(2012年11月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
オバマ米大統領は先週、久しぶりに温暖化ガス排出削減の必要性を訴えたが、タイミングとしては最悪だった。つい数日前に国際エネルギー機関(IEA)が、「シェールガス」などの非在来型の石油・ガス資源のおかげで、米国は世界最大の原油・ガス産出国になるという予測を発表していたからだ。
■石炭よりもガスの利用を奨励
天然ガスや石油の開発ブームに沸く国で規制を強化するのは難しい。大統領自身、雇用と成長を犠牲にしてまで気候問題に取り組むことを望む者はいないと語ったことがある。
一方、IEAの予測は大統領の懸念を裏付けた。大量の化石燃料消費が続けば、温暖化が壊滅的な被害をもたらすリスクが高まるという。
米国は、成長や安全保障から見た「シェール革命」の短期的な恩恵と長期的な温暖化ガス削減の必要性とを調整する必要がある。
重要なのは、シェール革命に抵抗するのではなく、両立する道を探ることだ。
政策としてはまず、石炭に代わる発電燃料としてのガスの利用を奨励するものでなくてはならない。石炭の使用を抑えることで、米国では既にエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出量が2012年1~3月に20年ぶりの低水準となった。こうした傾向は中国などに波及するだろう。
次に、エネルギー効率を向上させ、米国の原油自給率の増加とCO2排出量削減に向けた進展を促す規制が必要だ。
■CO2排出への課税は避けられない
さらに、米国はキャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度の導入や課税を通じて排出量に対価を課す動きを復活させるべきだ。
CO2排出量やエネルギー消費への課税は給与や利益への課税よりも歳入増加には有効だ。ただ、これらの案への政治的抵抗は強く、炭素税の導入は見送られた。
しかし、形はどうあれCO2排出への課税は避けられない。どのくらいの速さで温暖化が進み、地球への影響はどの程度あるのかは依然不透明だが、その脅威は現実のものだ。
気候問題に長く沈黙を続けてきたオバマ大統領の発言は歓迎すべきだ。大統領がこの問題を再び放置しないことを望む。
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