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下の方に豚の去勢の話があるのでそういう話が苦手な方はご注意ください。といってもR15になるような描写はしていないつもりです。
畜産も農業(鶏・豚編)
 畜産も農業ということで中世ヨーロッパの放牧・畜産について考察してみようと思う。色々書いていたら結構長くなったので今回は鶏と豚についてね。

 最初に言っておくけど園芸には以前から興味があったから実践と知識がある程度あったんだけど放牧・畜産は門外漢なのでほとんどが又聞き情報に近いかもしれない。といっても、畜産業を実家が営んでいるとかじゃない限り日本人の大半が牛だの豚だのと縁なんかないのが普通だけどね。
 実体験としては私の祖父がチャボ(鶏の仲間。家で飼っていたのはペットとして市販されているチャボ。けっして天然記念物のチャボではない。チャボは鶏より小型で卵も鶏よりはだいぶ小さい。大体チャボの卵3個でL玉の鶏卵1個分くらいだったかな)を生前飼っていて、時々餌をやったり、卵を拾ったことがあるくらいである。ちなみにチャボを10羽くらい飼っていた。飼っていたチャボは雄が2羽で残りは全部雌だったんだけど、チャボの卵は小さいため家族に十分な量なんか取れなかったので普通にスーパーで鶏卵も買ってましたよ。あくまで祖父の趣味だったとしか言いようが無いかも。チャボについては卵を孵化させて数を増やしてたからこの羽数がいたんだ。ただ、さすがに祖父もあまりワイルドな人ではなかったのでチャボは寿命で死ぬに任せていて家でひねって食用にしたことは無いです。昔の人は卵を産まなくなった鳥を自宅でひねって食べてたらしいけどね。餌は配合飼料をあげていた。時々、ハコベ(春の七草。七草粥に入れて食べる)なんかの野草をあげたらチャボが喜んで食べてたのを覚えている。チャボの卵はこんな飼い方でも毎日3個ずつくらい取れました。これって今考えるとかなり生産性が低いね……。
 とはいえチャボじゃなくて鶏を10羽ベストの割合(他のエッセイで書いたが雄1羽、雌9羽くらいがベストらしい)で育てるとして、年取った鳥はつぶすようにして卵をよく産む鳥を新しく育てるようにしていっても、せいぜいうちのチャボ達よりも卵が1日当り2、3個増える程度だろうなぁ。現代の日本の養鶏業者だと産卵開始1年くらいすると鶏が卵を産まなくなってくるので強制換羽っていって鳥の餌を減らして羽を生え変わらせて卵をよく産むようにするんだそうだ。だけど中世ヨーロッパあたりじゃじゃそこまでやってなさそうだし一日に得られる卵がそんなに増えるとは思えないなぁ。ちなみに古代エジプトの時代に鶏ってすでに品種改良されていてほぼ毎日卵産むようになってたらしいけどね。大体中世ヨーロッパあたりじゃ日中は放し飼いなわけだし卵の生産性は絶対に低いよね。見ていないうちに他の動物に卵を食べられたりしているだろうし。正直いって鶏は放し飼いで健康だろうけど得られる餌の量とか考えるとあんまり卵産まなさそうだ。まあ、夜は鶏を小屋とかに入れるだろうけど大切な財産が野犬とか狐なんかに食われたら困るしね。
 それからサルモネラ菌とかの問題があるので現代の家庭で飼っている鶏の卵もそうだけど中世ヨーロッパとかの社会レベルだと卵は加熱調理しないとお腹を壊す可能性があるので注意が必要だ。それと卵は世界的に19世紀くらいまで結構贅沢品だったようなので卵料理とか出す場合注意が要るかも。中世ヨーロッパ的世界観のファンタジーで朝から卵とかとんでもなく贅沢なことになるので、はっきりいってそんな贅沢できたのって王族とか貴族くらいだったんじゃないかと思う。日本だと「巨人きょじん大鵬たいほう・卵焼き」という言葉が昭和30年代にあったくらいで、卵が今みたいに食べられるようになったのは現代になってからだしね。昭和30年代の子供にとって卵焼きはご馳走で、子供の好きなものとして「巨人・大鵬・卵焼き」って言われていたらしいので。(ちなみに大鵬はお相撲さんね) 今でこそ卵は物価の優等生って言われているけど昔は違ったから考慮しておいたほうがよいと思うんだ。

