プレリュードと駆けた日々 第11話 バックミラー
第11話 バックミラー〜19歳、年末。 〜
今回のお話は、首都高やクルマを知っている人向けかもしれません。
わかりにきー!って人は、首都高速道路地図と見比べながら、どうぞ。
当て逃げ事件もひと段落して、やっとのことで健康なクルマがおれの元へ戻ってきた。
年末を控え、写真現像所のバイトも需要が一時的に下がり、すこしながら早く帰れるようになった。
ここんところ、バイトづくめだったから、発散したいな。
運転らしい運転も最近していないし。
そんな気持ちが、おれを首都高へと導いていた。
横浜から国道一号線を都内まで北上し、戸越ICから首都高速2号目黒線へと進入する。
夜の2号線の戸越IC付近は、側壁に打ち付けられた照明がどこまでも連なり、アスファルトを両側から明るく照らしている。
ランプを抜けたプレリュードは、照らされたアスファルトの上を、打ち出されたマシンがカタパルトを発進するように
急激に加速をする。140km/hを超えると狭い首都高では、感じる景色も劇的に変化する。
2速5000回転、6000、7000・・・・7200!
レッドぎりぎりで3速へシフトチェンジ。4000回転、5000、6000、7000・・・7200!
料金所の手前でフルブレーキをして、一度、気をとりなおす。
時刻はAM1:00だ。都心環状線を何回か流してから、帰ろう。
余談ではあるが、都内のように、クルマが密集した区間を走るとき、MTの場合には
速度を一定に保ちながら、シフトをチェンジして回転数を適宜あわせ、いつでもアクセルが踏めて、かつ
エンジンブレーキの恩恵も受けながらブレーキも踏めるような状態をキープする走りが有効となる。
そうすることにより、前を走る車との車間が詰められて、なおかつブレーキランプを点灯させることなく、
後続車への余計な迷惑をかけずにスムースな流れが保たれる。
つまり、渋滞軽減のための、小さな、それでいて確実な効果がでるんじゃないだろか?
ま、おれの適当な持論だけど。
都心環状線を時計まわりに新宿方面へ抜け、竹橋ジャンクションを越えたあたりで、
ずっと追い越し車線をキープしているおれの後ろに、ぴったりついている車に気が付いた。
おれもおれなりに、5000回転程度を維持しながら、前を走るクルマをいっこいっこパスさせていたが、
後ろにテールトゥノーズでぴったりと長時間くっつかれるのは、さすがに気に入らない。
バックミラーをみると、どうも小型でリトラクブルヘッドライトのクルマだ。
MR-S?、それとも70スープラか?、はたまたおれのよく知らない舶来のクルマか???
いや、それほどボディサイズは大きくない。きっと2000cc以下クラスのクルマだ。
面白い。しばらくパスさせずに様子を見よう。どうせおれが飛ばしても前はいずれ詰まっている。
次のジャンクションで別れてしまうような一瞬の出会いかもしれないが、しばしのお戯れタイムといきますか。
どこまでついて来るつもりか・・・
いつでも踏める状態になっているプレリュードのアクセルをさらに踏み込み、VTECの高回転カムへと切り替えていく。
12月の窓を全開にして、咆哮するマフラー音を耳でしっかりと聞きながら。
もう・・・なんだよこいつ、ずっとついてくるじゃん・・・・・浜崎橋まで来ちゃったよ・・・
しかも、なんかハチロクっぽいような感じがする・・・
少し挑発するつもりで、縁石や壁面ギリギリのライン取りをしたりしても、この後ろのクルマは同じようなラインを真似し、 まるで、「オマエのテクニック・進入速度は、おれはすべてコピーできるぜ」みたいな張り付き方をしてくる。。。。
あったまきた!・・・一回パスさせて、こいつについて行こう。ついでに顔も確認してやる。
少ない隙間を見つけ、左車線に一時的に退避し、後続車をパスする。
どれどれ?こいつはどんな運転手なんだ?
やっぱりハチロクか!!
・・しかも・・「藤原とうふ店(自家用)」ってマジで書いてある!!
(こういうマンガ)
本当にマネしているやつって、初めて見た!!
明らかに運転手と目が合った。帽子を目深にかむった若いヤツだ。
しかもそいつ、( ̄ー ̄)ニヤリって感じの一瞬の表情。
かちーん
その余裕が気に入らねー!! おれはすかさず右に車線を変更し、追従を始めた。
さ、攻守交替だ。走りを後ろからしっかり拝ませてもらいますか。
5速から4、3とシフトダウンさせ・・・・・
このハチロク、加速が異常に早えー!!!ターボか??
車線を左へ、そして右へと巧みに変更し、加減速をしながら一般車を次々とパスしていく。
かなり走り慣れたヤツだ・・
おれも一般車に気を使いながら、一台づつ慎重にパスをしていく。
あ、もうじき一ノ橋ジャンクションだ。(目黒方向にいけるトコ)
ま、今日は、この程度にしておいてやろう・・・・窓を開けていても寒いし。(負け惜しみ)
一般車で見え隠れするハチロクのテールランプを見送って、おれは横浜方面へすごすごと帰った。
ま、楽しませてもらったかな?