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袖にされた韓国重視 靖国放火犯釈放、首相「極めて遺憾」

2013.1.5 00:23更新

4日、韓国の首都ソウルで、朴槿恵次期大統領(右)と握手する額賀福志郎元財務相(ロイター=共同)

 日韓関係の改善に向けて、安倍晋三首相が特使を派遣する前日、ソウル高裁が、東京の靖国神社への放火を認めた中国籍の劉強容疑者(38)を「政治犯」と認定し、日本に引き渡さない決定を下した。首相は「価値観が共通する隣国」として韓国重視の姿勢を鮮明にしているが、日本より中国を信頼するかのような今回の判断に、大きな失望感が広がっている。

 日本政府は、日韓犯罪人引き渡し条約で拒否事由として認められている政治犯に劉容疑者は該当しないとして「数十回にわたり日本への移送を求めた」(政府関係者)。それだけに、首相は4日、三重県伊勢市での記者会見で「条約を事実上無視をし、極めて遺憾だ。強く抗議したい」と不快感を表明した。

 外務省は3日に韓国の大使館ルートで抗議したのに続き、4日も河相周夫事務次官が韓国の申●(=王へんに玉)秀(シン・ガクス)駐日大使に電話で抗議。申氏は、行政府として司法判断したことに関与できないとの原則論を繰り返したという。

 そもそも、犯罪人引き渡し条約は相互の司法制度を信頼する相互主義で成り立っている。しかし、日本政府は「どんな容疑者でも『政治的動機があった』といえば無罪放免になってしまう」(日韓外交筋)と不信感を募らせており、今後、「政治犯」の定義などの見解について、韓国側に明確な回答を求める。

 ただ、安倍政権は2月の朴槿恵(パク・クネ)氏の大統領就任を機に、李明博大統領の島根県・竹島上陸で悪化した日韓関係の改善を図ろうとしている。同じく関係が冷え込む中国との「二正面作戦」を避けるためだ。

 特使として訪韓した額賀福志郎元財務相は4日夜、産経新聞の取材に対し、朴氏との会談で今回の問題を取り上げなかった理由について「まだ彼女(朴氏)は次期大統領で、行政権を持っていない」と説明。問題視するのはあくまで李政権の対応というわけだ。

 菅義偉官房長官も産経新聞などのインタビューで、「(ソウル高裁の)判断は極めて遺憾だが、日韓関係は大事だ。お互いに問題を乗り越えて友好関係を築き上げていきたい」と語った。(杉本康士)

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