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プレリュードと駆けた日々 第45話 逆恨み:vsイプサム

第45話 逆恨み:vsイプサム〜 25歳 新春。 〜



川崎に暮らし始めて、早一年以上が過ぎていた。
(そのうち半分以上は、札幌との往復に費やしていたが。)



神奈川に越して来てからは、電車で職場まで通っているので、クルマ生活から遠ざかる一方だ。
結婚式の打ち合わせなどで、時々、婚約中の長野県の彼女のところに会いに行く時に使用するくらいで、
ほとんどプレリュードのエンジンをかけてあげられていなかった。


非常にもったいない。



だから、「仕事のストレスの解消法として」「昔走った道を思い出してみる為に」「洗車をしに行く」などなどの
何かの口実を作っては、夜中でも運転するようにしていた。



就職した時にはさすがに、大学の時に過ごした川崎・横浜エリアに、また戻ってくるとは思っていなかったが、
住み慣れた町並みや、通り慣れた道を知っているというのは、心強い。
その晩は、大学の頃の友人と、久しぶりに会うことにしていた。



「サノ」という名前の男だ。
横浜(の不良達の町・不良達の学校)で育ったという、自称「育ちが悪い」男だそうだ。
学校をマトモに出ていない事が負い目らしく、そのせいか口癖は「頭悪くても、オレだってそのくらいわかる」だ。


その晩、サノを迎えに横浜市港北区へ向かっていた。
彼を拾って、武蔵小杉のオレのアパートで飲み明かす約束をしていたからだ。












事の始まりは、突然だった。








大学の頃には工事中だったが、第三京浜の都筑ICと綱島街道を東西に結ぶ
片側二車線の道が整備されて、とても走りやすくなったので、その道を走っていた。

場所はマピオンでいうと、ここ

東経 139゜36’59.27”
北緯  35゜32’57.37”
神奈川県横浜市港北区高田西の近辺だ。



オレのプレリュードが西から東へ(地図で言うと左から右へ)走っていくと、
突然、左の脇道から一旦停止もせずに、飛び出してくる白いイプサム。

オレは思わず2速に叩き込み、減速をする。


サノ:「夜は、あーいう危ないクソガキが多いから、気をつけたほうがええよ。」
オレ:「あぁ、そうする。」








どうやら、そのイプサムは、明らかに酔っ払い運転のようだ。
猛スピードで片側二車線の道で蛇行運伝を繰り返し、
縫うように他のクルマを抜かしていく。

しまいには、中央分離帯の切れ間があるたびに、転回をしようとするような、怪しいフェイントモーション。


周りのクルマは、危険を察知したのか、みな一斉に左車線にエスケープ。









オレ:「明らかに酔っ払いだな、危ないったらありゃしねー。」
サノ:「近づかないほうがいいって。横浜の深夜は気違いが多いけんね。」
オレ:「やだねぇ・・」











そして運の悪いことに、プレリュードの手前でイプサムは急ブレーキ。右ウインカーも出さずに転回をはじめた。


オレの中の危険信号が、黄色から赤に変わった。

ただの蛇行運転か? それとも本当に転回するのか?


