「母がしんどい」が面白かったです。Kindle版が安いのでお持ちの方はぜひ。
「愛しているからしかるの!」
いわゆる「シックマザー」に育てられた著者のコミックエッセイ。軽めのタッチですが、内容は重いです。
特に印象的なのは、お母さんが「愛しているからしかるの!」と訴える場面。著者はさすがに「シラーッ」となっていますが、これって一般の家庭にも見られる現象だと思います。
僕はこの手の「愛しているからしかるの!」的な態度は、ほとんど100%嘘っぱちだと確信しています。少なくとも、100%、愛が叱る理由ではないでしょう。10%の怒りや、20%の世間体への配慮が紛れ込んでいるはずです。
このマンガにおいても、純粋な娘への愛というよりは、母親が自分の思うがままに振る舞う「言い訳」として、愛というお題目が使われているように読めます(娘はそれを見抜いているので「シラーッ」となるわけですね)。
関連して、内田樹先生がドメスティックバイオレンスについて言及しながら、「愛」の欺瞞について解説しています。
家庭内暴力があれだけ陰惨なものになるのは、「愛しているから」という暴力の正当化を、殴る方も、殴られる方もイデオロギーとして承認しているからだと思います。
「殴る人間は殴られる人間のことを愛していない」ということをきっぱりと双方が確認すれば、過程の中で暴力がうじうじと持続するということは防げるはずです。
(中略)「俺はお前を愛している」と言いさえすれば、後は何でも許されるというのは、いい加減にやめませんか。
うちにも新生児がいるのですが、夜泣きがうるさいと、ほとんど無意識的にイラっとしてしまう自分に気づきます。流石にここで「うるさいぞ!お前のためを思って叱るんだ!」と騒ぎだすことはしませんが、子どもが成長してきたら、「お前のために」はつい使ってしまいそうですね…気をつけたいと思います。
なお、この本のレビューを見るに、こういう親に育てられた子どもは想像以上に多いようです。「母(父)がしんどい」と感じたことがある方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。救われる方も多いはず。
関連して、「シックマザー」もおすすめ。こちらも救われる人が多そうな一冊。
シック・マザーによく見られる傾向
①ネガティブな認知と感情的な過剰反応
②子どもを自分の問題に巻き込む
③潔癖さとあら探しの傾向
④子ども自身への関心の乏しさ
⑤ひきこもり傾向や社会的スキルの乏しさ
⑥気まぐれで、一貫性を欠いた対応
⑦管理の欠如または過剰
⑧母性的なぬくもりや柔軟性の欠如