●巻頭特集 技あり! 植え方でガラリッ
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苗を植える深さ、向き、栽植密度、作業のしかた……
植え方の常識を打ち破ると
作物の生育も作業の手間も一変!「技あり! イモの植え方」コーナーより
ジャガイモ逆さ植え しかも覆土不要!
植え付けも収穫もラク、ソウカ病に強い宮崎・山口今朝廣
筆者。種イモは、切り口が見えている程度に土に押し込むだけ。その上に黒マルチ 植え付け当日か数日前に種イモを半割にしておく イモを「掘る」というよりは「拾う」ように収穫できる 3月号「あっちの話こっちの話」で紹介したジャガイモの超浅植え栽培。じつは、全国で何人もの農家が実践していることが判明。まずは宮崎から――。
種イモの切り口を上に向け、覆土は不要
私のジャガイモの植え方は、種イモを半分にしたら切り口を上にして、切り口が土中に埋まらないよう少しだけウネに押し込むというやり方です。覆土はしません。イモの切り口が見えているウネにそのまま黒マルチを張ります。
ここまでの作業の手順は、
(1)イモを植える1〜1.5カ月前に廃菌床を全面施用、軽く混ぜておく。
(2)植え付け当日〜5日くらい前に種イモを半分にカット(宮崎では2月上〜中旬に植え付け)。
(3)トラクタで耕耘した1.2m幅の平ウネに60cm間隔で3条植え。種イモの切り口を上に向け、黒マルチを張るときに種イモが動かないよう、切り口が土中に埋まらない程度に押し込む。
(4)黒マルチを張る(1.5m幅、厚さ0.02mm)。
土の中は湿り気があるので、イモは埋まっている部分から芽を出します。3月下旬〜4月上旬頃、芽が出てマルチが膨らんでくるので、破って芽を出してやります。
このとき、マルチを破るのが遅いと高温で芽をやいてしまいます。芽がやけると再生は難しいが、破るのが早くて霜の害を受けた場合は再生しやすい。遅れないことが肝心です。
マルチをはぐとイモがゴロゴロ
収穫は5月中〜下旬。土寄せはしないので、マルチをはぐと表面にイモがゴロゴロ見えています。土に深く入っていないので収穫がラクです。
イモが緑化しないかと心配かもしれませんが、黒マルチは光を通さないのでイモが青くなることはありません。ただ収穫が、葉が落ちてしまうまで遅れると、マルチに光が直接当たり、内部が高温になってイモが腐ることがあります。まだ葉が落ちないで青々しているか、黄色くなりかかったときが収穫適期です。
ソウカ病が少ないのが気に入った
じつは、このやり方は、福井県の自然農法栽培農家・三上貞子さんのやり方をヒントに始めた方法です。実際に試してみて、私は次の3点がおもしろいと思いました。
・ウネ立て等をせず作業がラク
・収穫時はイモを手で掘れる(イモが着いている部分が浅い)
・地表面に着いたジャガイモはソウカ病が少ない
このうちとくにソウカ病対策として気に入り、この栽培方法を実践するようになりました。
また、三上さんのやり方は、肥料としてEMボカシを施用する方法ですが、炭素循環農法を実践する私は、微生物のエサとして廃菌床を使います(2010年8月号参照)。
(宮崎県綾町)
3月号あっちの話
「ジャガイモの超浅植え栽培」の実際佐賀県唐津市・吉原久之さん
こちらは、3月号の「あっちの話こっちの話」で紹介させていただいた佐賀の吉原さんの超浅植え。
「私も68歳になりますから、これからはラクな農業をしたい。このやり方なら、土寄せ・草取り・イモ掘りいらずのラクチン栽培です」
そう話す吉原さんに、栽培の記録写真を送っていただいた。
植え付け。写真のような中くらいの種イモなら1個のまま使う。大きいイモなら2つ割りにして、切り口を上にして土に3分の1だけ埋める。畑はあらかじめ、EM堆肥とEMボカシを入れて中耕しておく 種イモの間にボカシをひとつかみずつ置き、種イモの上にモミガラで覆土したら、マルチを張る(写真は白黒ダブルマルチだが、黒マルチでいい)。モミガラ覆土は寒さよけになったりするといわれているが、地域や作型によってはしなくてもいい 芽が出始めたら、マルチを破って穴をあけ、1株につき2〜3本の茎数にする。マルチの穴は光が入りこまないように小さくあける。あとは土寄せ、草取りいっさいなし! 地上部が茶色になったあとマルチを取ったところ。ほとんどのジャガイモが地表に出ているので、収穫は拾うだけでいい! 超浅植えだと低温や高温の影響を受けやすいので、早植えはしないほうがいい。佐賀では3月初めに植え付け、6月中旬に収穫している
超浅植え栽培のジャガイモの着き方 ジャガイモは地下部の茎から伸びたストロンが肥大したもの。「超浅植え」では、黒マルチによって光がさえぎられるので、地下と同じような条件となり、地上部の茎からもストロンが伸びて肥大するようだ