 そもそも基本的に農業生産力が上がって餌を用意して動物を飼える時代になるまでどこでも鶏なんかは放し飼いが基本だったと思う。中世ヨーロッパあたりだともちろん鶏も豚も放し飼いが基本である。放し飼いにしておけば鶏なんかは勝手に餌を探して食べてくれるからね。鶏ならばミミズだとか芋虫などの昆虫や、ハコベ(ヨーロッパにも生えてる。日本でよく見かけるコハコベはヨーロッパからの外来種)などの野草を食べて勝手に育ってくれる。豚ならドングリの実るミズナラやブナの森に放し飼いにしていたし、牛は三圃制で牧草を育てている土地に放し飼いにしていた。山羊とか羊とかはハイジみたいに羊飼いが放牧地に連れて行って放牧していた。乳を採る動物としては地中海寄りでは山羊や羊が多く飼われていてフランスとか北の方のヨーロッパでは牛が多かったらしい。

 ところで中世ヨーロッパで肉といえばまず一番に豚なんだけれど、豚は生まれた子豚がある程度大きくなると森へ連れて行っていわゆる林間放牧をするんだけど、豚の餌になるドングリのなるミズナラとかブナは大概法律などで勝手に伐採してはいけないことになってたらしい。大事な豚の餌がなくなっちゃうから当然といえば当然かな。そういえば中世ヨーロッパでは森の広さが豚が何頭飼えるかで表現されていたとかいう話もあった。あとドングリの森に豚を放すんだけど一年中ドングリがなるわけじゃないから豚はドングリ以外にも草や木の根っこや虫とかカタツムリとかきのこ(きのこといえばトリュフはもともと雌豚を使って探させていたんだよね)を色々食べて育つんだそうだ。ちなみに中世の豚は豚って書いているがかなり猪に近かったようだ。他にも森で養蜂を行ったり、野生のリンゴとか梨や栗とか木苺、きのこなんかを採集していたとか。農民はリンゴとか梨とかの栽培もしていたけど領主様に収めなきゃいけなかったので自分たちで作っているものはあまり食べられなかったみたいだ。もちろん森で薪も集めていて中世の人間は森無しじゃ暮らせなかった。森は王様や貴族の領地だったり村などの共同体のものだったりしたらしい。近くに貴族所有の森しかない場合などは使用料を払って利用させてもらったらしい。
 話は戻って豚の話をするけど中世ヨーロッパでは森だけじゃなくて都市でも豚は飼われていた。しかも例によって放し飼いで……。どう考えても危ないよね。豚って成長するとかなり大きくなるんだけど街で放し飼いにするってなに考えてたんだろうね? 大人の豚って体重2、300キログラムとかになるのにね。実際事故が結構起きていてフランスがカペー朝の時の王子様が豚に殺されたりしているし。しかも中世ヨーロッパとかの昔って人間様の病気とかでもたいした治療が行われていたわけじゃないので動物の病気とかに対して対策とかとってないんだよね。狂犬病に罹った豚で狂騒状態になって攻撃性が高まったのがいたらしいんだ。危ないねー。そういうのが暴れていたらしい。いやはや恐ろしや……。何でも豚は人糞を餌にするからそれを綺麗にする為に中世ヨーロッパでは街でも豚を飼っていたらしいんだけど、人糞は処理しても豚自身も糞をするからやっぱり街は汚かったらしい。正直いって意味が無いとしかいいようがないよね。あともちろん食料として街でも必要があって飼っていたってことだろうけど。王子様が死んじゃってからフランスでは法律で街中での豚の放し飼いを禁止する法律ができたらしいんだけど守られていなかったそうだ。中世のフランスでは街での放し飼いがあんまり酷かったので終には豚の屠殺役とかいう役人まで登場したらしい。街で豚を見かけたらさっさと逮捕して殺して食卓にのぼらせるお役目だったそうだ。現代人からするとどんなお役目だよって感じですね。
