麦角菌の中毒症状について表現をなるべく抑えましたが刺激が強いかもしれませんのでご注意ください。
病害虫の話(念のためR15)
病害虫をいかにして防ぐのか。農業を考える上で結構重要だと思う。病害虫対策の歴史とあまり発展していないファンタジー社会だとどんな対応策が取れるのかを考察してみたいと思う。
病害虫の話をする上ではずせないんですが、麦角菌って聞いたことありますか? これはかなり危険なカビです。イネ科の植物の穂に寄生する菌で黒い角状の菌核を作るので麦角と呼ばれるようになったとか。この麦角に含まれる麦角アルカロイドといわれる物質は強い毒性を持っていて麦角中毒といわれる症状を引き起こします。この麦角アルカロイドは強い血管収縮作用を持っているので摂取すると手足の先から真っ黒になって壊死症状を起こし手足を失ったり、妊婦さんは流産してしまったりする恐ろしいものなんだ。また、脳の血流が不足して精神錯乱を起こしたり、痙攣を起こしたり、時に死にいたる原因となるカビ毒なんだ。
どうやったら防げるか調べたのだけれど、現代日本では小麦はほとんど輸入なので小麦の輸入の際などに麦角アルカロイドの検査をして検出されたら輸出国に送りかえして処理しているみたいだった。麦角菌に効く防カビ剤とかそういう情報ももちろん探したけれど自分には得られなかったよ。送り返された国では小麦を焼却処分にするんでしょうね。現代でも食料に困っている国などではこの菌がついているにもかかわらず食べてしまって死亡者が出たりするようです。日本では基本的に麦角菌に強い米を食べているので人間での報告例はあまりないみたい。ライ麦とか小麦に多いので日本では麦角菌のついた飼料を食べた牛とかが症状を起こすことのほうが多いとか。
この麦角菌、中世ヨーロッパでは猛威を振るったとかでライ麦による麦角菌で死者多数の話が残っている。また中世ヨーロッパでは麦角菌のせいで手足のない人がいっぱいいたとかいう話もある。麦角菌について昔はペストなどの伝染病並みに恐れられていたんだ。話は少しそれるがこの麦角菌のせいで足が抜け落ちた聖人がいて病気の守護聖人になっている。麦角菌で足がなくなってしまったにもかかわらずこの聖アンソニー(3世紀頃の人物)という方は百歳以上長生きしたとかであやかってのことらしい。中世ヨーロッパでは麦角菌による病気は「聖アンソニーの火」とよばれたとか。そのため聖アンソニーの聖地とされるフランスのリヨンにみんな巡礼したらしい。この巡礼が転地療養となって麦角菌を口にしにくくなるので症状がよくなる人がいっぱいいたみたいだ。
もしあまり文明の進んでいないファンタジー世界で麦角菌が発生したとすると焼却処分にして別の食べ物を検討するくらいしかないだろうなと自分は思う。ソバはタデ科の植物でイネ科じゃないから麦角菌にはかからないのでソバを農民に作らせるのはどうだろうか。ソバは実のなるまでの期間が短いため救荒作物としてかなり有効だ。(実がなって収穫できるまでにかかる日数が、ソバは75日、イネは6ヶ月、小麦は10ヶ月くらいだという話である)
他にもいろいろ調べたんだけど基本的に近代あたりにならないと有効な農薬って存在しないんだよね。中世あたりだと撒くために使える満足な道具もないし。ジョウロは17世紀くらいには存在してたみたいだけど、噴霧器を作るのに必要なスプリングが16世紀頃に時計を作るのに使われ始めたくらいだったりするし。基本的に作物が病気の場合はひっこぬいて焼却処分にして深い穴を掘らせて灰を埋める位しか自分は思い浮かばないかも。それから害虫についてはバンカープランツ(囮用の植物)を使ったり、テデトール(単に手で取るだけのこと。素手はダメ。軍手とか手袋をしてください)で基本的には対応することになるのかなぁ。あと土中の害虫である線虫については線虫対策になる植物を3ヶ月くらい育ててから緑肥としてその土地に漉き込むくらいかな。
歴史的な話をするとローマ時代には麦の種をワインに浸してからまいてたらしい。何の効果があるのかについては自分にはよく分からないですが……。また中世ヨーロッパでは害虫や害獣を宗教裁判にかけた話があります。キリスト教ではバッタを破門にしたらしい。殺人罪になった豚も沢山いるらしい。一番裁判で裁かれたのが豚という話だ。豚を放し飼いにしてたんだからそんなことも起きるよね。豚とか猪ってものすごい力があって猪突猛進という言葉もあるし。フランスには豚に殺された王様もいる。他にも裁判で優秀な弁護士がついて無罪になったねずみがいるというがなんというアホな話だろう。虫や動物に宗教は分からないと思うんだけど昔の人は何を考えていたんだろう。日本の場合は江戸時代のころ水田に油をまいた地域があったそうです。ちなみにこの方法は結構防虫効果があったらしいです。虫が油を撒いた水面に落ちると飛べなくなって死ぬんだそうです。
近代の方法でもっと前の中世とかの時代でも使えそうな防虫方法は除虫菊の粉を防虫につかった歴史があるので除虫菊の栽培をするとかかなぁ。除虫菊って種苗メーカーで販売しているところがあるので日本だと結構簡単に手に入りますよ。結構可愛い花が咲きます。色は赤とピンクと白がありました。白い花がスタンダードっぽいです。除虫菊は採取した花をよく乾燥させた後に臼とか薬研で細かくすればいいらしい。それに除虫菊は地中海原産なのでヨーロッパ風異世界でもおかしくないと思う。撒くときは粉を吸わないようにマスクさせて撒けばいいと思うし。あと石灰と硫黄の合剤をブドウ栽培の病気対策に使う方法とかくらいなら近代より前でもなんとかなるかも知れない。現代だと農薬代わりに薄めたお酢を使う人もいるけどお酢はさすがにもったいなくて大量に撒いたりできないと思うんだ。他にも石鹸水をまいてアブラムシに使うとかもあるけど石鹸って昔は貴重品だったから中世あたりじゃ使えない手だよね。それと重曹をうどんこ病に使うとかって手もあるけど重曹の生産が工業化されたのって近代だから中世あたりの社会レベルだとちょっと無理かな。
とりあえずファンタジー内政物にこの知識を生かしてください。最後のほうは家庭菜園の知恵みたいになっちゃってますが……。
相変わらず米がすごい作物で調べていてびっくりしました。麦角菌にも強いとは……。米、侮りがたし。
あと現代でもウィルスに罹った植物とかは基本焼却処分なんだよね。他の植物にうつると困るから。そういえば梅の木にウィルスが流行っていて生産者の人が困っているって以前TVで見た。やっぱり梅の木を抜いて焼却処分だった。実は問題なく食べられるけど見た目が悪くて売れそうにないんだそうだ。
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