プレリュードと駆けた日々 第36話 東京はまだか
第36話 東京はまだか〜 22歳、冬。 〜
大学も卒業間近。
長野市に就職も決まった。
横浜のアパートを引き払うと同時に、引越しもしなければならない。
しかし、お金のないオレは、引越し業者なんて頼めない。
松本から横浜へ、引越しを手伝いに来てくれるメンツ集合!
仲間内だけで引越しをする、と言ったら、女性まで駆けつけてくれた。
第40話 350円の旅でも参戦を表明してくれた、Y子とS子だ。
何かと女性の肌理細やかな協力というのは、有難い。
あとはトラックが必要だ。
地元の友人の家は農家が多いから、ちょっと声をかけてみた。
なんなくトラックを貸してくれる約束をとりつけた。
引越し当日の朝・・
天気:雪
ご存知の方もいると思うが、普段の長野県の中心市街地は、そんなに雪が積もらない。
しかし、年に何回か、とんでもない量の大雪が降る。
こんな感じで・・・
一応、天気予報を見てみた。
降水確率:80%
警報:大雪警報
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手伝ってくれる友人の予定もあるし・・日程延期も難しいなぁ。
まだ朝のうちだし、雪は小降りだ。
よし、早めに長野県を脱出すれば、何とかなるだろう。
トラックを貸してくれる手筈の友人宅に向かう。
まさかと思うけれど、ノーマルタイヤじゃ、ないよね?
いやいや、農作業をするのは、春から秋だぞ。
むしろ、スタッドレスタイヤを履いているワケ、ないよな??
普通にノーマルタイヤだよ・・_| ̄|○
急げ!雪が本格的に積もりだす前に!!
けんがインプレッサを出動させ、Y子とS子を拾ってきた。
オレは、トラックでしんを迎えに行く。
ながせ:「おはよう。・・・あれ、どうした?顔色悪いぞ。」
しん:「だめだ・・具合悪い・・」
ながせ:「どうしたのさ?」
しん:「夕べ、合コンで飲みすぎた・・」
_| ̄|○
ながせ:「だめか?」
しん:「だめ・・」
ながせ:「ソルマックでも飲んどけ!行くぞ!」
空荷のトラックは、後輪のトラクションがかかりにくく、
坂道にさしかかると、尻をふりまくる。
行きがけのスーパーでソルマックを飲んで、すぐに息を吹き返したしんに運転を代わる。
オレはというと、後輪のグリップ力を増す為に、荷台に乗った。
吹雪いていて、さすがに荷台は寒いってば。
しん:「だめだ。どんなにカウンター当てても、坂道上がっていかねーよ・・。ノーマル(タイヤ)じゃ無理だ。」
ながせ:「このまま進むと危ないな。やっぱりチェーンを買おう。」
イエローハットに寄って、チェーンを購入。
オレは、虫の知らせがしたので、一応チェーンを2セット購入。
イエローハットの駐車場で、すかさずチェーンを装着。
余談ではあるが、筆者が運転免許を取得する為に通った長野県の自動車教習所では、
「チェーンの巻き方」教習がカリキュラムに含まれている。
通常なら机上の学習で終わってしまいそうなこの分野も、雪が多いこの地方では、実技指導付きで行われる。
これは地域性が表れていると言っていいだろう。
なお、地域性と言えば、筆者の教習所では「山岳コース教習」というものがついており、
峠道を登っていく教習があった。が、これも余談。
手早くチェーンを巻いて、すぐに高速道路に戻る。
これで一安心だ。
シャカシャカシャカシャカ(チェーンの音)
中央自動車道は、すでに大雪が降り積もり、チェーン規制とスピード規制がかかっている。
路肩には横転したトラックや、玉突き事故を起こした複数台の車両が、あちこちに停まっている。
気をつけて行かなくては・・・
Y子とS子を乗せた けん のインプレッサに携帯で連絡をする。
ながせ:「こっちはノロノロ運転で行くからさ、先に談合坂のSAまで行って待っていてよ。」
けん:「わかった。気をつけて来いよ。」
インプレッサが先に行った。
しんも気持ーち、アクセルを踏み込む。
シャカシャカシャカシャカ(チェーンの音)
トラックの助手席でヒマなオレは、チェーンの取り扱い説明書を読んでいた。
『ご注意!
高速走行をすると、チェーンが切れるおそれがあります。
おおむね30km/h以下で走行してください。』
慌ててスピードメーターに目をやるオレ。
メーターは55km/hを指している。
ながせ:「な、なぁ、しん・・・取り扱い説明書にさー・・」
しん:「うん、何?」
シャカ・・・・
しん:「今、静かになったね。」
ミラーを見るオレ。
黒いチェーンの塊のようなものが、後方に遠ざかっていくのが見える。
ながせ:「チェーンが切れたね(笑)」
しん:「おい!だめじゃーん(笑)どうすんだよ!」
ながせ:「どうもスピードを出しすぎると切れるらしいよ。」
しん:「そういうことは、先に言えよ!(笑)」
ながせ:「でもさ、片輪だけ切れたのかな?」
しん:「いや、静かになったってことは、すでに両方切れてるんじゃない?」
ながせ:「今まで片っぽだけで走ってたのかよ!そっちのが怖いよ!」
猛吹雪の中、路肩で2セット目のチェーンを巻きなおす、オレとしん。
ながせ:「もう、換えのチェーンは無いからな!頼むぜおい。」
しん:「まーまー、任せとけって。」
もちろん、八王子IC到着の時には、チェーンはまったくありませんでした。。。