 ところで現代でも放牧して育てられる豚で有名なものにイベリコ豚がいるんだけど参考になるかなと思ってちょっと調べたんだけどあの豚ってすごく綺麗な森で飼われているんだね。森の樫の木は結構まばらでかなり明るく日の差す森で下草に牧草が綺麗に生えてる森で結構びっくりした。中世あたりじゃさすがにあそこまで豚用に手入れされた森じゃ無かったと思うけどちょっとした参考にはなると思う。ネットで検索すると結構簡単に放牧されてる豚の写真が見れるので興味のある人は見るといいかも。豚を1頭飼うのに木の密度にもよるけど1~2.5ヘクタールくらいの広さがいるんだってさ。
 それでイベリコ豚を調べてて知ったんだけど豚って結構土を掘り返して木の根っこを食べようとするんだね。もちろんこれって木にとっては下手すると枯れてしまうので迷惑だし、人間も木が枯れると豚の餌のドングリがならなくなるので困ってしまう。だからイベリコ豚って鼻に金具をつけられていて木の根を掘り返さないようにされているそうだ。要するに鼻輪だね。鼻輪つけると鼻が痛いから土を掘らなくなるんだってさ。中世でも豚に鼻輪つけていたのかな? 牛の鼻輪の場合はあの巨体に言うこと聞かす為にまず確実につけてたと思うけど豚は調べてもどうなのか自分には分からなかった。牛の鼻輪ほど重要じゃないからあんまりつけてなかったような気はするけどね。断定はできないけれどさ。現代と違って中世ヨーロッパだと金属製品が手作りで基本的に高いはずだしね。鼻輪をつけるとしても結構後の時代になってからの話だと思うな。あと現代では安全のために子豚の頃にニッパーで牙を切るらしいんだけど中世だとどうなのか気になって色々見たけど牙についてはまったく分からなかった。他にも現代だと尻尾を切るらしいんだけどこれも中世では不明だ。尻尾については現代でも切らない養豚場は結構多いみたいなのであんまり気にしなくてもよさそうだけどね。しかも中世だと狭い養豚場で豚を飼っているわけじゃないからそもそも必要なさそうだしね。豚がストレスを感じたときに他の豚の尻尾をかじってしまい、かじられた豚がショックを受けて体重減少したり死んじゃったりしないように最初から尻尾を切っちゃうって話らしいので、広いところで飼われているならそうそう起きる話じゃないだろうし。
 大体中世の場合って豚について乳を搾る必要性が無いからか林間放牧も放しっぱなしみたいなんだよね。現代と比べて大雑把でもしょうがないといえばしょうがないけどね。資料をあたっても大概、ある程度子豚が乳離れして大きくなったらドングリの森に放したとしか書かれてないし、資料を読む限り中世の人たちって豚小屋を作る意識がすごく薄い感じがするんだよね。都市でも豚小屋に入れないで放し飼いにしてるしね。
 あと豚の雄って成長すると独特の雄臭がするようになって美味しくないので現代だと薬を飲ませたり子豚のうちに去勢したりしてるんだってね。中世あたりだとどうだったんだろうね? 去勢馬なんかがいるから種豚以外去勢してそうだけど、放牧しっぱなしでマメに様子を見ている感じではないし、事故で種豚死んじゃっても困るから去勢とかしないでそのまんまなのかな? 正直どうなんだろう。このことについて気になって調べたけどいつから行われていたかのはっきりとした資料は得られなかった。ただ何世紀も前から豚の去勢は一般的だったとは書かれていたけどね。でも色々調べてみると雄牛とか雄羊については中世の頃も去勢して肉質を向上させることをしていたみたいなので雄豚だけしてないってことはまず無さそうだった。しかも豚肉は当時一番よく食べられていた肉だしね。なるべく美味しく食べたいと思うのが普通だろうし。まあ、去勢がされていたのかが気になるといっても、そこまでのことはファンタジー書くのにはあまり必要を感じないけどね。あんまり詳しいと脱線しすぎでなんか違う物語になっているような気がするし。 
続きの「畜産も農業(羊・山羊・牛編)」はまだまだなのでもうしばらくお待ちください。次回の更新については今回のように一ヶ月も間を空けるつもりは無いです。今ちゃんと続きを書いてますので早めに公開できるようにがんばります。


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