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農法とか農具の歴史(ヨーロッパ編)
 今回は農法と農具とその歴史について考察をおこなう。ファンタジー世界で農具を出すとしたらどういったものになってくるのだろうか。ファンタジーの舞台のモデルとされることの多い中世ヨーロッパを中心に考えていきたいと思う。
 まず、狩猟採集生活から原始的な農耕が行われるようになって一番初めに使われた道具は棒切れみたいなことがいわれている。タロットカード(注)の小アルカナのワンドみたいな木の棒だとか。でも手元のタロットカードを見てもちょっとピンと来ないかも。タロットカードのワンドってどう見てもまっすぐな杖で、もうちょっと加工しないと地面とか掘れないと思う。アレだけのまっすぐな杖を作るくらいならもうちょっとすきのようなスコップっぽい形に加工できるような気がするんだよね。実際はどうだったんだろう? ちなみに人類が始めて行った農耕って焼畑農業みたいな森や林を焼いてできた空き地に灰を肥料として漉き込んで何年間か農業してまた別の場所へ移動していくような農耕だったらしい。
 そのあと10世紀頃までのヨーロッパでは、毎年耕作地を変える移動農業が主体で、一部で二圃式農業が行われていた位らしい。二圃制とか二圃式農業というのは冬に雨が降るので冬に麦を作っては休閑するの繰り返しをする農法ね。その頃のヨーロッパではまだまだ木製の農具を使っていた。木製の農具は丈夫にするために焼きを入れて使っていたらしい。刃先だけ鉄製の場合もあったらしいけどそれはかなり恵まれているほうだったとか。木製の農具が主体のため土地を深く耕したりはできなかったんだ。この頃は道具がないので森の開墾とかもほとんどできなかったらしい。現代のヨーロッパでは原生林なんかないけど、この頃の森はほとんど手が入ってないから鬱蒼としたものだったと思われる。どんな形の農具を使っていたかというと紀元前の古代からあったそうなので鋤とか鍬とか鎌(湾曲した刃のタイプのもの。麦作地域では湾曲した刃のもののほうが刈りやすいため好まれる)とか使っていただろう。後、麦を脱穀するのに木製のフレイル(唐棹)を使っていたと思う。他には古代エジプトでも使っていたというので初歩的な木製のプラウ(犂)を2頭立てとか4頭立てとかの偶数頭の牛あるいは馬に牽かせていただろう。8世紀後半から9世紀前半ごろからヨーロッパでモールドボードプラウを使うのが一般的になったらしい。正直いって紀元前6世紀から鉄製の犂を使っている中国などと比べると明らかに農業技術が遅れている。ちなみに産業革命期になるまで1000年くらい基本的にモールドボードプラウをヨーロッパでは使っていたらしい。やっぱり中世は暗黒時代なのかな?
 それから中世ヨーロッパでは二圃式からより気候に合った三圃式を行うようになっていく。1280年頃に三圃式を推奨する内容の農業書が出ているとかでその頃あたりが二圃式から三圃式への過渡期なのだろうか。三圃式というのは冬穀用・夏穀用・休閑地(放牧用)の3種類の農地に区分してローテーションを組んで耕作していく方法でその地域全体で行うので上に立って指導する人間が必要な方法だ。そのため三圃式が行われるようになって領主の権力が増大したらしい。
 18世紀になって農業も三圃式から輪栽式農業(イギリスではノーフォーク農法の名で知られる)が行われるようになった。3つに分けていた圃場を一つにして冬穀(小麦等) → 根菜類(蕪、テンサイ等) → 夏穀(大麦、ライ麦等) → 牧草(クローバー等)とローテーションを組んで耕作する。これによって穀物の収穫量は三圃式に比べると減ってしまうが三圃式では難しかった冬場の飼料が確保できるようになり冬場の家畜の飼育ができるようになった。家畜の堆肥や牧草などの緑肥の栽培により休耕地がなくなって食料生産が全体としては上がったので人口増加につながったとか。なんでも人口革命といわれていてこの人口増加が産業革命の要因の一つとされている。他にも同時期に改良穀草式農法といって牧草の栽培期間を長くした農法が行われている。このころ農具は製鉄技術が上がったので一般的に鉄製のものを使うようになっていた。鉄製農具の使用はおそらくヨーロッパにおける高炉の開発などとリンクして増加していっていると思う。プラウについては17世紀に中国製の鉄製のプラウが入ってきてオランダ人とイギリス人によってヨーロッパに広まったらしい。その後、鋼鉄製のプラウができたのは1837年とか。
 さらに近代から現代になるとコンバインだとかの農業機械が導入されたり、効果的な農薬が開発されたり、化成肥料が開発されたりしていって飛躍的に農業生産量が上がっていくようになる。近年アメリカなどでは結構な割合で不耕起栽培が行われているらしい。耕さないことによって省力化できたり排水性や保水性がよくなったりといろんなメリットがあるらしいんだけど、アメリカなどではラウンドアップなどの農薬を使って不耕起栽培を行っているらしいので、農薬らしき農薬をほとんど使ってない中世レベルのファンタジー世界での応用はちょっと難しいのかも。
 
(注)タロットカードって意外と歴史の新しいものだったりするんです。15世紀の北イタリアで登場したものだとか。一説によるとトランプのようなカードゲームに大アルカナのカードが付け加えられたとかで元々貴族がギャンブルゲームに使うためのものだったらしいです。
 ちなみに自分が持っているのはもっとも一般的といわれるライダーウェイト版のタロットです。
 ライダーウェイト版というのは、20世紀にアーサー・エドワート・ウェイト氏が黄金の夜明け団の解釈に基づいてデザインし、同教団の画家パメラ・コールマン・スミス氏に絵を描いてもらったものでライダー社から販売された物のことです。ウェイト版のほかにマルセイユ版などがタロットカードでは有名です。
 ライダーウェイト版の特徴としては小アルカナがワンドやソードなどを使ってトランプ的に表現された物ではなくて、それぞれに異なった絵で表現されていて占いなどでインスピレーションを受けやすいものになっていることがあげられると思う。
 これに書かれているワンドの絵は中世風の衣装を着た人物が出てきているのですが、あくまでも20世紀になってイメージで描かれたものなので、中世の人間が実際こんな杖を使って農業していたかというと正直怪しいと思います。


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