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未来からやってきたゲーム開発エンジン「UNREAL 4」

 
 
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TEXT BY STU HORVATH
PHOTOGRAPHS BY ANDY RYAN
IMAGES COURTESY OF EPIC GAMES
TRANSLATION BY OTTOGIRO MACHIKANE
CAPTIONS BY TAKASHI SHIRAE


静寂のなかの“史上最大の作戦”

UE4の応用範囲は限りなく広い。拡張現実や医療シミュレーションにも使えるだろうし、テレビや映画の制作工程にすら使い道はあるだろう。しかしその核となる用途はヴィデオゲーム向けなのであって、開発室の外でそれが初めて人目に触れるのは、2012年3月のGDC会場でだ。エピックのチームにしてみれば、それはノルマンディー上陸作戦のようなもので、その“史上最大の作戦”のためにいままでがむしゃらに働いてきたのだ。

ところが、サンフランシスコのモスコーニ・センター内に設けられた会場内の雰囲気はというと、それはノルマンディーというよりは、むしろグアンタナモ収容所のようなものだった。エピック社のデモが行われる会議室へと、30人ほどが列をなしてぞろぞろと入っていく。各人が首から下げたバッジには、NVIDIA、マイクロソフト、AMD、ソニーなどと、所属会社名が記されている。会議室の壁沿いにはヴィデオカメラがずらりと列をなし、ドアというドアの両側には図体のでかい警備員がひとりずつ立ち、睨みを利かせている。

アラン・ウィラードが聴衆の前でデモにとりかかり、重装鎧のデーモン、舞い踊る火花、転がり進む光の球体と披露していくうちに、会場は水を打ったように静まりかえった。そこで、意外な事実が明かされる。ウィラードが告げるには、映画風のシーンも、そのあとで披露した編集作業のデモも、事前に作成した動画ではなく、UE4のゲームエディターをリアルタイムで操作しながら実演したものだというのだ。

それがどれだけとんでもないことかって? そうだな……テレビの画面のなかに、小さな人たちが本当に動いているのを見つけてしまうようなことだと言おうか。さらにウィラードは、ゲームのデザインやコードをその場で変更して、ほとんど瞬時に適用できることも示してみせた。それはゲームの歴史をひもといても、およそ前代未聞の大偉業だ

それにふさわしく、会場の静寂はますます深まり、ほとんど敬虔の域に達した。そうとも、いまここで、ヴィデオゲーム産業は歴史的変化を迎えたのだ。

いまこのGDCの会議室に集まったエンジニアや経営者たちは、ため息をもらしもせず、歓声に沸くこともない。そうとも、彼らはマシンのような男たちなのだ。未来をひと目見るためにここにやってきて、確かに未来を目にした彼らは、やれやれというような笑みを口の端に浮かべて会議室から出ていく。ここから帰れば、山のような仕事が待っているのだ。


ストゥー・ホルヴァス︱STU HORVATH
ライター。ゲームやコミック、パルプカルチャーを扱うウェブサイトunwinnable.comも主宰する。US版『WIRED』の2011年12月号に、ゲーム「アンチャーテッド」についても寄稿した。


 
 
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