたらリアルの中世ヨーロッパだとジャガイモがまだ無いからシェパーズパイは存在しないのか……。ジャガイモないとシェパーズパイは作れないよね。そうなると中世ヨーロッパが舞台の歴史物で出す場合は普通にパイ生地を使って作ったミートパイになるんだね。ファンタジー世界だと実際の歴史通りにする必要がないので大丈夫だけどさ。
それから山羊ね。調べてみると山羊は羊より乾燥に強くて草しか食べない羊と違って木の皮とか木の芽も食べるから乾燥地帯に住む人たちにとって重要な家畜なんだね。人類が始めて乳搾りしたのも山羊だとかいわれてるし、チーズやバターも山羊乳から作られたのが最初だとか。山羊は肉も毛も皮も使えるので昔の人にとっては確かに大切な生き物だよね。毛はカシミヤなんかが山羊の毛だし。皮は羊皮紙にできたし、子山羊の皮なんかはキッドっていって手袋などを作るのに使われていて白いキッドの手袋はヨーロッパの貴婦人達がパーティーとかで身に着けたんだよね。キッドの手袋っていわゆるアレですよ、あのシンデレラの身に着けていた白くて長い手袋をイメージして下さい。ああいうのを作るのに子山羊の皮が使われたらしいんだ。子山羊の皮ってことは成長する前に殺しちゃうってことだしかなりな高級手袋になるね。でもまだ小さいうちに殺されちゃうのはかなりかわいそうかも。
ところで日本だと沖縄の人は山羊をよく食べるそうですね。牧畜を行う地域だと山羊肉も羊肉もたいして区別されずに食べられてるみたいですが味とかどうなんだろう? あんまり変わらないって事なのかな? 自分は羊の方しか食べたこと無いから分からないけど。
あと山羊っていうと「ア×プ×の少女ハ×ジ」に出てくるかわいい山羊のイメージがあるかなぁ。でも山羊って羊とかと違って木の皮とか木の芽とかまで食べちゃうから餌がなくなるとそれらを食べちゃって環境破壊が起きるんだよね。自然の再生力を阻害しちゃうわけだ。アルプスとかに禿山が多いのは何でも食べちゃう山羊のせいみたいな話もみかけたしね。現代だと逆手にとって草ぼうぼうのところに山羊を放して勝手に動く草刈機みたいに考えて飼う場合があるみたいだね。それから中世だと草地だけじゃなくて森で放牧する場合もあったらしいんだけど環境破壊を起こす可能性があるから山羊や羊を林間放牧するのって結構嫌がられたみたい。つまりは山羊だの羊だのはやたらと植物を食べちゃって根絶やしにしちゃうのを昔の人もちゃんと分かってたってことだね。なんでも山羊や羊は森で放牧してはいけないという法律があった地域もあったらしい。ただしあまり守られてなかったみたいだけどね。農民も生活がかかってるからねぇ……。
最後に牛なんだけど中世ヨーロッパだと牛は基本的に農耕用の使役に使うものなんだよね。プラウ(日本でいう犂)をひかせるのに使ったんだ。プラウは基本的に2頭とか4頭とか偶数の牛につけてそれぞれプラウを抑えて土を耕す人間と牛を耕していく方向に引っ張る人間がいて作業するものなんだ。前回鼻輪の話を少ししたけど、要するに牛に鼻輪をしてロープとかつけて引っ張ると牛は痛いからいうことをきくんだよね。放牧するにしたって鼻輪にロープして杭につないでおけば牛は鼻が痛いから逃げないんだってさ。なんというか、かわいそうといえばかわいそうだけど牛は体が大きいからそうでもしないと人間の手で扱えなかったってことなんだろうなぁ。
基本的に雄牛は使役用で種牛以外は去勢していて(多分去勢しないと気が荒くて使いにくいことがあったと思う)、牝牛は子牛を産ませて乳を搾っていて子牛がいないときなんかはやっぱり使役に使うって感じだったみたいだ。ところで当たり前だけど牝牛は子牛を産まないと乳がでないからね。種付けして定期的に子供を産ませる必要があるんだよ。山羊や羊も乳を搾る場合、これは一緒だと思う。それで年をとってきて農業に使えなくなったらお肉になったんだろうね。基本的に農作業で使えなくなってからお肉にしたので中世の人にとって牛肉はあまり美味しいものではなかったみたい。皮なんかも昔の人は合成素材なんか無いから靴にしたり鞄にしたり色々な物に加工して大事に使ったんだろうな。牛乳はバター(中世だと冷蔵庫が無いからかなりしょっぱい醗酵バター)やチーズ、ヨーグルトなんかに加工して食べていた。中世だと冷蔵庫が無いから牛乳をそのまま飲むのはあまりなかったと思うよ。下手するとお腹壊すしね。ただフルーメンティとかいう料理に牛乳を入れたらしいので料理に使うってのはあったみたいだ。フルーメンティというのはポリッジの別名みたいなもので濃厚なお粥みたいなもののようだ。小麦を牛乳やスープなんかで煮て作るありふれた中世料理だったみたい。
