プレリュードと駆けた日々 第48話 さよならプレリュード(前編)
第48話 さよならプレリュード(前編)〜 26歳 夏。 〜
目前に迫った、その秋の結婚を契機に、プレリュードを手放すことを決めた。
そして、生活の足となるクルマは、彼女が持っているワゴンRをアテにすることにした。
遠距離交際している彼女とも電話で話しをして、二人で考えた結婚後の生活スタイルからの、二人の結論だった。
なぜなら・・
・二人でそれぞれクルマを持ち、二台分の維持費がかかるのは経済的に得策ではない。
・プレリュードよりもワゴンRのほうが、圧倒的に維持費が安い。
・プレリュードは11年落ち。一方でワゴンRはほぼ新車に近い。
・彼女が今の会社を寿退社して埼玉へ引っ越してくるが、勤め始めた場合に通勤にクルマを使う可能性がある。
・彼女はMT車を(免許はあるが、実質は)運転できない。
・子供が産まれてチャイルドシートを着けるとしたら、プレリュードの2ドアよりもワゴンRの4ドアの方が利便性が高い。
・プレリュードはこの夏で車検を迎え、車検を継続するには、もろもろの費用が50万円程度かかる。
などなどの理由から、おれのプレリュードを手放し、彼女が持っているワゴンRを生活の足(あし)とした方が何かと懸命との判断からだ。
これは、仕方が無いことだ。
実は、彼女との間では、クルマの事に限らず、結婚後の二人の生活について、よく話し合いをしてきたわけではなかった。
彼女とオレとは、長野と埼玉とで、遠距離恋愛で離れていたということもあり、
数日おきの電話や、数週間に一度程度づつ会う機会は、ほとんどが式の準備の話題ばかり。
上記のクルマをどうするかという問題のみならず、彼女の結婚後の勤めや、二人の生活の全般の事について、
さらに言うと、お互いの価値観であるとか結婚感についても、あまり会話をしてこなかった。
そこにきてこの車検の話しが持ち上がったのは、それらのことを見直すよいキッカケが生まれたと言って良い。
もともと、式の準備の話題や今後の生活の話題も、お互いの価値観が微妙に異なっていて、ケンカが絶えなかったことも事実だったが。
そんなわけだが、プレリュードを手放すということは、決定事項。
車検満了は8月のお盆明け。結婚式は9月下旬。
大事な式の準備もあんまり進んでいないから、ここから追い込みをかけなくてはならない。
だから、プレリュードに乗り続けたいとか、言っているヒマはないんだ。
そんな事に時間をかけているくらいだったら、現実の未来の生活を直視しろってことだ。
もう、完全にふっきれた。
そう、これも成長過程の、大事な出会いと別れのひとつなんだ。プレリュードとは、これでサヨナラなんだ。
プレリュードから、各種パーツを取り外す。
欲しい人に譲ったり、オークションで売ったりすれば多少は生活の足しになると思ったからだ。
レカロシートは、純正シートのに戻す。
社外オーディオも、純正オーディオに戻す。
ヒロ製のハイウィングは、6角レンチで綺麗に外す。
社外17インチアルミは、15インチのノーマルアルミ(しかもスタッドレス)に戻す。
作業を進めるたびに、エクステリア・インテリア共にノーマル状態に近くなっていった・・
その週末、実家がお世話になっている地元のホンダクリオにプレリュードを持っていくことにした。
これが事実上の、お別れだ。
事前にホンダクリオの営業マンに対しては、事情を話しておいたのだが、「売却」として引き取ってもらうのは難しいという。
本来ならば、クルマの廃車に関わる諸費用を、こちらから払わなくてはならないらしいのだが、
プレリュードのパーツが修理に使えるということで、差し引きタダで引き取ってくれるという。
オレはホンダクリオに行く前に、最後の最後のドライブということで洗車場に行き、プレリュードの洗車をした。
いくら廃車にするとは言え、長年のパートーナーであるプレリュードを、雨水で汚れたままオサラバというのは忍びない。
きちんと礼儀をもってお別れだ。
いつものように、ピカピカのプレリュードのボディが現われた。
もう、これでお別れなんだね。
そしてホンダクリオ信州に到着したおれは、駐車場にプレリュードを停め、キーを営業マンに渡す。
事務処理上の手続きをひととおり終えて、オレはホンダクリオを後にした。
おれは、その駐車場を振り返ることが出来なかった。
2002年8月13日(火)のことだった。