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2013.1.6 SUN
未来からやってきたゲーム開発エンジン「UNREAL 4」
TEXT BY STU HORVATH
PHOTOGRAPHS BY ANDY RYAN
IMAGES COURTESY OF EPIC GAMES
TRANSLATION BY OTTOGIRO MACHIKANE
CAPTIONS BY TAKASHI SHIRAE
スワイプひとつで誰もが「神」になれる
世間をあっと言わせるヴィデオゲームを、ちっぽけなグループで制作するなんてことも、昔ならできた。それがいまじゃ、ちょっとした軍隊が必要なくらいの大ごとになってきた。「例えば『コール オブ デューティ』。あれは50人に満たないくらいのチームが、PS2でつくったものなんですよ」と、スウィーニーは指摘する。「で、現行コンソール向け『コール オブ デューティ』に投入された人数はというと、実に数百人にもなります。ならば次世代にはどうなりますか? 4,000人などという規模になってしまうのでしょうか?」。そんな人手の膨張を食い止めるために、スウィーニーがUE4に組み入れたのは、制作の工程とコストを切り詰めるための(さらに、そうした省力化によって利益も上がるはずの)ツールだ。
それはどんな仕組みだろう? まずひとつ言えるのは、UE4なら、開発者がゲームに適用した変更をその場ですぐに確認できるということだ。
現状の生産工程では、WYSIWYG(What You See Is What You Getの略:「見たままのものが得られる」という意味。処理内容とディスプレイに表示されるものが一致するという意味で使われる)は最低限にしか実現されていない。例えば、照明の要素が変更された場合、コンピューターがデータを分析してレンダリングをどう変更するかを導き出さないといけない。編集の規模にもよるけれど、時にベーキングとも呼ばれるそうした処理には、小一時間ほどかかることもある。UE4は、それにかかっていた時間を完全になくした。ゲームスタジオのワークフローにもたらす恩恵は計り知れないほどだろう。
しかし、何よりすごいのは、Kismet 2というエピック社のヴィジュアルスクリプト処理ツールだ。スクリプトとは、ゲーム世界に登場するあらゆるオブジェクトの特性や動きをプログラマーが定義するために用いるもので、例えば、悪者どもがプログラムされた待ち伏せを実行に移した場合にどんなふうにドアが開くのかというような、あらゆる物事を規定するものだ。それは、ゲーム内のイヴェントが積み重なっていくにつれて、関係性の蜘蛛の巣もどんどん複雑でこんがらがったものになっていく。それらをいちいちチェックしてつじつまを合わせることだけでも、超人的な仕事になってくる。UE3にKismetを組み込むことで、エピック社はこの問題に対処した。Kismetは、さほど重要でないスクリプトについては、プログラマーがいちいちコード化することなく、パレット式のオプションから選択できるようにしたことで、処理の省力化をもたらした。
すると、驚くべきことが起こった。Kismetの登場で、プログラミングが専門家だけのものではなくなったのだ。「プログラマーではないけれど、自分でスクリプトしたいという人たちもいたのですよ」と、上級エンジンプログラマーのジェームズ・ゴールディングは言う。言い換えると、アーティストのなかにはただモンスターを描くだけでは飽き足りずに、そのモンスターがどう動くかも自分で決めたいと考える人も出てきたってことだ。それを可能にしたのがKismetというわけだ。
そして、Kismet 2がつくり出された。こちらも初代と同じく、退屈なコードの群れがもつれ絡み合ったものをわかりやすいフローチャートにしたもので、プルダウンメニューを選択することによって、ゲーム内オブジェクトが取りうるほとんどすべての動きを管理設定することができる。「あの強化ガラスは銃弾何発を撃ち込んだら粉々になるだろうか?」といったことを決めるには、Kismet 2が強い味方になる。ひとたび行動が設定されれば、それは直ちに実行され、さりげなく処理される。ゴールディングは言う。「わたしたちはKismet 2をつくったことで、自社のレヴェルデザイナーたちを半神のような存在にしてしまったんですよ。何せ、指先のスワイプひとつで世界が造れてしまうんですから」
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「夢」
2013.01.07
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