親族女児の難病「金儲け」に利用する“人でなし” あの街頭募金は詐欺だった
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オレンジ色のおそろいのジャンパーを着た怪しげなグループは、やはり詐欺団だった。平成23年秋ごろから、大阪府内で、実在する難病の女児(5)への支援を呼びかける募金活動を行っていた男5人が大阪府警に逮捕された。長髪、無精ひげ、感じられない真剣さ…。とても慈善活動をしているようにはみえないメンバーに、「本当か?」と詰め寄る通行人も少なくなかった。それでもミナミや天王寺など頻繁に出没し、1年余りで集めた「善意」は数百万円に。逮捕者の中に女児の親族もいたというあきれ返るしかない卑劣な犯罪に、真面目に募金に取り組む団体からは悪影響を懸念する声も上がる。
■長髪、ヒゲ面で募金呼びかけ
「全身14カ所を骨折して生まれてきました」
「5歳になった今でも難病と闘っています」
24年11月上旬、買い物客らでにぎわう大阪・ミナミの百貨店前に、おそろいのオレンジ色のジャンパーを着て募金箱を持った3人組の男が現れた。首に女児の顔写真が貼り付けられたプラカードをぶら下げ、数十メートル間隔に分かれて募金活動を開始した。
一人は長髪、もう一人は無精ひげ。3人とも声をあげて女児への支援を呼びかけるものの、セリフを淡々と繰り返す感じで必死さはまったく伝わってこない。ほかの募金活動とは明らかに違う雰囲気が漂っている。
大半の通行人が素通り、中にはいぶかしげに眺める人も。それでも、募金をする人がおり、高齢女性が硬貨を入れると、男の一人は「ありがとうございます」と深々と一礼。別の男もスーツ姿の男性に笑顔で何度も頭を下げた。
さらに注意深く観察してみると、男らは絶対に募金者に対し、募金の使途や趣旨、組織名を一切明かさない。キャップ帽を目深にかぶっているのは、表情を悟られないためだろうか。
「何やってるんや」。活動開始から数時間後、募金活動を不審に思ったのか、自転車に乗った男性が突然男に詰め寄った。説明を求められた男は、身ぶり手ぶりを交えて“言い訳”を開始。やがて他の2人も弁解に加勢したが、最終的には現場から立ち去った。
■逮捕者の1人は女児の親族
大阪府警に逮捕されたのは、大阪市住吉区のNPO法人「W.S.A」の理事(32)ら5人。NPO法人は慈善団体を装うため、難病患者の支援などを事業目的として24年8月に設立された。
府警によると、理事をはじめとする募金詐欺グループが募金活動を始めたのは23年秋ごろ。大阪・ミナミやJR天王寺駅前、大阪府泉佐野市の大型商業施設周辺の歩道橋などを拠点にしていた。
活動時間帯は、買い物客や帰宅途中のサラリーマンが増える昼過ぎから夕方までの4〜5時間。2〜4人組で、多いときには週6日も活動していた。集めた金は1日あたり数万円、トータルでは少なくとも数百万円に上るとされる。
そもそも、募金詐欺に利用された女児は、厚生労働省が小児慢性特定疾患に指定する先天性の難病「骨形成不全症」を患っていた。18歳未満の重症患者は原則、医療費が無料となる疾患だ。女児も重症認定を受けており、募金をしなければ治療が受けられないような状況にはなかった。
だが、詐欺グループは女児の難病がビジネスになると算段したのだろう。女児の病状を把握し、街頭活動担当など役割を分担しながら活動を展開。正当な活動であるように装うため、街頭活動の際にはあらかじめ府内の警察署で道路使用許可を取得しておく周到ぶりだった。
驚くべきことに、逮捕された5人の中には女児の親族の無職男(58)も含まれていた。金の一部は親族の男にも渡っていたが、女児側には一銭も渡っておらず、親族の男は女児側にも活動を秘密にしていたとみられている。
■「詐欺ちゃうんか」疑う通行人
こうして巧みな偽装工作をしながら、男らは順調に“売り上げ”を伸ばしていった。だが、男らの気づかないところで、活動を不審がる声は広がっていた。
「だまして小銭を稼いでいるようにしか見えない」
「目的を話さず、信憑(しんぴょう)性に欠ける」
男らが逮捕される数カ月前から、インターネット上のブログやツイッターでは、募金詐欺グループを「怪しい」と指摘する書き込みが相次いでいた。
「ほんまは詐欺ちゃうんか」。噂が広がると、街頭で男らに直接詰め寄る通行人も現れるようになった。ミナミの百貨店近くの小売店で勤務する女性(25)も「仲間内では以前から怪しい集団だと噂になっていた」と証言した。
オレンジ色の上着をまとい、来る日も来る日も募金を呼びかけていた集団は、一部の通行人からは異様な目で見られていたのだ。
■わずか千円の詐取容疑で逮捕
男らを疑問視していた人の中には、かつて大阪府警が摘発した大型募金詐欺事件を思い起こした人もいただろう。
府警は17年、京阪神の繁華街で難病の子供を支援する募金活動を装い、通行人から約2千万円をだまし取ったとして、団体主宰者の男を詐欺容疑で逮捕した。複数の犯罪が連続で行われた場合にひとくくりにして立件する「包括的一罪」を詐欺事件に適用した全国初の事例だった。
詐欺事件の捜査は個別の被害者と被害額を特定していくことが通例。しかし、募金詐欺の場合は一人あたりの被害額はきわめて少額で、不特定多数の募金者を特定することもほぼ不可能だ。このため、府警は17年に「包括的一罪」を適用して事件を立件。最高裁も22年3月、「募金者多数を被害者とし、募金の期間や場所、被害総額を示せば(詐欺罪は)成立する」との初判断を示した。
今回の事件で、府警はわずか千円の詐取容疑で5人の逮捕に踏み切った。背景には、最高裁判断をもとに被害を早急に食い止めようとした捜査当局の意図があったのだ。
■「もう募金しない」影響必至
今回の事件を受け、懸念されるのは「街頭募金」に対するイメージダウンだ。昨年3月の東日本大震災の発生直後にも、被災者支援を呼びかける募金詐欺が全国で相次いだばかり。ネット上では早くも「もう街頭募金はしない」などとする書き込みが少なからずみられる。
歳末から年始にかけては助け合いの心を広げようと募金活動が活発化する。「赤い羽根共同募金」を推進する中央共同募金会(東京都)は「現段階では特段の影響を感じない」としながらも、「正当な理由でまじめに街頭募金をしている団体も疑惑の目で見られかねない」と怒りをあらわにした。
せっかくの募金が犯罪収益となるようでは募金者も浮かばれない。逮捕された男らのような不審な団体を見分けるにはどうしたらいいのか。
募金会は「団体名を名乗らず、募金の使途や趣旨の説明をしないような団体は不審だと思って間違いない」と注意を呼びかける。
実在する難病女児を利用するだけでなく、支援の手を差し伸べようとした人の善意を踏みにじった犯行の影響は決して小さくない。
「難病の女の子に支援を!」。こんな文言で募金を呼びかけていた集団にあなたはだまされていませんか?
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