プレリュードと駆けた日々 第42話 350円の旅 精算編
第42話 350円の旅 精算編〜 23歳、夏。 〜
【北陸自動車道 尼御前SA 7:00】
女性のY子とS子は、インプレッサのリアシートをフルフラットにして眠りについていた。
おれ、しん、けんの3人は木陰に簡易テントを張って、川の字になって寝ていた。
すでに太陽は高く昇り、真夏の日差しがテントとクルマのスモークガラスを照らしている。
修学旅行とか、こういう遊びに行くときに限って、一番遅くまで起きていて、一番最初に起きるヤツって必ずいるだろう。
こいつだ。
けん、おれたちが起きないからといって、おれたちの耳をなめて起こすのはやめてくれ。
たのむから。
しん:「さー、今日も軽快に飛ばすよ。」
しん:「さすがにぬよわkm/hは、流れる景色が違うね。」
【北陸自動車道 徳光PA 7:30】
北陸自動車道は、本当に海岸線沿いにどこまでもまっすぐに道が伸びているという印象を受ける。
左側に海を見ながらと見晴らしもよく、適当に交通量も少ないので、夏の朝に窓を全開にして走ると
涼しい風と潮の匂いが心地よく車内に吹き込んできる。
徳光PAは、ハイウェイオアシスと呼ばれているらしく、クルマを駐車場に置いて、すぐ先の海岸まで降りられるらしい。 さっそくそこで朝飯を食べることにした。
Y子とS子は海岸をみるなり、浜へ降りていってしまった。「うわぁ、海だー!」みたいなことを言って。
それを見たけんも、「うわぁ、海だー!」と二人をおっかけていってしまった。
どうしておまえはそんなに朝からテンションが高いのですか?
水際やテトラポットに集まるカニや小魚を見つけて遊んでいると、
バーベキューをしている年配の3人組とY子とS子が打ち解けて話し込んでいるのが向こうに見えた。
Y子:「ながせくんー、おいでよー」
こちら来てくれ、とおれたちを手招いた。
おれ:「おはようございます。これはこれは夏の朝の海岸でバーベキューとは、風情があっていいものですね。もしかしてこの貝はこの辺で捕れるのですか。」
初老の男性は、巧みに鉄のハサミを使って、網の上にたくさん乗っている握りこぶし大のサザエの様子を見ながら、
「えぇ、すぐそこの市場で買ってきたんですよ。ところが安いもので、沢山買いすぎてしまって、それでちょうどそこに居た皆様にも、おすそ分けをしようと思いましてね。」
「それはそれは。しかし立派なものですねー。そんなに大きいサザエは見たこともない。」
「まだありますよ。刺身などどうですか?こちらの女性もほら、先ほどお食べになりましたよ。」
「すっごい食べ応えがあるの。みんなももらったら?」
30代後半と思える女性二人が、クーラーボックスからサンドイッチのような大きさの魚の切り身を取り出した。
「そのまま手づかみでいいわよね?はい、ワサビも。」
しんの受け取った大きな白身の刺身に、チューブごとワサビを付けてくれた。
しんはその大きさに少し戸惑った表情をしたが、そのまま刺身にかぶりついた。
「うまいです!」
初老の男性は、足元に歩いてきた小さなカニを目ざとく見つけると、素早く手でつかみ、網の上に乗せた。
「これもイケルんですよ。適当に塩味が効いていましてね。ところであなた方は、今日はどちらへ行かれるのですか?いやそれとも、もうどこかへ遊びに行った帰り道かな?」
S子は網の上の熱で瞬殺された小さなカニにびっくりしながら、
「はい、私たち、どこへ行くとも帰るともいう訳じゃないんです。ちょっとした実験で・・・」
ことの次第を説明すると、
「それは面白いですね。発想が面白い。成功することを期待していますよ。」
30代女性二人は、初老の男性のことを「先生」と呼んでいたけれど、どういう関連のひとたちなのかな?
