プレリュードと駆けた日々 第35話 ひきかえ 後編
第35話 ひきかえ 後編〜 22歳、冬。 〜
(本当にこの道は、どこまで続いているんだろう)
考えながら、ひたすらアクセルを踏んで、先を急いだ。
陽が完全に山の向こうに落ちた。
道は、新雪が降り積もったあとで、クルマの轍(わだち)が数本しかない。
轍が残っているってことは、誰かが通っている証拠だ!
この道がどこかに通じていることをオレは信じた。
ようやく、上りが終わって下りに差し掛かった。
一安心ってやつだね。
今考えたら、この油断が、良くなかった。
ほとんど新雪状態に近い、このダウンヒル。
FFのプレリュードにとっては、サイドドリフトの格好の練習場と言える。
コーナーのインにクルマの鼻っ面を向けて、サイドブレーキを思いっきり引く。
教科書どおりにケツが流れ出すので、あとはステアリングとアクセルワークでカウンターだ。
イメージ通りにカウンターが決まり、コーナーをクリアする。
やっぱり雪山は楽しいー!!
前後にクルマもいなければ、対向車も来ない。
陽は沈みかけているが、視界は良好。
ロードコンディションは、新雪でふかふか、良好だ。
今日の状況は、最高ーー!
コーナーをひとつクリアするごとに、スピードを少しづつ増していく。
冬の峠でないと味わえない、この感覚。
だんだんと、体が思い出してきた!
ノッてきたよー!!
そのとき、Rのキッつい右コーナーが迫ってきた。
高低差も大きいコーナーだ。
よし、車体を一度左に振ってから、右に振りなおす、フェイントモーションだ!
このとき、プレリュードのスピードは乗りすぎていた。明らかなオーバースピード。
フロントタイヤのグリップ性能は、確実に限界を超えていた。
お約束どおりのドアンダーが発生。
そのままプレリュードは、左脇の雪の壁にクラッシュ!!
(-_-;)
幸い、新雪の壁だったおかげで、車体は無傷だ。
しかし、エンジンルームの1/4くらいまで、雪の壁にプレリュードが刺さってしまっている・・
脱出できるかな?
ギアをバックに入れ、アクセルをふかす。
だめだ・・
フロントタイヤが雪を押しつぶした状態になっているから、ホイルスピンしてしまって
まったく動けない・・
ステアリングを左右に切って、タイヤの足場を変えてみるが、
かえって踏み固めてしまうので、完全にハマってしまっている・・
くっそー 自力での脱出は、無理か・・・
(-_-;)
どうする?
!!!
困ったときの、JAFだ!
携帯電話を取り出す。
圏外
そうだよね。そりゃそうだよね!
山の中だもんね。
はなれ村だもんね。
近くの民家に助けを呼びに行くにしても、相当先だろうなぁ・・・
ほかのクルマだって、一台も通りかからないし・・・
まずは、落ち着いて、タバコで一服だ・・
うーん (-_-;)
冷え込んできた・・ おしっこしよう・・ (-_-;)
冷静に考えろよ! ながせ!
スピンしてしまっているのは、タイヤの下の雪が踏み固められて氷状になっているからだ。
溶かせばいいじゃん。
その、おしっこで・・・・
誰も見ていないし、いいや。
自分のプレリュードのタイヤ下をめがけて、発射!
まさか、こんな山奥で自分のクルマに向かって放尿プレイをするとは思わなかった・・
雪は、解けているのか??
うーん・・暗がり+湯気で、よく見えない・・
(-_-;)
そのとき、一台の軽トラックが道を下ってきた!
今日、この峠ではじめての出会い!
(すみません、助けて!)
とは言えない。
放尿中だもん。
こういう時に限って、またおしっこが良く出るんだ・・・(T_T)
あーあ・・軽トラック、行っちゃった・・・
暗闇で自分の車に向かって小便している、変なヤツって思われたんだろうな・・・
くっそー・・・結局大して雪は解けてないし、アスファルトなんて全然見えない・・
いよいよ八方ふさがりだぞ・・
゚ ▽ ゚ )!!
タイヤの下に、毛布やタオルのような滑り止めをかませれば、グリップ力を得て脱出できるぞ!
車内を探せ・・タオルタオルタオル・・・
ない・・
っていうか、いつもクルマの中には何にも置いていないぞ・・
何かかませるもの、かませるもの・・・
さすがに、いま着ているこのスーツは、こないだ買ったばっかだし、もったいないよなー・・・
仕方ない・・さっき会社からもらった、入社式案内の書類を使おう・・
書類が何枚も入っていたので、まんべんなくタイヤの下に敷き詰める。
それも、オレの小便の上に・・・
大事な書類を自分の小便まみれにして、プレリュードは無事に脱出成功!!
書類は小便まみれで、タイヤの回転でボロボロ・・
_| ̄|○