プレリュードと駆けた日々 第47話 疾走! 甲州街道:vs MR2
第47話 疾走! 甲州街道:vs MR2〜 26歳 夏。 〜
その週末も、また長野県へ帰る予定だった。
しかし今回は、実家のある松本市へ向かうために、
都内から20号線を通っていた。
エアコンが効かないから、運転席と助手席の窓を全開にして、涼しい夜の移動です。
かつ、お金も倹約しなくてはならないし、国道を使います。
考えてみたら、長野県と都心との往復は、何度目になるんだろう。
学生の頃の夏・正月の帰省や、就職活動で何度も往復をしたなぁ。
社会人になってからも、すぐに東京勤務になってしまい、
学生の頃に比べると、回数こそ減ったものの、
長野県へ帰るために、中央道も関越自動車道も、
国道17・18号も、国道20号も、ずいぶんと走った。
うん、懐かしいなぁ。
高尾駅前から大垂水峠を超え、国道20号線をどんどん進む。
そして、道のりも半ばに差し掛かり、甲府バイパスを進む。
ニ車線から一車線に変わる瞬間だ。
(地図でいうと、ココ)
gooのスクロール出来る地図、すごいですね!
ここまで、甲府バイパスを同じようなスピードで走ってきたクルマ集団が、
一斉に一列に並んで走るわけだが、この先の何十キロも、一緒に走ることになる。
しかし、この中にゆっくり走るクルマが一台でもいると、そのクルマがきっかけになり、
集団が分かれてしまう。
つまり、ここで他のクルマより一台でも前に出ておくと、非常にストレスが少ない。
この日、少し強引な割り込みかと思ったが、大型トラックの前にプレリュードをねじこんだ。
「申し訳ないなぁ・・でも、この後の道のりに大きく影響するから。」
なんて思いながら、“ ご・め・ん・ね ”の勝手な意味づけで、4回ハザード。
バックミラーで確認すると、同じようにハザードが映っている。
あれ?オレのハザードに対する、トラックのハザード返しかな?
違う!プレリュードと大型トラックの間に、もう一台が入っていたんだ!
後続のクルマは、プレリュードにほぼピッタリくっついている。
車間距離が短すぎて、オレのミラーでは、ヘッドライトが見えないくらいだ。
それでもよーく見ると、ヘッドライトはリトラクタブル。RX-7?それとも70スープラ?
いや、MR2だ。
↓ これ。
けっこう強引な割り込みだったな。
ま、いいけれど。
走っているポイントは、左に釜無川を見ながらの土手沿いの道だ。
このとき、先頭集団のオレが3台目。MR2が4台目。
一番先頭の車が、制限速度ぴったりで走っている。
だからというのも可笑しな話だが、その前には誰もいない。
このクルマさえ抜かせば、自分のペースで走れる
道はずっとまっすぐで、対向車の動きもはっきり把握できるので、追い抜きは容易だ。
しかし、さすがに2台を抜かすとなると、慎重におこなったほうがよい。
よし、あの対向車の団体が通過したらにしよう。
よし、通過。
次の対向車も来ていない。
右のミラーを確認・・
すると、MR2が先にしかけてきた。
3台抜き!?
MR2はヘッドライトをハイビームにして、対向車線で追い抜きをはじめる。
かつ、オレ達のクルマから十分すぎるほどの横の間隔をあけて、
抜かれていくクルマをなるべく驚かせないように。
そして、追い抜きをかけながら、丁寧なハザードをたっぷりと時間をかけて。
よく見ると、このMR2は松本ナンバーだ。長野県に帰るのだろう。
ここはまだ韮崎市に入るかどうかの、いわば山梨県の真ん中。
こいつについていけば、いいペースで帰れるかもしれない。
そう瞬時に判断したオレは、このMR2の3台抜きに付いていくことにした。
プレリュードも、ハザードをたっぷり出しながら、紳士的に。。。
3台を抜き終えたところで、MR2がペースを落として走っていた。
???
プレリュードが追いついた事を確認したのか、またMR2はハザードを数回知らせ、
その直後、MR2は加速を始めた。
ついて来いってことか?
対向車も来なければ、前後にもクルマはいない。
ここから先はほとんど信号もほとんどなく、多少のアップダウン付きの、比較的ゆるやかなワインディングが楽しめる区間だ。
(地図でいうと、ココあたりから)
よし。
オレも、スピードを上げた。
途中、一台だけゆっくり走っているクルマが前方にいると、MR2は迷わずパスしていく。
オレも、MR2に続いて、迷わずパスしていく。
スピードメーターが指している数字は、一発免停になる基準を、よく超えていたが・・
オレも国道20号はよく知っているし、MR2も走りなれているのだろう。
キツいブラインドコーナーのすぐ先に信号がある箇所ではきちんと減速するし、
前方に複数台が走っているときは、無理にパスせずに、
次の長いストレートがくるまで、きちんと待っている。
おれ:「このMR2のドライバー、スピードを出す割には、ずいぶん紳士的な運転をするなぁ。」
この時すでにおれの中で、このMR2に対して、好感度が増していた。
するとMR2が、とある一台をパスした。
しかし対向車の集団が迫っていて、オレは続いてパスできない!
おれ「くぅ!抜かしてー!MR2が先に行ってしまう・・」
対向車が長く続いたが、少し先に現われた長いストレートで、ようやくオレも前のクルマをパスした。
するとしばらく先で、MR2が巡航速度を落として走っていた。
おれ「オレを待っていてくれたのか?」
MR2がまたハザードをつけて合図をくれた。間違いない。オレへの合図だ。
“待ってたよ!”なのか、“遅いぞ!”なのかは判らないが、MR2も、オレと一緒に走ることを楽しんでいる。
そしてまた、真夜中の国道20号に、2台の高いエンジン音がこだまする。
(↑ 特にプレリュードはエアコンが効かないから窓を開けているため、余計そう感じる。)
今後、結婚して、このプレリュードを手放してしまったら、
もう、こんな風にワインディングを夜中に楽しむことも無くなるんだろうなぁ・・
前のMR2のドライバー、どこの誰かは知らないけれど、いったいどんなヤツで、何歳なんだろう?
オレは26歳だし、もう夜中にクルマを走らせてスカっとしてる歳じゃないもんなぁ・・
若いっていいなぁ・・
そうだ、きっとこんな風にワインディングを駆ける日々も、もしかしたら今夜で最後かもしれない。
今は色々考えるのはよそう。このステアリングを握っている瞬間を楽しもう!
コーナーに入る前のシフトダウンによる減速、そして立ち上がりへのスムーズな加速の感覚。
知っている国道20号線だからこそ出来る、二つ先のコーナーを考えたラインどり。
アクセル、クラッチ、そしてブレーキを踏む、足の裏の感覚。
右手でステアリング、左手でミッションを操るその感覚。
視界に入る流れる景色、踊るタコメーター、先行者のテールランプの光・・
耳に入ってくるVTECサウンド、タイヤのきしむ音・・
そして、真夏なのにエアコンを切った(エアコンが壊れた)車内に入ってくる、夜の涼しい風。
この、プレリュードと駆けた日々を忘れないように、改めて自分の五感に記憶として刻み込もう。
そして国道20号線の終点の「高出(たかいで)」の交差点にさしかかると、
MR2は、そのまま信号を直進し、国道19号線を南へ向かった。
オレは実家へ向かうため、国道19号線を北へ向かった。
参考:MR2とプレリュードがランデブーした総距離 約100km
突然出会ったMR2のドライバー。
想い出作りに付き合ってくれて、ありがとう。