それから牛の放牧についての話になるんだけど基本的には三圃式で牧草を育てているところなどに杭を打って縄でつないで放置してたみたいなんだけど、それだけじゃ餌が足りなくて森に放牧することもあったらしい。中世の森って豊かだったんだなぁとあらためて思うよ。森無しだと中世レベルの世界じゃ絶対生きていけないね。あと考えてみると放牧に関しては牧草地を柵で囲む手もあるにはあるけど現実的に考えると牛に壊されないような柵って結構丈夫に作らなきゃいけないだろうし手間やら柵の材料やらを考えると杭につないでおくのが一番現実的といえば現実的ではあるね。中世って森の伐採について法律とかでかなり制限されてたみたいだしさ。色々調べていて、中世ヨーロッパの農民の家とか基本的に木造の藁葺きで日本の昔の家と同じでそう長持ちするものじゃなかったようだから結婚するときに新しく家を建てたりしたらしいんだけど、その際に森から切り出していい木材の量とかが法律で決められていたという話もあったんだよね。だから木製の柵なんかは割とすぐ腐ることも考えると結構もったいないかも知れない。日本で割と流行しているウッドデッキって10年くらいで結構ダメになっちゃうという話を聞いたことがあるしさ。ただし日本の場合は雨が多いからなおさらな部分があるかもしれないけどね。
あと冬場の餌の話なんだけど、鶏とか豚とかはやっぱり残飯とか麦類のふすまとかそんなものだろうね。それでもって牛だの山羊だの羊だのは干草かな。中世くらいだと動物の飼料用の作物なんて作る余裕がなかったっていう話だしね。現代だと夏場とか牧草が旺盛に生えているうちに機械で刈り取ってロールベールラップサイロとかいって丸くまとめた牧草を厳重にラップして保管して牛だの馬だのに与えたりするみたいだね。さっき書いたロールベールラップサイロにした餌や塔型などの建物のサイロで保存した餌をサイレージっていうらしいんだけど嫌気性菌の醗酵によって飼料の保存性等を高めるのを目的に作っているらしいんだよね。しかも干草より乳酸醗酵されている分、栄養価も高くて餌にはもってこいなんだとか。ただの干草よりサイレージのほうを牛は喜んで食べるみたいだね。そういえばサイレージってなんだかキャベツでつくるザワークラウトみたいだね。あれもたしか乳酸醗酵で栄養価を高めた食べ物なんだよね。なんでも聞くところによるとザワークラウトにするとビタミンCなどがアップするらしいよ。ザワークラウトは大航海時代に大切な栄養源として船に乗せられていたんだってさ。さっきから話がそれているけど中世の人たちって野菜の中でもキャベツを結構食べていたらしいよ。
話はサイロに戻るけどそもそものサイロが一般化されたのってかなり遅いらしく中世あたりのヨーロッパだとまだ使ってない地域が多かったみたいだね。でも13世紀から14世紀頃のサイロの遺跡みたいなのが残っている地域があるから使っている地域はレンガ製のサイロを使っていたようではあるけどね。でも中に何を保存していたのかがよく分からないから動物の飼料の保存だったかまでは分からないなぁ。人間の食べるものとかの保存の方が先な気がしないでもないし。だからサイロとサイレージを中世あたりの歴史物に出すのはちょっとアレかもしれないね。ファンタジー内政物だったら逆にいいかもしれないけどさ。例えば転生主人公がサイロ開発とかね。ただサイレージって嫌気醗酵で作るものだから塔型とかの建物のサイロだと内で窒息事故が起こることがあるそうなのでそこは注意が要りそうだけどね。
それでは最後にまとめとして、畜産も色々あって大変だなって感じですがうまく内政できそうな部分もあるしファンタジーで上手に生かしていきましょうね。
~~~おまけ~~~
狩猟で肉を得たイメージが強いウサギなんだけど、中世の初め頃から修道院などでウサギが食用として飼われていたという話がある。修道士や修道院に宿泊したお客さんの食料になっていたらしい。どのように飼っていたのか一応調べたけどちょっとよく分からない。例によって放し飼いだと畑を荒らされそうな気もする。
あと馬についてなんだけど馬は乗用したり荷馬車を引かせたり農耕に使われていたらしい。自分が調べた限りでは中世では農耕に使うのは牛のほうが多く馬は農耕にそれほど使われていなかったようだが気になる方はもっと調べるとよいのではないかと思う。あと中世ではロバなども荷物を持たせたりするのに使っていたと思う。餌については牛と同じように考えればよいのではないかと思う。あと中世で燕麦は主に馬の飼料用の作物だったようだ。それと日本では昔から厩肥といって馬糞を肥料にして使っていたらしい。内政物で厩肥も使えると思う。モンゴルだと馬乳をヨーグルトや馬乳酒にして消費している。馬乳酒とかをファンタジーで出すのもよいと思う。
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