反射的に、オレの足はヒールアンドトゥで2速に入る。 そして、オレの右手はクラクションに伸びた。








プー






かまわずに転回をするイプサム。
後続車に気遣いながらのギリギリの減速で、イプサムの脇を通り過ぎるプレリュード。


そして、オレとイプサムの運転手(以下、ヤツ)の目がバッチリと会う。








サノ:「鳴らさんほうがエエって。殺されるぞ。オレ、頭悪くても、そんくらい判るけぇ。」
オレ:「やだねぇ・・」








次の瞬間、戦慄が走る・・







プレリュードのミラーに、白いイプサムが映っていた。

わざわざ、また追いかけてきたらしい。






プー




今度はオレが鳴らされている・・orz











どうやらヤツは、とっても怒っているらしい・・



道を譲れば、許してくれるかなぁ・・困ったぞ。




でも相変わらず左側車線はビッチリ埋まっている状態だ。









仕方が無い・・











スピードで撒くか。






市街地とはいえ、幸い夜だ。スピードを上げる。
しかし、距離を離して逃げようとするオレの動きなど、ヤツは先刻ご承知といった感じで
ぴったり後ろをマークしてくる。


しかも、横付けしてきて2車線で並走して走りながら、さらに窓を開け、何か叫んでいる。





時速100km/h超えてるんだよ。前見ようよ。危ないよ。





しかも、オレに向かって叫んでいる内容をよく聞くと・・・









ヤツ:「何しとんじゃー!この、ハゲ!」




おれ、全然ハゲてないってば。











そして、すぐに行く手を阻む赤信号








赤信号で先頭で停まっていたプレリュードのさらに前を、
あたかも進路をブロックするように、かぶせるように停止する、いやらしいイプサム。










ヤツが降りてきた。









オレもクルマを降りようとするが、サノが制止した。


サノ:「バカ!降りるな!おまえ刺されるぞ!あーいうヤツは何持っているか、わかんねーぞ!」

オレ:「そりゃ、そうだな・・」





ヤツ:「こーのクソガキ!何をクラクショうw%@hrぬ3fJつAJれhじこ!」


なにやら怒っているのはわかるが、興奮して、さらに酔っ払っているらしいので、よく聞き取れない。

ドアロックだけ確認し、窓を開け、オレが答える。



オレ:「どーいう運転をしているんだ!危ないから鳴らしたのは当たりVRイ3g絵wpふぁ#尾4w8!」


オレも必死なんだが、多分、ヤツもよく聞き取れてない。



開けた窓越しに、よくわからない押し問答が続く。

サノはすでに、ケータイから警察にtelを始めている。


ヤツはお酒のニオイがプンプンしている・・











次の瞬間。







ヤツの右手が、プレリュード運転席に伸び、そしてイグニッションをオフにしてキーを抜き去った。


そしてヤツはイプサムへダッシュ!




オレ:「な・・・なにぃ!」

(とは言っていないけれど)









静かにプレリュードのターボタイマーの10秒がカウントダウン。



そしてエンジンストップ。




信号の先頭なのに、キーを抜かれて、まったく動けないプレリュード。(T_T)









赤信号で、やっぱり転回しながらイプサムが、




「こーの松本ナンバー野郎!横浜をナメんな!このハゲ!」




だから、おれ、全然ハゲてないってば。





慌ててイプサムのナンバーを読み取り、フロントの窓ガラスに指でなぞる。
こうすると、息でハーってやれば、後でも文字が浮かび出てくる。

メモ帳が無い場合でも、とっさに記録できる緊急手段だ。













10分ほどして、サノが呼んだパトカーが到着。







警察:「どうしたの?」
オレ:「これこれこーいうワケで・・キーを取られちゃったんですよ。」
警察:「うーん、相手のナンバー、わかる?」
オレ:「はい、わかりますよ。ハー。えっと、横浜330の・・」






すると汚い男だ。どこかの影から見ていたのだろう。
ヤツは、クルマをどこかに置いて、歩いて戻ってきた。





サノ:「あ、あの人です。あの人がキーを持って行っちゃった人です。」

そして、悠然とこちらに近づいてきて、

ヤツ:「こーのクソガキ!何をクラクショうw%@hrぬ3fJつAJれhじこ!」

オレ:「四の五の言ってねーで、早くキー返してくれよ!クルマ動かせなくて、みんなの交通の邪魔になってるんだよ。」

警察:「さ、この人にキーを返してあげて。さ、早く。」

ヤツは警察の前では、言葉は乱暴だが、行動はおとなしく、素直にキーを出してきた。










警察官は、ヤツとオレを遠ざけてから、そっとオレに言った。
「どうしますか?あの人、たしかに酔っ払っているけれど、クルマをどこかに置いて歩いてきていし、
現行犯の飲酒運転ってことでは捕まえられないんだよ。あなたが納得しないのであれば、
キーを持っていったってことで、告訴できるけれど。」



オレ:「あんなふざけた人間が大手を振って歩くような世の中になっちゃぁいけないですからね。告訴しますよ。」

サノ:「・・ながせ、ちょっとこっち来い。」




サノが、今度はオレと警察を遠ざける。

サノ:「ながせ、いいか。告訴ってことは後々、裁判とか色々面倒なんだぞ。」

オレ:「面倒くさいとか、そういう次元の問題じゃぁないんだ。あんな身勝手な人間が許せるか!?」

サノ:「いや、おまえの正義感はわかる。しかし、あーいうタイプに限って性格がねちっこかったりするんだよ。下手したらお前のことを一生、目の敵にして嫌がらせみたいな事をして恨んでくるんだ。 嫌がらせなんかで済めばいいほうかもしれない。それに、お前だけじゃない。婚約している相手にまで被害が及ぶ場合があるんだからな。」

オレ:「じゃ、どうすればいいんだよ。」

サノ:「今日はおとなしく帰ろう。何もしないんだ。」

オレ:「・・」

サノ:「ある意味で、オトナになろう。」

オレ:「・・わかった」












警察には起訴しない旨を伝え、プレリュードに乗り込む。

すると向こうから、警察官に制止されながらも叫ぶヤツの声が。


「起訴ひとつ出来ねーのか!このイナカモンのクソガyt8絵入gf終じ!」


おれは複雑な思いのまま、プレリュードを発進させた。




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