第25話.能力者とブラコンと平穏崩し
~~~幸哉視点~~~
あの悲劇の惚れ薬事件から1週間が経った。
俺は学校に通えるまで回復したが、久々に行った学校では偉い目にあった。サボってんじゃねぇよ!と言う男子生徒には取り敢えず体裁を加え、如何して入院してたの?と聞いてくる女子生徒には適当に答えた。
「人気者だねぇ~」
健太が嫌味ったらしく言って来たので睨みながら答える。
「俺が今の状況を楽しんでる風に見えるのなら今直ぐにでもお前の目を作り変えてやる」
「ちょ!! 赤い赤い!」
健太が俺の目を指差しながら言う。
どうやら能力が勝手に発動していたようだ。最近は少しでも感情が起伏すると簡単に能力が発動してしまう。
一度深呼吸をして体を落ち着かせると健太は溜め息を吐き指を指して来た。
「その能力危険だから禁止!!」
取り敢えずぶん殴っておいた。
◇ ◇ ◇
「幸哉!元気にしてるか?」
ちょっと疲れすぎで幻覚でも見ているんじゃないか?そうでは無ければ姉貴に変な薬でも飲まされたか?
俺は今学校の中で姉貴らしき人と廊下ですれ違った。断じて姉貴ではない。なぜならば姉貴はもう既に学校生活を満喫出来る年をとうの昔に超えて...
「ッブワァァッハァァ!!」
そして何故かは知らないが姉貴らしき人物に本気で殴られた。
「いい度胸をしているな!私の事を老婆と呼ぶなど!」
「いやいやいやいや!!誰も老婆とかいってねぇよ!それ以前に喋ってねぇし!」
「今更いいわけは聞かんぞ!弟の考えていることなど全て分かるわ!」
そのまま俺の上にのっかって来る。所謂マウントポジションと言う奴だ。
姉貴のような人は上着のポケットから何かを取り出した。青色の液体が入ったビンだ。
「まだ認めない我が弟には、超強化版惚れ薬(私仕様)を飲ませてくれる!」
「ヌワァァァ! やめてくれぇ!」
そのままビンの蓋を開けて俺の口へと入れようとする姉貴モドキ。
「いい加減にしてくれないかな高峰先生!」
凛とした音色。間違える分けない、この声は...
「って!健太かよぉぉぉ」
「っな! 親友の事をそんな扱いにする奴はもう助けてあげないしぃ~」
そのまま不貞腐れてどこかへ行く健太。
俺にはあいつが何故此処に着たのか、そしてあいつの存在意義を問おう。でも...その前に。
「さぁ、わたし特性惚れ薬を飲んで私にメロメロになるんだ!」
口を無理矢理こじ開けられそのまま青色の液体を口の中に流された。
あれ?意外とまずくない。どちらかと言えば甘くて美味しい部類に入るんじゃないか?
「俺の能力を甘く見てもらってはコマァァァァァァル!!」
口の中に入ってきた液体をただの水へと変化。それを一気に飲み干す事で惚れ薬の効果を回避した。
しかし能力を使ったと言う事は今日一日ほどは視力の低下と筋肉痛を我慢しないといけなくなる。一時的な視力の低下は能力の副作用だが、筋肉痛の我慢は唯単純に俺の体が貧弱なだけ。
「そう言うことも在ろうかと、私は口移しと言う芸当を覚えてきたのだ!」
此処まで馬鹿馬鹿しい事に時間を割けるのは姉貴ぐらいのもんだろう。
俺は能力の効果で増量された筋肉を使いながら必死に姉貴を押しのけようとするものの、姉貴はびくともしない。
「さぁ、口を出せば快楽の嵐が「高峰先生!」...生徒会長...手を出さないでもらえるか?」
姉貴が呆れた風に視線をやったのは姉貴の後ろに仁王立ちをしている空先輩。
意識がそちらに向いている内に、俺は体を捻って姉貴の拘束から脱出した。
「あっ!逃げるな!」
「高峰先生は教師としての自覚を持ってください!取り敢えず僕が折角学校の案内してるんだから付いてきてくださいよ」
「愛しの弟の元に行って何が悪い?」
「この国で姉弟の結婚が禁止されていないとは言え常識的に考えれば少し外れてると思うよ」
「問題ない。愛は常識と言う範疇に収まりきる程小さなものではない。もっと大きな...そう!まるでビックバンのような物だ!生徒会長は心にビックバンがないのか?あるだろ?幸哉はわたさないがな!」
「い、何時僕が幸哉の事好きだって言った!?そ、そ、そんなこと、あ、あ、あるわけないじゃないか!」
「拡大解釈のしすぎではないか?ビックバンが愛だなんて言ってないぞ?それともあれか?幸哉の事好きなのか?」
今にも二人から火花が飛び散り戦争が勃発しそうなので俺は退避する。
ていうか、何で姉貴がこんな所にいるんだ?
その後俺は副作用で苦しむ事になった。
~~~次の日~~~
「幸哉!!今日新しい先生が来るらしいぞ!」
「へ~ どんな先生?」
「むっちゃ美人でな。それにすげーんだよ!苗字がお前とおんなじだぜ!お前と!」
「健太...わざとやってるだろ?」
「え?ナンノコトデショウ?」
「とぼけてんじゃねっぇぇぇぇぇ!!」
『みんなぁ~席について!』
途中は言ってきた先生の声によって渋々席に付いた。
「今日は新しい先生が来たの!」
先生がそう言うとクラスからお~。とか、ヤッタァァァァ!とか声が上がる。しかし俺は汗だらだらである。
「それじゃあ入ってきてもらおうかぁ~」
そう言うと前の扉からガラガラと音を立てて誰かが入ってきた。
「ほ~。此処が幸哉のクラスか」
「じゃあ、自己紹介お願いします」
「あぁ。高峰 輪廻だ。好きなものは弟。嫌いなものは弟を害するものと私の事をナンパする馬鹿共だ。まぁ、教師の仕事の見学みたいなものだから空気として扱ってくれ。幸哉は駄目だぞ?」
俺に平穏は来ないのだろうか?
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