ひとときの出会いを楽しんだ後、おれたちはまた、クルマを東へと走らせた。
【北陸自動車道 新潟方面へ 10:00】
太陽も完全に頭の上へと昇り、真夏の日差しが容赦なくクルマのボディを照りつける。
高くなり続ける油温計、水温計の針も気になるが、走り続けなければならない。
昨夜のうちに、随分と距離を稼いでおいてよかったと、改めて実感する。
北陸自動車道は、日本海際の切り立った山の中を、ひたすら海岸線に沿って伸びている。
建設工事も難航しているのか、対面通行のみが開通しているトンネルが延々と続く。
トンネルを抜けると片側2車線へと道路が拡幅されるが、また次のトンネルにさしかかると、車線はひとつへと狭まれてしまう。
おれたちは、交通量の少ないことをいいことに、気温が低いトンネルの中で速度をあげて距離をかせぎ、
そしてまた気温が高い炎天下では巡航速度を守って、ただただアクセルを踏んだ。
米どころの新潟県だけあって、どちらを向いても青い稲が風になびく田園地帯が、どこまでも果てしなく広がっていた。
【関越自動車道 群馬方面へ 13:00】
昨夜から高く保ちっぱなしのテンションも、そろそろ途切れてきて、睡魔が襲ってくる時間帯。
適宜PAに入って、ドライバーを交替し、それぞれがリアシートで仮眠をとる。
悲しいことに、どこかに停まってゆっくり休むというのはNG。
もしかしたら、時間が長すぎては料金所でひっかかるという脅迫概念があるから・・
【上信越自動車道 長野方面へ 14:30】
ここまで来ると、車内の会話ネタもつきてきて、しかたがないからシモネタで盛り上がる。
道はというと、そろそろ走りなれた地元にさしかかってきているので、多少安堵感が生まれてくるが、
軽井沢近辺のワインディグで、対向車線で大きな事故が起こっていた。そこを基点に延々と渋滞が発生し出している。
最後の気を引き締めなおす。
【中央自動車道 諏訪方面へ 16:00】
豊科ICが見えてきた!!
車内では、もうY子がチケットを握り締めている。
「あぁーー、すっごいドキドキするねー」
「こんな高速道路での妙技は、なかなか試すやついないよ。よーく味わって精算しよう。」
けんも吸っていたタバコを灰皿へと押し込み、ランプウェイへのシフトダウンをした。
チケットを差し出し、「お願いしまーす」
係のおじちゃんはチケットを受け取るとチケットに書かれた出発IC”松本”の字を見た瞬間に、 「はい、350円になります。」
頭の中に、近郊ICからの料金表が叩き込まれているのだろか?
チケットを読み取り機に通した料金表示のLED盤には、しっかりと「350」の3桁が!
そしらぬ顔でおつりを受け取り、豊科ICを後にした。
その10秒後には、車内は歓喜の大爆笑だったけど。
理論とおり、350円なんですね。
松本市内のファミレスで、旅の思い出を語るお疲れミーティングを実施し、おれたち5人は解散しました。
これは、1999年8月に実施した事例です。
高速道路網が日々整備されている今、この妙技ははたして通用するのでしょうか?
ループできてしまう区間が、続々と出来上がってきていますから。
どなたか実践していただけたら、ご報告をお待ちしています。
ネットで探した類似例を綴ったサイト
・ http://homepage1.nifty.com/hira-p/hitorigoto2.htm
【前橋IC】-上信越道下り〈更埴JCT〉-〈上越JCT〉-北陸道下り-〈長岡JCT〉-関越道上り-〈長岡JCT〉-上信越道下り【富岡IC】
↑ 2000.2.20 実行 出発ICと到着ICが異なるため、成功
・ http://merope.mtk.nao.ac.jp/~kyoko/impreza/hwloop.html
【練馬IC】-関越道下り-〈藤岡JCT〉-上信越道下り〈更埴JCT〉-〈上越JCT〉-北陸道下り-〈長岡JCT〉-関越道上り-【練馬IC】
↑ 2001.4.30 実行 出発ICと到着ICが同じのため、NG
・ http://www2u.biglobe.ne.jp/~houou-ku/highway.html
【伊勢崎IC】-上信越道下り〈更埴JCT〉-〈上越JCT〉-北陸道下り-〈長岡JCT〉-関越道上り【花園IC】
↑ 2000.5.22 実行 出発ICと到着ICが異なるため、成功