プレリュードと駆けた日々 第41話 350円の旅 疾走編
第41話 350円の旅 疾走編〜 23歳、夏。 〜
この意味のない「高速道路一周」というロマンの計画を練っているうちに、この男が話に興味をもって参加を表明してくれた。
イメージが涌きやすいように、ちょっと紹介しておきましょう。けんです。
長野の友人、けん
おもしろいので、ちょっとヤツラを並べてみよう。
注:二人ともシラフです。
このけんという男、インプレッサWRXのワゴンを購入したばかりで、生粋のスバリストだ。そして今が走りたいサカリらしい。
そういう男は、こういう「Love OR Hate」(好き嫌い)がはっきりするプロジェクトにはもってこいの
けん:「へぇー、その話面白いねー。今ちょうど新車の慣らしも終える時期だし、じゃぁ今すぐ行こうよ!」
おれ:「あわてるなって。コンビニに行くようなノリの話じゃねぇんだから!」
しん:「それよりやだよそんな、オトコだけで行ってもつまらんじゃん、車内でヒマすぎて。CD何枚もっていけばいいんだよ。」
おれ:「CD一枚が一時間として、24枚は必要だな。しかも一台あたり。」
しん:「いや、そうじゃなくてよ。助手席にオンナの人がいたら、華があっていいんじゃないの?ってことだよ。」
けん:「よし、ながせ。オマエが調達しろ!」
おれ:「はいはい・・・・」
探してみたところ、いました!。こういうアホプロジェクトに快く参加承諾してくれた女性が。2人も。
一人はおれたちの同級生。そしてその友人がひとり。
同級生Y子:「ちょっとー、その話すごく面白そうじゃない?魅力的かもー。」
おれ:「成功するか失敗するかわからないけど、一緒に参加して、証人になってくれるね?」
Y子:「行くね。日程が決まったら絶対教えてよ!」
おれ:「もちろん、そっちこそ体調を整えておいてくれよ。24時間体制だからね(笑)」
Y子:「はーい。」
もう一度確認しておこう。
【350円の旅ルール】
1.高速道路から降りられないから、給油・休憩・睡眠・食事・排泄・観光はすべてサービスエリア
2.出発インターと到着インターの間には、サービスエリアが存在する区間を選ぶ
3.所要時間は、24時間以内とする
4.事故やドライバーの疲労対策のために、複数台・複数人数で行く
5.万が一出口料金所でバレても、素直に支払う料金の用意
イのスタート地点を松本I.C.に決定。
ロのゴール地点を、豊科I.C.に決定。
そして2区間のあいだには、梓川S.A.が存在している。
一台あたり、ガソリン代 + 最悪(正規)の高速道路通行料 + 食事代 + 予備の予算 として10万円をにぎりしめ
とある夏の金曜の晩の21:00に、松本I.C.におれたちは集合した。
【長野自動車道 松本IC 21:00】
長野県の夏の夜は、涼しい。
昼のあつい時間帯に照りつけた熱気は、田園の水や山の木々が吸収し、逆に冷気をはなっている。
ガソリンを満タンにして、トリップメーターをゼロにリセットし、長野自動車道を南下する。
【中央自動車道 名古屋方面へ 22:00】
中央自動車道を名古屋方面へ南下しながら、クルマの窓をあけると、すがすがしい夏の夜の空気が車内へと吹き込む。
この時間帯は通行量が少なく、ワインディングを小気味よく飛ばすことができる。
ときおり、高速道路の眼下に広がる夜景をとらえながら、照明の少ない中央自動車道を
おれたちは、ビデオカメラで全行程を撮影しながらひたすら名古屋方面へと向かう。
”長野県はこんなに南北に長かったのか?”と再確認するほどの、長い道程を。
山の中を縫うように走るこのルートは、視界が強制的に前方のみへそそがれる。
左右は、切り崩した山々ばかりで、夜などは特に圧迫感がある。
その圧迫感に開放されたいという気持ちが高ぶってきたころに、タイミングよく小牧JCTがあらわれ、
東名自動車道へと滑り込んでいく。
【東名高速〜名神高速 米原方面へ 23:00】
すると急に視界が開け、JCTのランプを抜けると、車線がひとつ増える。
特徴的ともいえるのは、交通量が急激に増え、そして照明が煌々と照らしてあり、非常に明るい。
2台に一台はトラックという、日本の物流業界の中枢ともいえる地域を通りながら、さらに西を目指す。
時刻は0時を回っていたが、一般の乗用車の台数も減る兆しがまったくみえない。
軽くハラごしらえをSAで済まし、さらに西を目指す。後部座席に山積みされたCDは、みるみる交換されていく・・・
【北陸自動車道 富山方面へ 1:30】
米原JCTを越えて北陸自動車道に入り、いっきに北をめざそうとするおれたちの目は、
一枚の標識の文字を捕らえてはなさなかった。
「この先チェックバリア スピード落とせ」
けん:「これのことじゃねーの?地図に載っていたウワサのチェックポイントって」
おれ:「実際に通るのは、これがはじめてだからよくわからんが、ここで清算をされないかぎり問題はないだろう。」
けん:「チェックって、何をチェックするんだろうなー」
米原JCTから数キロ走ると、通常の料金所のバリアと変わらない、よくあるチケットゲートが目の前に現れた。
おれたち各々は、ゲートの係員のオジサンに入場チケットを手渡した。
すると、チケットを受け取ったおじさんは、チケットを機械へ通しただけですぐに返してくれた。
このときの「しん」は、米原のチェックバリアを一番気にしていた。
今回の350円企画が成功するか否かは、ここで精算を余儀なくされるかにかかっていたからだ。
おじさん:「はい、どうぞー」
しん:「はい、どうもー・・・・」
(料金所を過ぎた直後)
しん:「や、やった・・やったぞ!」
しん:「カネを払わずに済んだ!」
しん:「・・・」
しん:「今、オレ金払ってないよね?」
S子:「うん。払ってないね。」
しん:「このチケット、なんか書いてあるかぁ?」
しん:「・・・」
しん:「なんにも書いてないなぁ・・」
しん:「今、オレ金払ってないよね?」
S子:「うん。払ってないけど、しんちゃん、それ言うの二度目だよ(笑)」
(この写真は、その時の実物ではないが)
赤丸のあたりに、見慣れない桁数の非常に多い刻印番号が印されていた。
なんなんだろう??色々な高速や国道や有料道路を走っているが、こんなチェックをされたのははじめてだ。
この刻印はなんですか、とその場で聞くのもヤボなので、そのままおれたちは道を急いだ。
それでは、米原チェックバリアを無事に通過して安堵し、
思わず運転しながらテンションが上がっているしんをお楽しみください。
カメラに照れながらも
ハンドルから手を離し、小躍り
危ないって・・
北陸道に入り、交通量はほぼゼロに近くなった。時間が時間のせいもあるだろうけれど。
ほぼ直線に近い滋賀県内の北陸道をただまっすぐに走っていたせいか、緊張の糸もゆるくなってきた。
空が白ばんできたころ、おれたちの日本海が目の前にあらわれた。
こいつだけは、まだテンション高いまま・・
さすがに長時間ドライブで筋肉が疲れていたので、尼御前SAで仮眠をとることにした。時計は4:30を指していた。
今日もあつくなりそうだ。セミがすでに鳴いている。
さらに次の話に続く