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農業における土地について
 ファンタジーの世界でも超古代とか未来の設定でなければ農業が行われているのが基本だと思われる。ここでは主にファンタジーの舞台として選ばれることの多い中世ヨーロッパを中心にファンタジー世界における農業を考察してみたいと思う。

 まず、土と水と光、この三つは農業の基本になる。この中でも今回は土について取り上げてみたいと思う。
 土、いわゆる土壌には酸性土壌とアルカリ土壌の2種類があるのはご存知だろうか。ちなみに日本は良く雨が降るので基本的にはほとんどの土地が酸性土壌である。ただし現代日本での話だがセメントのせいで都市の土地がアルカリ化してる問題というのもあるにはある。ちなみにアルカリ化がなぜ問題なのかというとアルカリ化が進みすぎると塩類が過剰になってちょっとの肥料で肥料やけやガス障害などを起こして植物が育ちにくくなってしまうからだ。アルカリ土壌と塩害の問題は結構密接している。
 また、ヨーロッパだとフランスとかドイツあたりは酸性土壌だが、地中海沿岸やイタリア、スペインあたりはアルカリ土壌が多い。ネットで検索すると土壌の酸性・アルカリ性が分かる世界地図を見ることが出来るサイトがあるので興味のある方は確認してみるといいと思う。
 この土壌の違いによって育てる作物に違いが生じてくる。巷の園芸書などでは野菜作りに適したPHは大体6.0~6.5の弱酸性とあるがより酸性に強い作物、よりアルカリ性に強い作物があるのだ。元々乾燥地で作られていた作物などは土地がアルカリ土壌のことが多いせいかアルカリ性に強いものが多かったりする。
 そんなこといわれても中世ヨーロッパレベルの文明じゃ酸度計なんかないよと思われた方もいるだろう。酸度計がなくてもその土地に育っている雑草などを見ることによって大まかにだがこの土地は酸性土壌なのかアルカリ性土壌なのか分かるのだ。ヨーロッパだとおそらくセイヨウスギナやクローバー、ニガヨモギ、セイヨウオオバコなんかがたくさん生えている土地は酸性土壌で、グンバイナズナ、コハコベがたくさん生えている土地はアルカリ土壌になるだろう。日本の近縁の種が土壌の判断に使われるので多分間違ってはいないと思う。後は大麦とかジャガイモ(注)、大豆、牧草なんかはアルカリ土壌でもそれなりに育つらしい。アルカリ土壌を矯正するのにほうれん草や小松菜などを続けて栽培するという話もある。ただし、ジャガイモやほうれん草の話はアルカリ土壌といってもそれほどアルカリが強すぎないことを前提にした話である。
 そういえば、良くファンタジー内政物の施肥について草木灰をまく話が出てくるが灰はまきすぎるとアルカリに片寄り過ぎてしまうので注意が必要である。ようはイタリアあたりアルカリ土壌が多いところを舞台を設定しているのに草木灰がやたら出てきたりすると「ええっ、そんなにまいちゃって平気なの?」ってなったりするわけだ。その辺は注意したい。
 ちなみにアルカリ土壌を直す方法というのもあるにはある。灌漑水でアルカリ分や塩分を洗い流してしまうのがもっとも手っ取り早い。でもこれはかなり大量の水が必要なので土木工事の技術が進んでない世界だとはっきりいって難しい。あとは硫安、塩安、硫加などの生理的酸性肥料を使って中和させるのもあるが化学工業が発達していない社会だとやはり無理だろう。中世ヨーロッパレベルの文明で出来ることは水分の蒸散を防ぐためにワラなどでマルチングをしたり、緑肥や牧草の栽培をしたり、輪作や混作するようにしたり、農道に防風林を作るくらいかな。防風林は地下水位が下がって排水がよくなるほか、風による水分蒸発が減るので地表のアルカリ分や塩分の集積を防ぐことができるんだそうな。アルカリ土壌や塩害にあった土壌を直すのは現代でも結構難しいことなのだ。
 最後に乾燥地帯なんかが舞台の内政物とかだとこのアルカリ土壌問題や塩害のことを考慮して描写したほうがらしさが出るように思う。実際、塩害で滅びたといわれるメソポタミアのシュメール文明なんかがあるのだから。
(注)ジャガイモは酸性土壌のほうが良く出来るがアルカリでも育つらしい。もともと乾燥地の厳しい環境で育つ植物だからということだろうか。


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