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プレリュードと駆けた日々 第49話 さよならプレリュード(後編)

第49話 さよならプレリュード(後編)〜 26歳 夏。 〜



実家へと戻り、いつもならそこにプレリュードがある駐車場を改めてながめる。

しかし、もうプレリュードは存在しない。



いいんだ。これからのオレには輝かしい新婚生活が待っている。
プレリュードと駆けた日々は、いい思い出として残り、
新しい毎日が始まるんだ。

このお盆期間中の休みを、結婚の準備期間として、有効に使うんだ。


そう言い聞かせ、頭の中を完全に結婚準備に切り替えることにした。










そしてそれは、プレリュードを手放してから5日後。
連休の最終日、2002年8月18日(日)のことだ。








その直前の日程に迫っている結婚準備を進めていく中でも、
オレと彼女との間で、考え方や価値観の相違などの諸々が原因で、
気持ちのすれ違いを感じたり、意見の対立がおこり、
本当にこのまま結婚式を迎えてよいのか?と感じたオレは・・・






・・・真剣に考え抜いた末に、・・・






・・・翌月に迫った彼女との結婚披露宴を一旦キャンセルし、結婚する事自体を考え直すことにした。






(センシティブな話題なので、あえて詳細は部分の記述は割愛をいたします。)









自分の中で強い迷いが生じている今、このまま慌てて結婚するよりも、
二人でよく落ち着いて考えて、「本当に結婚をしてよい」と考えられる時まで
結婚式の日程を、一旦延期をするということにしたわけだ。










延期をすると決めた晩に彼女の実家にお邪魔して、ご両親に事情を説明し・・・結果として、納得をしていただいた。





結婚式を延期し、「また二人の気持ちが歩み寄り、“本当に結婚をしてよい”と考えられる時に再度、式の日取りを考える」という言い方から、 ご両親は、オレの言わんとしていることを、心ならずも察してくれたようだった。























その夜の長野新幹線に乗り、オレは長野駅から大宮へと戻ることにした。
無情にも、翌日は月曜日。普通の生活が、また始まる。


いつもであれば、プレリュードに乗って上信越自動車道で帰るのだが、
そのプレリュードとは、先日サヨナラをしたところだ。





オレは人もまばらな自由席に座り、缶ビールを飲みながら、流れる景色を見ていた。

オレが自分で出した答えとはいえ、結婚を真剣に考えてきた彼女を悲しませてしまったこと・・
つい今まで話しをしていた、彼女の実家での出来事、ご両親の切なそうな顔・・
そして、今まで駆けて来た、プレリュードとの日々・・











色々と、いっぺんに失ったなぁ。













軽井沢駅に新幹線が到着すると、おじさんが一人乗ってきて、
周りの席はガラガラなのに、「となり、空いていますか?」と座ってきた。


ながせ:「えぇ・・どうぞ。」


隣に座ったおじさんの事は気にせずに、オレはまた窓の外を見ていた。

たぶん、オレは相当暗い顔をしていたんだと思う。






おじさんは、カバンから缶ビールを取り出すと、勝手にしゃべりだした。


おじさん:「お兄ちゃん、はい、お疲れ。どうしたの、暗い顔して?」

ながせ:「いえ・・別に。」

おじさん:「そうか、まぁいいや。」

ながせ:「・・・」

おじさん:「・・・」

ながせ:「・・・」

おじさん:「おじさんねぇ、実は、社長やっているのよ。まぁ、小さい会社なんだけどね。
      若い頃は、いろいろと失敗も経験したんだよ。
      お兄ちゃんも、何か悩んでいるようだけど、何か重大な選択をしたところなんじゃない?」

ながせ:「・・!?」

おじさん:「でも、その選択ってさぁ。
      その時は、もしかしたら失敗した〜、とか後悔したりしているだけじゃ、ダメよ。。
      その選択って、必ず自分で考えて行動しているわけでしょ?」

ながせ:「はい。」

おじさん:「その自らが選択した人生の分岐点を、どう次に生かすかなんだよね。
      若い頃は、いろいろと成功も失敗もあるだろうよ。
      お兄ちゃんも・・・」

おじさんは、オレの顔をじっくりと眺めて・・

おじさん:「・・・うん、間違った選択をしたわけじゃないな。
      オレも人を見る目はあるつもりなんだ。       人生ってのはな、最後に振り返ってみて幸せだったら、それで成功なんだよ!」

ながせ:「はぁ・・」

おじさん:「お兄ちゃんも、自信を持てや!
      じゃあな。」



そして、おじさんは高崎駅で降りていった。






おじさんは、よく考えたら、当たり前と言えば当たり前の事を言っているだけなのだが、

オレは色んな事がいっぺんに起きて、選択し、別れ、そして正直いって落ち込んでいたものだから、

そこに来て、見ず知らずのオレに、そんな暖かい励ましの言葉をかけてなんてくれるものだから、

もしかしたら、このおじさんは神様か誰かが代弁をしてくれているんじゃないか、

なんて思ってしまって、オレは思わず、声を殺して、泣いてしまった。






(あとがきへ続く)


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